15 / 19
迎え
しおりを挟む
涙が止まり気持ちが落ち着くと、エミーヌはロバートに支えられながら立ち上がった。
扉の向こうに見えたのは、呆然とするお父様と義母、それからヴィヴィ。
そんな三人を無視して、ロバートはエミーヌの手を引いてズンズンと歩いて行く。エミーヌはロバートにリードされるまま三人の間を通り過ぎて行った。
「お姉様……っ」
「エミーヌちゃん!」
ハッと気づいたように、二人がエミーヌの肩を掴んだ。
「ミーちゃんに触れるな」
今まで聞いたことのない、低い、怒りの籠もった声。彼の殺気によって二人の私の肩を掴む手が緩むと、ロバートは私の肩を強く抱き寄せた。
「ミーちゃん、行こう」
「お待ち下さい!」
「ちょ、ちょっと待ってください!どこに行くんですか!?それにどうして急にロバート様がっ」
それでもしつこく迫ってくるヴィヴィ。ロバートはやれやれと首を捻ると振り返った。
「伯爵家の料理人たちがさっき教えてくれました。彼らはエミーヌが監禁されたのを受けて助けを呼ぼうと、僕の屋敷まで走って来てくれたのです」
ここ伯爵家の屋敷からロバートの屋敷まではそれほど遠くない。歩いて五分もしないほどの距離だ。
「僕はこれからミーちゃんを僕の屋敷に連れて行きます。……大切な婚約者を、こんなひどい場に置いてなんかいけない。……では」
再び歩き出したロバートをどうにか止めようと、ヴィヴィは必死だ。
「お姉様、大ごとにしすぎです!ただの家族喧嘩なのに。ロバート様、お姉様は今どうかしているんです、ここはどうか一回帰って……っ」
「君は、自分は元平民だ、とか言う割には人に物事を強要してくるよね」
「え……あ、の」
「それからもうミーちゃんにいちいち構うのもやめてくれるかな?ミーちゃんが傷付くだけだから。僕たちに関わらないで。名前を呼ばれるのも煩わしい」
ロバートはヴィヴィをあっさりと切り捨てた。
地面にへばりこむヴィヴィ。
その顔は呆然としているが、今度は彼女の母親の方が黙っていなかった。
「聞き捨てなりません!確かにヴィヴィも私も元平民ですが、そんなことまでいわれる筋合いはないはずです!」
「星の数ほどありますよ」
義母に対しても冷静に言い放つロバート。彼はさらにお父様の方を向く。
「……伯爵、今までのエミーヌに対する行い、全て国王様に報告させていただきますね」
「はっ、何を、ロバート君。私は君より遥かに陛下の信頼を得ている。出来るものならやってみたまえ」
お父様は取り乱す二人とは違って比較的冷静だったが……。
「勘違いしているようだが、相手は私だ」
そこにはロバートの父親、グランクス侯爵が立っていた。
扉の向こうに見えたのは、呆然とするお父様と義母、それからヴィヴィ。
そんな三人を無視して、ロバートはエミーヌの手を引いてズンズンと歩いて行く。エミーヌはロバートにリードされるまま三人の間を通り過ぎて行った。
「お姉様……っ」
「エミーヌちゃん!」
ハッと気づいたように、二人がエミーヌの肩を掴んだ。
「ミーちゃんに触れるな」
今まで聞いたことのない、低い、怒りの籠もった声。彼の殺気によって二人の私の肩を掴む手が緩むと、ロバートは私の肩を強く抱き寄せた。
「ミーちゃん、行こう」
「お待ち下さい!」
「ちょ、ちょっと待ってください!どこに行くんですか!?それにどうして急にロバート様がっ」
それでもしつこく迫ってくるヴィヴィ。ロバートはやれやれと首を捻ると振り返った。
「伯爵家の料理人たちがさっき教えてくれました。彼らはエミーヌが監禁されたのを受けて助けを呼ぼうと、僕の屋敷まで走って来てくれたのです」
ここ伯爵家の屋敷からロバートの屋敷まではそれほど遠くない。歩いて五分もしないほどの距離だ。
「僕はこれからミーちゃんを僕の屋敷に連れて行きます。……大切な婚約者を、こんなひどい場に置いてなんかいけない。……では」
再び歩き出したロバートをどうにか止めようと、ヴィヴィは必死だ。
「お姉様、大ごとにしすぎです!ただの家族喧嘩なのに。ロバート様、お姉様は今どうかしているんです、ここはどうか一回帰って……っ」
「君は、自分は元平民だ、とか言う割には人に物事を強要してくるよね」
「え……あ、の」
「それからもうミーちゃんにいちいち構うのもやめてくれるかな?ミーちゃんが傷付くだけだから。僕たちに関わらないで。名前を呼ばれるのも煩わしい」
ロバートはヴィヴィをあっさりと切り捨てた。
地面にへばりこむヴィヴィ。
その顔は呆然としているが、今度は彼女の母親の方が黙っていなかった。
「聞き捨てなりません!確かにヴィヴィも私も元平民ですが、そんなことまでいわれる筋合いはないはずです!」
「星の数ほどありますよ」
義母に対しても冷静に言い放つロバート。彼はさらにお父様の方を向く。
「……伯爵、今までのエミーヌに対する行い、全て国王様に報告させていただきますね」
「はっ、何を、ロバート君。私は君より遥かに陛下の信頼を得ている。出来るものならやってみたまえ」
お父様は取り乱す二人とは違って比較的冷静だったが……。
「勘違いしているようだが、相手は私だ」
そこにはロバートの父親、グランクス侯爵が立っていた。
215
お気に入りに追加
3,622
あなたにおすすめの小説

美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…

【完結】婚約破棄? 正気ですか?
ハリネズミ
恋愛
「すまない。ヘレンの事を好きになってしまったんだ。」
「お姉様ならわかってくれますよね?」
侯爵令嬢、イザベル=ステュアートは家族で参加したパーティで突如婚約者の王子に告げられた婚約破棄の言葉に絶句した。
甘やかされて育った妹とは対称的に幼い頃から王子に相応しい淑女に、と厳しい教育を施され、母親の思うように動かなければ罵倒され、手をあげられるような生活にもきっと家族のために、と耐えてきた。
いつの間にか表情を失って、『氷結令嬢』と呼ばれるようになっても。
それなのに、平然と婚約者を奪う妹とそれをさも当然のように扱う家族、悪びれない王子にイザベルは怒りを通り越して呆れてしまった。
「婚約破棄? 正気ですか?」
そんな言葉も虚しく、家族はイザベルの言葉を気にかけない。
しかも、家族は勝手に代わりの縁談まで用意したという。それも『氷の公爵』と呼ばれ、社交の場にも顔を出さないような相手と。
「は? なんでそんな相手と? お飾りの婚約者でいい? そうですかわかりました。もう知りませんからね」
もう家族のことなんか気にしない! 私は好きに幸せに生きるんだ!
って……あれ? 氷の公爵の様子が……?
※ゆるふわ設定です。主人公は吹っ切れたので婚約解消以降は背景の割にポジティブです。
※元婚約者と家族の元から離れて主人公が新しい婚約者と幸せに暮らすお話です!
※一旦完結しました! これからはちょこちょこ番外編をあげていきます!
※ホットランキング94位ありがとうございます!
※ホットランキング15位ありがとうございます!
※第二章完結致しました! 番外編数話を投稿した後、本当にお終いにしようと思ってます!
※感想でご指摘頂いたため、ネタバレ防止の観点から登場人物紹介を1番最後にしました!
※完結致しました!

とある侯爵令息の婚約と結婚
ふじよし
恋愛
ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。
今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。
母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。
「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。
このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。
弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した――
全3話

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる