元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

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迎え

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 涙が止まり気持ちが落ち着くと、エミーヌはロバートに支えられながら立ち上がった。
 扉の向こうに見えたのは、呆然とするお父様と義母、それからヴィヴィ。
 そんな三人を無視して、ロバートはエミーヌの手を引いてズンズンと歩いて行く。エミーヌはロバートにリードされるまま三人の間を通り過ぎて行った。

「お姉様……っ」
「エミーヌちゃん!」

 ハッと気づいたように、二人がエミーヌの肩を掴んだ。

「ミーちゃんに触れるな」

 今まで聞いたことのない、低い、怒りの籠もった声。彼の殺気によって二人の私の肩を掴む手が緩むと、ロバートは私の肩を強く抱き寄せた。

「ミーちゃん、行こう」
「お待ち下さい!」
「ちょ、ちょっと待ってください!どこに行くんですか!?それにどうして急にロバート様がっ」

 それでもしつこく迫ってくるヴィヴィ。ロバートはやれやれと首を捻ると振り返った。

「伯爵家の料理人たちがさっき教えてくれました。彼らはエミーヌが監禁されたのを受けて助けを呼ぼうと、僕の屋敷まで走って来てくれたのです」

 ここ伯爵家の屋敷からロバートの屋敷まではそれほど遠くない。歩いて五分もしないほどの距離だ。
 
「僕はこれからミーちゃんを僕の屋敷に連れて行きます。……大切な婚約者を、こんなひどい場に置いてなんかいけない。……では」

 再び歩き出したロバートをどうにか止めようと、ヴィヴィは必死だ。

「お姉様、大ごとにしすぎです!ただの家族喧嘩なのに。ロバート様、お姉様は今どうかしているんです、ここはどうか一回帰って……っ」
「君は、自分は元平民だ、とか言う割には人に物事を強要してくるよね」
「え……あ、の」
「それからもうミーちゃんにいちいち構うのもやめてくれるかな?ミーちゃんが傷付くだけだから。僕たちに関わらないで。名前を呼ばれるのも煩わしい」

 ロバートはヴィヴィをあっさりと切り捨てた。
 地面にへばりこむヴィヴィ。
 その顔は呆然としているが、今度は彼女の母親の方が黙っていなかった。

「聞き捨てなりません!確かにヴィヴィも私も元平民ですが、そんなことまでいわれる筋合いはないはずです!」
「星の数ほどありますよ」

 義母に対しても冷静に言い放つロバート。彼はさらにお父様の方を向く。

「……伯爵、今までのエミーヌに対する行い、全て国王様に報告させていただきますね」
「はっ、何を、ロバート君。私は君より遥かに陛下の信頼を得ている。出来るものならやってみたまえ」

 お父様は取り乱す二人とは違って比較的冷静だったが……。

「勘違いしているようだが、相手は私だ」

 そこにはロバートの父親、グランクス侯爵が立っていた。
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