元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

監禁

　閉じ込められたってこと……？犯人は、お父様よね。昨日虐待だなんて言ったから？ロバートから私を遠ざけるために？

　混乱する中でも冷静な自分がいる。
　エミーヌは扉の前で声を上げた。

「誰か、そこにいるのでしょう？出して！」

　返事は返ってこない。
　エミーヌはうるさいほどにドンドンと扉を叩いた。

「うるさいわねぇ、ちょっと静かにしてくれないかしら」
「奥様！」
「どうしたの？エミーヌちゃんが中にいるの？」
「はい、旦那様の命令で」
「ああ、あの方が……。きっとヴィヴィのことで、また頭に血が昇ってしまわれたのね。エミーヌちゃんが私たちを気に入らないのはいつものことなのに……」
「奥様……。落ち込まないで下さい。我々はいつも奥様方の味方なのですから」
「ありがとう。貴方たちがそうやって受け入れてくれるだけで十分だわ」

　扉の向こうでは、侍女と義母のベルチェが会話をしているようだった。
　ベルチェはいつものようにエミーヌをダシに可哀想な義母を演じている。しかし今、そんなことはどうでも良い。
　エミーヌは声を張り上げた。

「ベルチェ様！これはどういう事ですか！」
「ごめんね、私もよく分からないの。ちょっとあの方を呼んでくるわね」

　彼女は全く動揺もない。
　その様子からお父様とグルだということが分かる。
　ここまでするのね……これほどまでに私の存在は邪魔なのか。
　ずっと我慢してきた。ロバートがいればそれで良いと。
　でも彼にすら会えないのなら、ここまで邪魔にされるのなら、もうこっちだって容赦しない。
　目には目を、歯には歯を、悲劇のヒロインには悲劇のヒロインを。
　やり方なんてもうどうでも良い。
　私は大きく息を吸い込んだ。

「酷いわ！閉じ込めるなんて！私が何したって言うの？！」

　エミーヌは扉の前で泣き崩れた。
　なるべく大声で。なるべく屋敷中に聞こえるように。

「いつだってお父様たちは私を悪者にすることで平和を保っていたけれど、やり過ぎよ！もう限界だわ！！」
「ちょっ、ちょっと、エミーヌちゃん！？」
「昨日はお父様に殴られた。でもベルチェ様もヴィヴィも誰も心配しない。私のことなんか興味ないのよ！」

　凄い……口からすらすら言葉が出てくる。
　自分でもびっくりするくらい、何の抵抗もなくエミーヌの口から言葉が紡がれる。
　きっと最高のお手本が二人もいたからだろう。
　エミーヌがそう考えるうちに、外が騒がしくなってくる。どうやら使用人たちが集まってきたようだ。
　
「お姉様っ？！どうしたの？」
「反省をせずに騒ぐとは、お前は本当に屑だな」

　そしてヴィヴィと父も。
　今のところ作戦は上手いこといっている。
　エミーヌは呼吸を整えた。