元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

文字の大きさ
上 下
8 / 19

呼び出し

しおりを挟む
「ええ、構いませんよ。ですが僕は「僕たちみたいな存在が、高貴な身分のエドモン様や学年一優秀なヴィヴィ様たちと食事など恐れ多い」と言う意味で申したのですけれど」
「屁理屈か」
「いえいえ滅相もございません。本音ですよ」
「しかしお前だって、学年一優秀ではないか」
「ですが周りからの信頼はありませんし、貴方たちよりずっと劣っているかと」
「そんなことはありません!」

 突然否定して来たヴィヴィに、ロバートは「ミーちゃんを悪者に仕立て上げている張本人が何を言うんだか」と言う気持ちを覚える。

「いえいえヴィヴィさんに比べたら。ヴィヴィさんは学園一の人気者ですし、嫌われ者の俺らと比べたらそんな」
「そんなに自分を卑下しないで下さい!」
「いえ、僕たちといると、貴方たちの評判まで下がってしまいそうで怖くて……」

 ロバートは口が上手い。スラスラと思ってもないことを出していく。
 その度に否定してくるヴィヴィだけれど、ロバートは卑下をやめない。

「それにこれ以上あなた方の貴重な時間を割いてしまうのは偲ばれるので、もう去りますね。行こう、エミーヌ」
「アイツらを相手にすんな、ヴィー」
「そんなっ、駄目だよエドモン!仲良くしないと」
「ヴィーは優しすぎるんだよ」

 エミーヌの背中から空っぽの会話が聞こえてくるが、エミーヌはそんなことは気にせず、自分を引っ張ってくれるロバートの頼もしさに心が温かくなるのを感じた。




 それからも、ヴィヴィは何かにつけてロバートとエミーヌを食事や勉強会に誘って来た。
 その度にロバートが機転を利かせて断るけれど、そのしつこさは異常だ。
 第二王子は忌々しそうにこちらを見ているので、どうやら毎回ヴィヴィの独断でこちらへ来ているようだ。

 そんなある日エミーヌは父に呼び出された。
 嫌なことが起こると自覚しながら父の書斎に入ると、案の定そこには険しい顔をした父がいた。

「……ヴィヴィから話は聞いている。あの子は隠したがっていたが、どうやらお前、ヴィヴィに嫌がらせをしているようじゃないか」
「断じてそんなことなどしておりませんが」
「黙れ、嘘つきが。ヴィヴィが元平民だからと、やたらとヴィヴィを遠ざけるそうじゃないか。しかもロバート君まで巻き込んで」

 好きなように解釈されているなと思いながらエミーヌは話を聞く。すると今度は父の隣に立っていた義母が口を開いた。

「エミーヌちゃん、確かに私は平民出身だけれど、あの子は貴族の血も入っているの。それに私たち家族じゃない。私のことは母親だと思わなくても良いけれど、あの子のことは大事にしてあげて欲しいの」
「俺は以前お前に言ったはずだ。二人を傷つける奴はたとえお前だろうと許さないと。しかしお前は俺との約束を破った。ヴィヴィとベルチェの寛大さに免じて今回だけは許してやるが、次はないぞ」

 エミーヌは何も言わなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

【完結】婚約破棄? 正気ですか?

ハリネズミ
恋愛
「すまない。ヘレンの事を好きになってしまったんだ。」 「お姉様ならわかってくれますよね?」    侯爵令嬢、イザベル=ステュアートは家族で参加したパーティで突如婚約者の王子に告げられた婚約破棄の言葉に絶句した。    甘やかされて育った妹とは対称的に幼い頃から王子に相応しい淑女に、と厳しい教育を施され、母親の思うように動かなければ罵倒され、手をあげられるような生活にもきっと家族のために、と耐えてきた。  いつの間にか表情を失って、『氷結令嬢』と呼ばれるようになっても。  それなのに、平然と婚約者を奪う妹とそれをさも当然のように扱う家族、悪びれない王子にイザベルは怒りを通り越して呆れてしまった。 「婚約破棄?  正気ですか?」  そんな言葉も虚しく、家族はイザベルの言葉を気にかけない。  しかも、家族は勝手に代わりの縁談まで用意したという。それも『氷の公爵』と呼ばれ、社交の場にも顔を出さないような相手と。 「は? なんでそんな相手と? お飾りの婚約者でいい? そうですかわかりました。もう知りませんからね」  もう家族のことなんか気にしない! 私は好きに幸せに生きるんだ!  って……あれ? 氷の公爵の様子が……?  ※ゆるふわ設定です。主人公は吹っ切れたので婚約解消以降は背景の割にポジティブです。  ※元婚約者と家族の元から離れて主人公が新しい婚約者と幸せに暮らすお話です!  ※一旦完結しました! これからはちょこちょこ番外編をあげていきます!  ※ホットランキング94位ありがとうございます!  ※ホットランキング15位ありがとうございます!  ※第二章完結致しました! 番外編数話を投稿した後、本当にお終いにしようと思ってます!  ※感想でご指摘頂いたため、ネタバレ防止の観点から登場人物紹介を1番最後にしました!   ※完結致しました!

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。 母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。 「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。 このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。 弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した―― 全3話

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

処理中です...