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エミーヌは十七歳になり、新しい家族が出来てからかれこれ七年経った。
これは完全に居場所を失ったわね……。
目の前には仲良く談笑する家族が三人。エミーヌはそれを遠目で見ながら自分の置かれた状況について整理することにした。
かれこれ七年。
何かにつけて「平民」というワードを利用してくる義母と義妹に、今や屋敷にいる誰もが「エミーヌ様は平民がお嫌い」と思うようになった。
長い年月をかけ徐々に変化した関係性。最近では父と顔を合わせるたびに「ベルチェとヴィヴィを平民扱いするなどお前はクズだ。恥をしれ」などと怒鳴られるので、部屋に閉じこもることも増えた。
義母と義妹は何かとエミーヌに構ってくるが、無視するにせよ相手にするにせよ、またエミーヌの評判が悪くなるだけであるのは確かだ。
あー、早くここから出て行きたい。
ならばさっさと平民にでもなって出ていけば良い、と思うだろう。でもエミーヌがここに残るのには理由があった。
それは婚約者のロバートの存在である。
ロバートとはまだお母様が生きていらした頃に婚約をした。お互いに幼い頃から頻繁に遊んでいたこともあり十五歳で学園に入学する頃には、エミーヌはすっかりロバートへの恋心を自覚した。長い期間をかけて仲を深めていったニ人は今では互いに一番の理解者である。
ロバートはエミーヌの家庭事情を理解しており、そのこともあって義母やヴィヴィに会うことは滅多になかった。
会ったとしても軽く挨拶をかわすくらいで向こうもこちらに興味がないようだったので、わざわざ構ってくるようなこともない。
エミーヌにとってロバートは自分を支えてくれる唯一の人で、大袈裟に言えば、ある意味エミーヌの生きる糧のような存在だった。
私にはロバートさえいれば十分よね。
別に家族に愛されなくても良い。私は別に家族に重きを置いているわけではないし。
そう思えば肩の荷は軽かった。屋敷にいると息が詰まるのは確かだけれど。
現に今も、目の前の三人が私に見せつけるように仲良く話している。
義母は時折こちらを見ながらビクビク震えているし、ヴィヴィは気まずそうな顔をしてたまに私の方を見る。父に至ってはいない存在として完全に無視されており、こちらを振り向くことさえない。まだ睨んでくれた方がマシだったかもしれない。
「エミーヌ様、やっぱりお二人のことよく思われていないみたいですわ」
「今も睨んでおりますものね」
「ああ、ベルチェ様とヴィヴィ様が可哀想です。元は平民でも、今は立派な貴族で家族ですのに」
「あんな健気でお優しいお二人のどこがそんなに気に食わないのでしょう」
周りに控えている侍女や使用人は、コソコソと口に手を当て、己の好きなようにこの光景を解釈している。
エミーヌは心の中で溜息を吐きながら、さっさと退散しようとその場を去った。
これは完全に居場所を失ったわね……。
目の前には仲良く談笑する家族が三人。エミーヌはそれを遠目で見ながら自分の置かれた状況について整理することにした。
かれこれ七年。
何かにつけて「平民」というワードを利用してくる義母と義妹に、今や屋敷にいる誰もが「エミーヌ様は平民がお嫌い」と思うようになった。
長い年月をかけ徐々に変化した関係性。最近では父と顔を合わせるたびに「ベルチェとヴィヴィを平民扱いするなどお前はクズだ。恥をしれ」などと怒鳴られるので、部屋に閉じこもることも増えた。
義母と義妹は何かとエミーヌに構ってくるが、無視するにせよ相手にするにせよ、またエミーヌの評判が悪くなるだけであるのは確かだ。
あー、早くここから出て行きたい。
ならばさっさと平民にでもなって出ていけば良い、と思うだろう。でもエミーヌがここに残るのには理由があった。
それは婚約者のロバートの存在である。
ロバートとはまだお母様が生きていらした頃に婚約をした。お互いに幼い頃から頻繁に遊んでいたこともあり十五歳で学園に入学する頃には、エミーヌはすっかりロバートへの恋心を自覚した。長い期間をかけて仲を深めていったニ人は今では互いに一番の理解者である。
ロバートはエミーヌの家庭事情を理解しており、そのこともあって義母やヴィヴィに会うことは滅多になかった。
会ったとしても軽く挨拶をかわすくらいで向こうもこちらに興味がないようだったので、わざわざ構ってくるようなこともない。
エミーヌにとってロバートは自分を支えてくれる唯一の人で、大袈裟に言えば、ある意味エミーヌの生きる糧のような存在だった。
私にはロバートさえいれば十分よね。
別に家族に愛されなくても良い。私は別に家族に重きを置いているわけではないし。
そう思えば肩の荷は軽かった。屋敷にいると息が詰まるのは確かだけれど。
現に今も、目の前の三人が私に見せつけるように仲良く話している。
義母は時折こちらを見ながらビクビク震えているし、ヴィヴィは気まずそうな顔をしてたまに私の方を見る。父に至ってはいない存在として完全に無視されており、こちらを振り向くことさえない。まだ睨んでくれた方がマシだったかもしれない。
「エミーヌ様、やっぱりお二人のことよく思われていないみたいですわ」
「今も睨んでおりますものね」
「ああ、ベルチェ様とヴィヴィ様が可哀想です。元は平民でも、今は立派な貴族で家族ですのに」
「あんな健気でお優しいお二人のどこがそんなに気に食わないのでしょう」
周りに控えている侍女や使用人は、コソコソと口に手を当て、己の好きなようにこの光景を解釈している。
エミーヌは心の中で溜息を吐きながら、さっさと退散しようとその場を去った。
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