元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

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新しい家族

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「お前に新しい家族を紹介する」

 滅多に帰ってこない父が久しぶりに顔を出したかと思えば、いきなりとんでもないことを言い出し、エミーヌは思わず声を上げそうになる。
 父の隣には笑みを絶やさない温厚そうな美人が一人とその後ろに……。

「おいで、ヴィヴィ」

 エミーヌが一度も聞いたことのない優しい声音で、お父様は女性の背中に張り付く少女を呼び寄せた。

「お前の妹になるヴィヴィだ」

 少女は恥ずかしげに顔を女性の後ろから覗かせた。
 緩くカーブのかかったブロンドの髪の毛に、くりくりの愛らしい緑色の瞳。
 可愛らしいな、という印象だった。

「ヴィヴィ、お前の義姉となるエミーヌだ。挨拶しなさい」
「はい」

 少女はテクテクとエミーヌの前に来ると恥ずかしげに顔を俯かせた。それでも父に背中を優しく撫でられると、意を消したようにもう一度顔を上げる。

「ヴィヴィです。よろしくおねがいします、おねえさま」

 父が満足気に頷いた。大きな手で小さな彼女の頭を撫でる。その手つきは優しく愛情がひしひしと込められているのが伝わってくる。でもエミーヌはそれを見ても何も感じなかった。ただ笑みをそのポーカーフェイスに貼り付けるだけ。

「よろしくお願いいたします」

 彼女の顔がパッと明るくなった。嬉しそうに女性の元へ戻っていく。
 すると今度は女性が私の方へと顔を向けた。

「私も宜しくね。この子の母親で、今日からあなたの母にもなるベルチェよ。好きに呼んでくれて構わないわ」
「エミーヌです。よろしくお願いいたします」

 エミーヌの身長に合わせて屈んだ女性はやはり少女の母親であり、父の新たな妻となる方だった。
 
「エミーヌちゃんって呼んでも良い?」
「はい」
「まぁ嬉しい!こんなに可愛い子が娘になるなんて夢みたい」
「落ち着けベルチェ。それより他の者たちも紹介しよう」
「ええお願い。早くここに馴染まなくちゃ!」

 父は楽しそうに声を弾ませる義母を愛おしげに見つめた。見たことのない表情だ。今日は新しい発見が沢山。

「ここで待ってろ、今呼んでくるから。……エミーヌ」

 ボーッとしていたエミーヌは急に手を掴まれ、突然のことに目を見開く。
 しかしそんなエミーヌの様子は気にも止めず、彼女の父はエミーヌの手を引っ張って部屋の外へ出ると彼女に向かって忠告した。

「エミーヌ、彼女たちは俺の一番愛する者たちだ。傷つけることは絶対に許さない。もし彼女たちに何かあったら、俺はお前を一生許さない」

 その日エミーヌは実の父から、小さな子供が背負うのには重すぎる言葉、ある意味脅迫とも等しい言葉を受けた。
 エミーヌが十歳、ヴィヴィが九歳の時のことだった。
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