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番外編 ※カーシス視点
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ミリィが天使の皮を被った悪魔だと知ったのは、僕が大事な婚約者を手放してしまった時のことだった。
リディーが伯爵家を去って一週間。
僕は今日も伯爵家の屋敷を訪れ、今の婚約者であるミリィとお茶をしていた。
しかし流れるのは沈黙。
いたたまれない空間であるが、どうしようもない。それよりも僕は、自分が犯してしまった罪への罪悪感で頭がいっぱいだった。
リディー……、君が冤罪だったなんて。
今でも信じられない。
君はずっとミリィを虐げているのだと思っていた。
だから遠ざけて、怒って、婚約破棄までしたのに。
それが嘘で、僕はただミリィの嘘にずっと踊らされていて……。
「はぁー」
ため息が聞こえる。
これは僕のじゃない。ミリィのだ。
全てを引き起こしたのはミリィなのに、彼女はため息をついている。
全部彼女のせいなのに。
「ミリィ、そんなにため息をつかないでくれ。僕にまで移る」
それから「君にため息を吐く資格はない」という言葉まで喉まで出かかったが、やめる。
言うだけ無駄だ。
きっと彼女には何も響かない。
姉を冤罪に陥れても罪悪感を感じなかったのだ。
僕らをずっと騙していたことにたいしてもまだ謝罪しないで否定し続けている。
僕はもう一度リディーと会えるなら、謝罪をしたいと思っているのに……。
ずっと、リディーは変わってしまったと思っていた。でも、変わってしまったのは僕の方だったのだ。
一目でいいから会いたい。会って話したい。
でもそれすらもう叶わない。
なぜなら王子に二度とリディーに近づくなと警告されてしまったから。
僕にはもうどうすることもできないのだ。
「ごめんなさい、カーシス様」
「謝るならリディーに謝りなよ。君が嘘をつき続けていたせいで僕まで加害者だ。はぁー、君は本当に最悪だよ」
「…………」
またもや沈黙が流れる。
すると、ミリィがぎこちない笑顔で話しかけてきた。
「あ、の、カーシス様、今度のパーティーのことなんですけれど……」
やっぱりミリィは天使の皮を被った悪魔だ。
「君は呑気 だね。姉を冤罪で追い出したことを反省もしないで、そんなことを言うなんて……」
「それはだってカーシス様が……」
「君の言い訳は信じるだけ無駄だから聞かないよ。それにパーティーも一緒には出席しない。パートナーは別の人を探してくれ」
「そんな……」
ショックを受けるミリィだけれど、その顔はリディーに向けるべきだ。僕ではない。
それにパーティーなんて気分じゃない。招待されたからには行かないわけにはいかないが、ミリィと一緒には行きたくない。
それに、このままミリィとやっていくなんて僕には考えられない。
今までの時間が全て無駄だったと気づいてから、ミリィに対する想いはどんどん消えていくばかりだった。
リディーが伯爵家を去って一週間。
僕は今日も伯爵家の屋敷を訪れ、今の婚約者であるミリィとお茶をしていた。
しかし流れるのは沈黙。
いたたまれない空間であるが、どうしようもない。それよりも僕は、自分が犯してしまった罪への罪悪感で頭がいっぱいだった。
リディー……、君が冤罪だったなんて。
今でも信じられない。
君はずっとミリィを虐げているのだと思っていた。
だから遠ざけて、怒って、婚約破棄までしたのに。
それが嘘で、僕はただミリィの嘘にずっと踊らされていて……。
「はぁー」
ため息が聞こえる。
これは僕のじゃない。ミリィのだ。
全てを引き起こしたのはミリィなのに、彼女はため息をついている。
全部彼女のせいなのに。
「ミリィ、そんなにため息をつかないでくれ。僕にまで移る」
それから「君にため息を吐く資格はない」という言葉まで喉まで出かかったが、やめる。
言うだけ無駄だ。
きっと彼女には何も響かない。
姉を冤罪に陥れても罪悪感を感じなかったのだ。
僕らをずっと騙していたことにたいしてもまだ謝罪しないで否定し続けている。
僕はもう一度リディーと会えるなら、謝罪をしたいと思っているのに……。
ずっと、リディーは変わってしまったと思っていた。でも、変わってしまったのは僕の方だったのだ。
一目でいいから会いたい。会って話したい。
でもそれすらもう叶わない。
なぜなら王子に二度とリディーに近づくなと警告されてしまったから。
僕にはもうどうすることもできないのだ。
「ごめんなさい、カーシス様」
「謝るならリディーに謝りなよ。君が嘘をつき続けていたせいで僕まで加害者だ。はぁー、君は本当に最悪だよ」
「…………」
またもや沈黙が流れる。
すると、ミリィがぎこちない笑顔で話しかけてきた。
「あ、の、カーシス様、今度のパーティーのことなんですけれど……」
やっぱりミリィは天使の皮を被った悪魔だ。
「君は呑気 だね。姉を冤罪で追い出したことを反省もしないで、そんなことを言うなんて……」
「それはだってカーシス様が……」
「君の言い訳は信じるだけ無駄だから聞かないよ。それにパーティーも一緒には出席しない。パートナーは別の人を探してくれ」
「そんな……」
ショックを受けるミリィだけれど、その顔はリディーに向けるべきだ。僕ではない。
それにパーティーなんて気分じゃない。招待されたからには行かないわけにはいかないが、ミリィと一緒には行きたくない。
それに、このままミリィとやっていくなんて僕には考えられない。
今までの時間が全て無駄だったと気づいてから、ミリィに対する想いはどんどん消えていくばかりだった。
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