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十六話 ルイス視点
しおりを挟む僕は諦めた。でも姉さんには諦めるなんて言葉は考えもしていなかったようで。
姉さんが何かを見て一瞬目を丸くするのに僕は気づいた。いい案が浮かんだようで、姉さんは余裕を持ったように二人に話しかける。
「ねぇ、私が聖女だって認めたらどうなるの?」
「貴方は王城で素晴らしい生活を手に入れることになります」
「貴方たちは?」
「僕たちは、聖女を見つけた者として国王様から褒美を頂き、この公爵家を出て幸せに暮らそうと」
「なかなか良いわね。……でも、多分無理よ」
「な……」
ジオールは大きな男の人によって、一瞬のうちに倒された。僕をずっと拘束していたアンナも、姉さんの侍女のティアナによってすぐに気絶させられたようで、拘束が解けた僕は地面にペタンと座り込んで暫くの間放心状態でいた。
ふと気づけば僕は姉さんに抱きしめられていた。
ボーッとしていた僕は突然のことに驚く。でも懐かしい姉さんの香りに気持ち良い安心感を覚えた。
「ルイス、迎えに来たわ」
大好きな姉さんの声。
ずっと会いたくて、話したくて、でも出来なくて。
姉さんが送ってくれる「光」の粒は、温かくて心地よかったけれど、それでもやっぱり僕は姉さんに触れて欲しくて。
張り詰めていた糸が切れたように僕は泣き出した。
「姉さん……会いたかった、会いたかった!僕、待ってたよ!」
危険を冒してまで約束を守り切ってくれた。
姉さんが約束を覚えていたことも、僕を抱きしめてくれているこの状況も、全てが夢みたいで、僕が願っていた未来を描いていて。
「姉さん、ありがとう」
口から溢れでた姉さんへの感謝の言葉に、姉さんの僕を抱きしめる力が強くなる。
「ルイス、私の方こそ、待っていてくれてありがとう」
僕の頭上で囁くようにそう言う姉さん。
ありがとうを言いたいのはこっちなのに。ごめんねを言いたいのはこっちなのに。姉さんはいつもそう口にする。
でもそんな不満すら、ただただ僕にとっては幸せでしかなくて。
心地よい温もりに、さらに僕の涙は増えていくばかりだった。
僕が泣き止むと姉さんは時間がないと言って、抱きしめる手を離した。不安になっていると、ジオールを倒した大きい男の人に僕は抱っこされる。
そこからはあっという間だった。
塞がってくる人たちも簡単に倒し、僕たちは裏庭にある馬車にまでたどり着いた。
馬車に乗り、隣には姉さんが座る。向かいにはティアナが座り、優しく僕に微笑みかけている。
ティアナは姉さんと一緒に僕を守ってくれる大好きな人だ。
ここから想像もできないくらい幸せな日々が送れるのかと思うと嬉しくて、僕は馬車の中で姉さんやティアナと沢山お話しをした。
いつまでも話していたいと思うけど、僕の体は言うことを聞かなくて、眠気が襲ってくる。
夢の中はいつも怖くて僕は眠るのが嫌いだったけれど、姉さんが優しく頭を撫でてくれるおかげか、僕はすんなりと眠りにつくことが出来た。
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