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1、断罪

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 それは突如として始まった。

「アンジェリカ、貴様の罪は重い」

 今日は第二王子の誕生パーティー。
 シャンデリアが照り輝く王宮の大広間で、主役の第二王子は開口一番はそんなことを口にした。すぐ隣には、大きな谷間を強調させるピンク色のドレスを着た子爵令嬢が彼にしがみついて怯えている。

「……罪とはなんですか?」

 そんな二人の前には一人の令嬢が凛とした態度で立っていた。公爵令嬢アンジェリカ様だ。
 釣り上がった大きな赤い目、緩くカーブのかかった紺色の髪。整いすぎた容貌は魔女のようだと揶揄されており、彼女を忌み嫌う者は多かった。しかし彼女は、れっきとした第二王子ダリルの婚約者でもある。

 突然のことに会場は騒然となった。
 王子は片手でギュッと子爵令嬢を抱き寄せると、公爵令嬢を大きく睨みつける。

「アンジェリカ、お前のティアナに対する数々の悪質な嫌がらせ、まさか忘れたとは言わせないぞ」
「私は断じて、そのようなことはしておりませんが」

 こんな状況に陥っても公爵令嬢は一人、背筋をピーンと伸ばし続けていたが、王子は動揺しない彼女が心外だったらしい。
 
「嘘をつくな!お前がやったという証拠も証言も数え切れないほどある。……それに何より、ティアナの腕を見ればそれは一目瞭然だ!」

 王子がそう言うと、彼に抱かれた子爵令嬢はビクビクと震えながら周りに見えるように腕を差し出した。

「ひっ、おいたわしい」
「よくこんな酷いことを」
「痛かったでしょうに……」

 会場内にどよめきが走る。
 彼女の腕には痣がが多数あり、それは見ているだけでとても痛々しいものだった。

「国民に暴行を加える者を王族に迎え入れるなど認められん。よって、お前と婚約破棄をし、新たにティアナを婚約者として迎え入れることにした。アンジェリカ、お前は未来の王妃に害をなした罪で国外追放だ!」

 王子は鼻を膨らませながらそう言うと、勝ち誇ったような笑みを公爵令嬢に浮かべた。





 ……何この茶番。
 伯爵令嬢レイラはことの次第を見て、大きくため息を吐いた。そしてそれは隣の婚約者も同じだったようで、怒りに満ちた顔で王子と子爵令嬢を見ている。

「アドルフ様、これ完全にティアナ様の自作自演では?」
「ああ、俺もそう思う。アンジェリカ様がそんなことをするはずがないからな」
「どうします?今から冤罪を晴らします?アンジェリカ様の冤罪の証拠ならありますよ」

 私がそう言い終えると、何か意を決したようにアドルフ様は前を向いた。そして……。

「お待ち下さい!!」

 そう声を張り上げると、ズカズカと王子の元へ大股で進み寄った。


 
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