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出会い
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ヴィオラとルーカスが出会ったのは、とある公爵令嬢のバースデー・パーティーの時だった。
ヴィオラは主役の令嬢との挨拶を既に済ませ、贅沢なビュッフェに舌鼓を打っているところだった。
……主役のダリア様、やっぱり近くで見ると眩しかったわ。私より三歳も年下なのに、色気もあるし。殿方に囲まれるのも当然よね。……あっ、このパスタ美味しいわ!
一人で黙々と食べているヴィオラだったが、不意に突然背後から声をかけられる。
「あらぁ、ヴィオラじゃなくって?」
振り返ると、幼馴染のテリーヌがいた。ヴィオラは思わず心の中でううっと唸る。
何せ面倒臭いのだ、このテリーヌは。
昔から何かにつけて突っかかってくる。
見た目は金髪碧眼で天使のように美しいのに、その性格は正反対で、特に長い付き合いのヴィオラのことは完全に見下している。ヴィオラも彼女と同じ金髪碧眼かつ同じ伯爵令嬢という身分であることが、テリーヌがヴィオラを敵視する理由になったのかもしれない。
なるべく近づかないようにしていたのに……。
ヴィオラはビュッフェに集中してしまい周りが見えなかったことを後悔した。
「テリーヌ様、お久しぶりです」
「相変わらず一人なのね。エスコートする男性もいないなんて可哀想に」
テリーヌは右頬に手を添えながら首を傾げた。その隣にはパートナーと思わしき男性が連れ添っている。
「こんなあなたにいうのもなんだけど……わたし、ついに結婚することになったの。相手はこの、アーロン・ディラント侯爵様よ」
「それはおめでとうございます」
ヴィオラが頭を下げると、男性も会釈を返す。そうして彼は気を遣ってその場から離れていった。
ヴィオラは男性に見覚えがあった。
確か……令嬢たちから絶大な人気を誇る方よね。テリーヌ、こんな凄い人と結婚することになったんだ。
テリーヌを見ると、勝ち誇った顔でヴィオラを見ている。
「ふっ、結婚式には呼んであげるから」
「楽しみにしております」
「ところで……ヴィオラ、あなた、良い感じの方はいないの?」
「ええ、まだ……」
「なら良い人を紹介してあげるわね。来てちょうだい」
テリーヌの声と共に、五十代ほどの少し小太りの男性が現れる。
「グラッド子爵よ。少し歳の差はあるけれど、相性はとても良いと思うの」
うふふ、とテリーヌは微笑む。
グラッド子爵は満更でもない顔で、ヴィオラのことを見た。舐め回されるような視線を感じ、ヴィオラは身震いする。
「後は二人で仲良くね」
ヴィオラの反応に満足したのか、テリーヌはそそくさとその場を去っていった。
まずいわ。
このままでは噂を立てられるし、この人と結婚するのは怖い。身の危険を感じる。でもここでお断りしても非難されるだろう。
困り果てたヴィオラは逃げるしかないと踵を返そうとした。しかし不運にもその手首を掴まれてしまう。
「どこへ行くのですか?」
窮地に立たされたヴィオラだったが、その時……
「グラッド子爵、デリントン侯爵があなたのことを探しておりましたよ」
助け舟が現れた。
ヴィオラは主役の令嬢との挨拶を既に済ませ、贅沢なビュッフェに舌鼓を打っているところだった。
……主役のダリア様、やっぱり近くで見ると眩しかったわ。私より三歳も年下なのに、色気もあるし。殿方に囲まれるのも当然よね。……あっ、このパスタ美味しいわ!
一人で黙々と食べているヴィオラだったが、不意に突然背後から声をかけられる。
「あらぁ、ヴィオラじゃなくって?」
振り返ると、幼馴染のテリーヌがいた。ヴィオラは思わず心の中でううっと唸る。
何せ面倒臭いのだ、このテリーヌは。
昔から何かにつけて突っかかってくる。
見た目は金髪碧眼で天使のように美しいのに、その性格は正反対で、特に長い付き合いのヴィオラのことは完全に見下している。ヴィオラも彼女と同じ金髪碧眼かつ同じ伯爵令嬢という身分であることが、テリーヌがヴィオラを敵視する理由になったのかもしれない。
なるべく近づかないようにしていたのに……。
ヴィオラはビュッフェに集中してしまい周りが見えなかったことを後悔した。
「テリーヌ様、お久しぶりです」
「相変わらず一人なのね。エスコートする男性もいないなんて可哀想に」
テリーヌは右頬に手を添えながら首を傾げた。その隣にはパートナーと思わしき男性が連れ添っている。
「こんなあなたにいうのもなんだけど……わたし、ついに結婚することになったの。相手はこの、アーロン・ディラント侯爵様よ」
「それはおめでとうございます」
ヴィオラが頭を下げると、男性も会釈を返す。そうして彼は気を遣ってその場から離れていった。
ヴィオラは男性に見覚えがあった。
確か……令嬢たちから絶大な人気を誇る方よね。テリーヌ、こんな凄い人と結婚することになったんだ。
テリーヌを見ると、勝ち誇った顔でヴィオラを見ている。
「ふっ、結婚式には呼んであげるから」
「楽しみにしております」
「ところで……ヴィオラ、あなた、良い感じの方はいないの?」
「ええ、まだ……」
「なら良い人を紹介してあげるわね。来てちょうだい」
テリーヌの声と共に、五十代ほどの少し小太りの男性が現れる。
「グラッド子爵よ。少し歳の差はあるけれど、相性はとても良いと思うの」
うふふ、とテリーヌは微笑む。
グラッド子爵は満更でもない顔で、ヴィオラのことを見た。舐め回されるような視線を感じ、ヴィオラは身震いする。
「後は二人で仲良くね」
ヴィオラの反応に満足したのか、テリーヌはそそくさとその場を去っていった。
まずいわ。
このままでは噂を立てられるし、この人と結婚するのは怖い。身の危険を感じる。でもここでお断りしても非難されるだろう。
困り果てたヴィオラは逃げるしかないと踵を返そうとした。しかし不運にもその手首を掴まれてしまう。
「どこへ行くのですか?」
窮地に立たされたヴィオラだったが、その時……
「グラッド子爵、デリントン侯爵があなたのことを探しておりましたよ」
助け舟が現れた。
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