千年の言霊

望月保乃華

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 陰陽師・綾小路匡胤

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  ※この物語は平安時代をベースに個人的に考えたフィクションであり、 史実や実在と関係ありません。


 

 
 寛弘8年(1011年)ここは遙か平安の時代。
 
 天界でまるで仙人の修行で使う様な険しい斜面の岩場で獣の声が響いた。

 平安京に遷都される前、 早良親王の怨霊に因り天変地異、 落雷の被害などで頭を悩ませ、 
 桓武天皇は陰陽道の四神相応になる一番良い土地を探した。
 早良親王の怨霊や鬼から都を守る為に、 川(青龍)、 道(白虎)、澤(朱雀)、山(玄武)で守りを固め、 
これになる土地は今の平安京が一番だと考えた。


 と言うにも、 平安京に遷都する迄に様々なできごとがあった。
 平城京から長岡京に遷都するも、 早良親王の怨霊騒動は収まらず、 十年で平安京に遷都した。
 長岡京とは、 四神相応の地でないと思ったのかも知れない。

 平安京に遷都してから千年以上都として続いたのは、 桓武天皇の理想とした四神相応に相応しい土地であったと言うのは明白である。

 しかし、 平安京とは貧富の差が激しい上に疫病、 賊、 鬼や怨霊騒ぎの絶えないところも有った。 
 そんな頃に陰陽師たちが最も活躍をした時代でもある。

 現世(うつしよ)を天界から眺めて居る獣たちが居た。
 「やれやれ……。 現世では相変わらず、 騒ぎも絶えぬ様だ。 我々を四神相応として、 今の都に遷都したのは桓武であったな?」

 青龍は頷いた。
 「早良の怨霊を恐れて、 だな。 平安京となった今も怨霊も鬼も居る」

 青龍は東を守護する神で、 平穏な都を願って付けられた平安京での次から次へと起こる騒乱に、
 人の世など、 この様なものだと悟って居た。



 気の進まぬ声色で青龍は、 白虎、 大きな亀に蛇の絡まった獣を玄武に話を続けた。
 「陰陽師、 綾小路匡胤に召喚されておるが。 ……そなたらはどうする?」

 面倒くさそうな声で白虎が答えた。 白虎は西を守護する神。 この中で最年長である。
 「又あの陰陽師か。 ……術も使えぬただの陰陽師くずれならば返り討ちにしてやるところだが。
 匡胤なら……行くしかあるまい?」

 朱雀が炎の翼をばたつかせて天空から白虎に反論した。
 「お前だけ行って来い。 俺はごめんだな」

 白虎と朱雀は仲が悪く、 いつも話を拗らせて居る。 どちらも気の短い獣だ。

 大きな岩陰に居た紅一点の玄武は地響きを立てながら出て来た。
 この中で最も獰猛であり、 万物の終焉を象徴するように黒く暗い雰囲気を醸し出している。  
 「いつもながら、 うるさいわ。 我ら揃わねば意味も無いであろう」

 青龍は、 白虎、 朱雀、 玄武を宥めた。
 「やめぬか。 お前達。 どうした? 行くのか? 行かぬのか?」

 玄武は白虎と朱雀に問い掛けた。
 「我らが揃わなければ意味もあるまい。 青龍、 そなたが行くと言うなら我も共に行く。
 白虎、 朱雀、 そなたらは?」

 冷静な青龍は頷いた。
 「行くぞ、 白虎、 朱雀。 しかし、 この様な姿で現世に行けば人を怯えさせるだけだ。 我ら下等な
鬼の類ではない」

 青龍、 白虎、 朱雀、 玄武は頷いてそれぞれ人の化身となった。

 綾小路匡胤、 陰陽師である。

 月明かりも眩い夜、 現世に降りた青龍達は一条戻り橋を飛び越えた。
 橋の下に鬼神の気配を感じたからだった。 

 一条戻り橋。 堀川に架かる冥界に通じるとされる曰く色々付いたこの橋は、 怪奇な言い伝えなどが有った。
 熊野に浄蔵と言う僧が居て父の三善清行(みよし きよゆき)が重い病を患い、 駆け付けた浄蔵だったが
既に息絶えた後だった。 丁度、 戻り橋の上で父の葬列に会い、 浄蔵が加持を行うと蘇生した為、 戻り橋と言う名になったと言い伝えられる。
 又、 渡辺綱が源頼光の使いで一条の大宮に出向いた日の夜、 戻り橋で美しい女人に会った。
 「五条の邸迄、 私を送ってはくださいませぬか?」
 
 女に頼まれた渡辺綱は、 こんな夜更けに女人一人ではと女を送ることにした。
 女を馬に乗せると鬼となり、 渡辺綱の髻(もとどり)を掴むと空へ飛んだが、 渡辺綱と言えば少しも慌てずに
髭切と言う名刀を抜いて鬼の腕を斬り落とした。 鬼が愛宕に向かって飛んで逃げた。
 渡辺綱は源頼光に鬼の腕を見せると源頼光は驚いたが、 生前の安倍晴明に相談したと言う。

 又、 安倍晴明は妻が式神を恐れ、 この戻り橋の下に鬼神を隠して居た話も有名である。
   

 綾小路匡胤邸の門の前にふらりと現れた時、 勝手に門は開いて中から使用人に扮する式神が現れた。
 「匡胤様がお待ちでございます」

 青龍は溜息をついた。
 「式神か。 ……綾小路匡胤はどこにいる?」

 式神に案内され、 門を潜り広い庭から渡殿を歩いて奥の一室へ行き、 御簾を潜ると匡胤が
机の前に座して筆を取り何かを書いて居た。
 匡胤は、 人の成りをして居る四神を見て微かに笑った。
 「ほう、 そなたらの仮の姿を初めて見た。 人に見えぬこともない。 
私が術を掛けずとも人の姿で来るとは。 褒めてやろう」

 朱雀は自分の身なりを見て匡胤に聞く。
 「妙な恰好か?」

 「町人の恰好ではそなたらも納得しないであろう。 
 とは言え公卿の恰好をして居ても何処の誰かと聞かれたら困る。 その恰好で良い。 そなたらに相応しい」

 青龍は改めて匡胤に聞いた。
 「それで。 今回我らを召喚したのは? 天界から現世を見て居たがただごとではあるまい」

 匡胤は筆を置いて青龍達を見回した。
 「じきに解るであろう。 その前にそなたらにも通り名が必要であろう。 洛中でそのまま青龍だの白虎だのと呼ぶ
訳にもいかぬ」

 確かに。 そのまま呼ぶには帝や公卿、 町人達が不審に思うであろう。
 匡胤は別の紙を五人分出すとさらりと書いて青龍達に渡した。
 「青龍は雅己(まさき) 白虎を虎景、(とらかげ)、 朱雀を隼(はやと)、 玄武は女人ゆえ五十鈴(いすず)とする」
 
 この頃は、 通常、 官位か下の名で呼ばれて居て、 特に女人は通り名で呼ばれ、 家族以外に本名を知らない。
 これも、 陰陽師などを使い、 良くない術を掛けられない様に用心して居たのだ。

 それに加え、 当時、 藤原氏や源氏が多かった為、 苗字で誰かを呼ぶと皆振り返る為でもある。

 陰陽師の大活躍する時代で、 仕事に陰陽師を選ぶ者も多く居た。

 深夜にも関わらず匡胤邸の門を叩いて居る男が居た。
 源右京と言う武将の息子だった。
 「匡胤、 源右京だ。 伝えたい話が有る」

 隼は匡胤に問いかける。
 「何か人がこの様な真夜中に現れたぞ?」

 「良いのだ。 門を」
 門は匡胤の式神が開けに行って源右京を蔀と御簾を下ろし、 薄明かりの灯った高燈台を置いた部屋に招いた。

 右京は驚いた。
 「匡胤、 随分と客人が多いな? 邪魔であったか?」

 そう言って元雅と名付けられた青龍たちを見回して居た。
 「良いのだ右京、 この者らとて”人”ではない」

 右京は顎に手を置いて一瞬考えた。
 「と、 なると式神をこれ程作ったのか?」

 白虎である虎景は声を荒げた。
 「式神? 我らを作っただと? 口を慎め若造。 ここに居るのは青龍、 白虎、 朱雀、 玄武だ」

 右京は驚いた。
 「匡胤、 お前はこの様な鬼神も操るのか?」

 虎景が声を荒げた。
 「操られて居るのではない。 我ら力をこの匡胤に貸してるだけだ。 この匡胤とて……」

 匡胤は虎景を制した。
 「虎景、 ……今まだ言うな」

 匡胤は何か隠して居ると察知した右京。
 「水臭いぞ匡胤、 俺にも言えぬのか?」

 匡胤にも人に安易に言えない秘密が有った。
 
 話を続ける虎景。
 「匡胤は表向け”人”であり陰陽師になって居るが我らと同等の黄龍」

 驚いた右京。
 「そなたただの陰陽師でないとは思って居たが……お前も鬼神なのか?」

 匡胤は右京の問いに俯いて答えた。
 「黄龍の魂を宿して居る……。 今話せることは、 ……それだけだ。 それより右京、 こんな夜更けに来るとは? ……帝か?」

 右京は頷いた。
 「薬湯や加持祈祷を持ってしても一向に回復される見込みもない……」

 匡胤は目を伏せた。
 「帝も間も無く譲位されて近々出家なされ……崩御されると出て居る」

 右京は驚いた。
 「そのようなこと……、 軽々しく言うものではないのだが。 ……まことか? 譲位されると言う噂を聞いて
居たが……。 次の帝も既に決まって居るらしい」

 匡胤は冷静な口調で呟いた。
 「らしいな」

 そんな匡胤を見た右京は不思議そうに匡胤を見た。
 「帝が変わると言う一大事だが、 ……何とも思わぬのか?」

 匡胤は溜息をついた。
 「どうでも良い。 私には関係無いのだ。 ところで今日の昼間暇か?」

 暇人扱いされ、 一瞬嫌な顔をする右京。
 「暇でも無いが。 ……俺に何か頼みか?」

 「この者達は都に着いたばかりで、 まだ解っていない。 洛中を案内してやってくれ。
 暦を作成せねばならぬのでな。 忙しい。 夜に百鬼夜行の日だがこの者達が居る。 安心しろ」

 平安時代の貴族達は和歌や管弦で遊んでばかりと言うイメージが強いが、 この頃の人々は皆何某かの仕事を持って居て、 特に貴族の場合も例外ではない。 過剰な長時間労働など当たり前だった。

 貴族達は日常生活の全てを陰陽師の占いで決められ生活をしていた。
 例えば、 朝起きて楊枝を使い歯の掃除、 仕事や外出は勿論、 方違え、 物忌み、 禊、 風呂など、
あらゆる生活について陰陽師の占いから決まって居たので占いから外れる行動は自らを危険にすることと同じ意味
を持つ為、 それに従った日常を送って居た。 

 又、 平安貴族女性の命とも言える美しい黒髪も例外では無かった。 髪は呪術で使われる場合も有り、 大切に扱われ、 ただ美しさを保つ為だけで念入りに手入れをして居ただけではなかった。


 日も明けて右京は匡胤の邸に青龍達を連れに来た。
 朱雀大路を進む一向。

 朱雀である隼はあまりの広さに驚いて居た。
 荷を背負う商人、 やんごとなき姫君とお付きの者、 公卿、 中に貧しさで腹を空かせて座り込んで居る者まで居た。
 「朱雀大路か。 俺の名から名付けられたんだな? それにしても広い。 これ程に広い道を人は
歩いて居る。 俺たちなら一瞬で目的地に着ける」

 右京はやれやれと言う顔をした。
 「消えるんであろう? それをすれば意味も無いであろう。 良いか、 お前達今は”人”だ。 忘れるな」

 隼に言い聞かせている尻から虎景の姿が無い。
 右京は慌てて辺りを見回すと、 市の手前で露店を出して居る前で肉を食べて居た。
 急いで虎景に近寄り小声で聞く。
 「虎景、 お前、 金を持って居るのか?」

 虎景は猪肉を煮込んだ物を次々と口に頬張りながら答えた。
 「金? なんだそれは? それよりうまいぞこの肉」

 右京は虎景の袖を引っ張ると少し声を荒げた。
 「食い逃げするつもりか」

 渋々、 右京は露店の主に金を払った。 金を払って居る間に五十鈴が小物売りの店先で髪飾りを触って居る。
右京は又慌てて五十鈴の傍へ行って髪飾りの金を払った。
 「匡胤め……こうなると知りつつ俺にこの者達の案内を擦り付けたな。 お前達好き勝手に動くな」

 都を何も知らない雅巳、 虎景、 隼、 五十鈴に振り回され慌ただしい日中を過ごした右京は疲れてしまった。
 今宵、 百鬼夜行の日で日が暮れぬ間に匡胤の邸へ連れ帰った。

 涼しい顔をして匡胤は右京達を待って居た。
 「右京、 どうだ? この者達と居ると安心であろう?」

 右京はむきになると匡胤に反論した。
 「何が安心だ、 金も持ってないのに食い逃げしそうになったり散々な目に遭った。
 匡胤、 お前解っていたであろう?」

 匡胤はまた涼しい口調で答えた。
 「それより今宵は百鬼夜行の通る夜だ。 お前もこの邸に留まり早朝に帰ると良い。 何もなければ良いが」

 匡胤は一人部屋に籠り、 占いをして居た。
 
 気になった右京は御簾越しから覗くと背を向けて座る匡胤が居た。
 「今宵の百鬼夜行の数が多過ぎる。 間も無くこの邸近くを通るであろうが結界を張って居るゆえ鬼たちも、 すぐに通り過ぎるであろう。
 それより、気になる帝だが。 急ぎ出家されるやも知れぬ。 今から虎景を参内させ告げるが昨夜言った通り帝の崩御も近いゆえな」

 匡胤は書状を虎景に渡すと虎景はその場から消えた。

 虎景は参内すると宮中では騒動を起こして居た。 百鬼夜行の集団は今まさに宮中付近を通って居る。
 百鬼夜行の影響で帝は正気を失い、 譲位して今出家すると騒いで居たのだ。
 虎景と百鬼夜行の大乱闘が繰り広げられ、 逃げ惑う百鬼夜行の集団。

 百鬼夜行たちは虎景に襲い掛かるが百戦錬磨の神・白虎に敵う筈もない。


 宮廷内では大騒動を起こして三種の神器を守りで固めた安全な所に移動させてしまった。

 慌ただしい宮廷を外で眺めて居る妙な男が居た。 冠や烏帽子を被っていない為、 宮中の者や公卿ではないらしい。
 虎景が擦れ違いざまに男に告げた。
 「ここで何をして居る? 道悦(どうえつ)」

 道悦と言われた男は鋭い視線を虎景に向けた。
 「人の姿に化けて居るが虎景か、 俺が召喚をした時はお前達に散々な目に遭わされた。 
……匡胤になら従うと言うことか」

 虎景は少ない笑みを浮かべた。
 「なぜ俺の通り名を知って居る? どうせ、 式神を匡胤の邸に飛ばして見張らせて居たのであろう。 
術は匡胤と同等かもしれぬが。 貴様は信用できぬゆえな。 それに”従う”とは? 我ら力を貸すのみ」

 背中を向けて道悦に呟いた虎景はその場から消えてしまった。
 恨みと陰謀の籠った顔色で道悦はにやりと笑った。

 
 匡胤の邸にふらりと帰った虎景は百鬼夜行との戦い、 宮中の騒動など細かく匡胤に話した。
 「ところで妙な男に会った。 匡胤、 道悦を知って居るな?」

 微かに溜息をついた匡胤。
 「知っているもなにも。 奴が私を敵対視するのでな。 事毎に邪魔をされて居る。
 我々陰陽師同士にも争いは常に有る」

 権力争い、 陰謀から人と人が憎しみ恨みも生まれ、 怨霊が生まれる。

 ふと目を伏せた雅巳は独り言の様に呟いた。
 「人の世とは、 そういうものだ。 古今東西何も変わっておらぬ」

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