×××する場所がない!

西 美月

文字の大きさ
上 下
18 / 20
第一章

直央の部屋②

しおりを挟む

 直央は背後の、壁の時計を確認する。祖母がよく行くスーパーは3つある。自宅から一番近いところで徒歩5分だ。

 往復の時間とスーパーでの買い物の時間を考えて、大河と2人きりでいられる時間は20分ほどだろう。
 行くスーパーや買い物内容によってはもっと長くかかることもあるだろうが、安全で確実なのが20分だ。

 そもそも今日祖母が買い物に行くかどうか分からなかったが、運良く出かけてくれた。

 今までならこの時間でくっついたり、手を繋いだり、キスをしたりしていたが、今日は──。

「ど、どないしよ、布団敷く?あ、電気消してカーテンを……」

 突然やってきたチャンスタイム。時間が限られていることもあっておろおろと慌てていると、

「落ち着け。布団も明かりもいい。時間も無いだろ」

 腕を引かれて、そのまま唇を食まれた。歯列を割って熱い舌が入ってくるのを、おずおずと受け入れる。

「んっ、ふ、あ……っ、あ」

 上顎を優しく擦られると、ふにゃり力が抜ける。何度も角度を変えて舌を吸われると、直央の思考は淫欲に染まっていった。

 導かれあぐら座りの大河を跨ぐようにして腰を下ろす。
 直央からもその厚い唇を貪るようにして唇を重ねると、背中に回されていた大きな手が直央のやわらかい髪を梳き、頭皮を撫でて、そして力強く直央を掻き抱いた。

「……ぅ、たいが、ん……、んン」

 だらしないほど甘い声で意味もなく名前を呼ぶと、幸せに胸が震えた。
 もっとと言わんばかりに、直央も大河の大きな背中に腕を回す。無駄のない筋肉質で逞しい背中だ。

 直央の口端からよだれが溢れる。
 くちゅくちゅと、いやらしい音が立つとまるで口の中を大河に犯されているようだ。

 恥ずかしい。それでも直央は、口づけをやめなかった。

 頭の隅では、そんな自分をおかしいと思う。

 今まで直央は、手を繋ぐだけで、キスするだけで、十二分に幸せだったのに、どうしてかもっともっとと大河を求めたくなる。
 いつの間にこんなにもみだらな自分になってしまったのか。
 考えようとして、それはすぐにあっけなく霧散した。

「大河、脱いで……?」

 上擦る声で直央は、大河にそんなお願いをする。

 今日は直央が手でする番だ。それは事前に話し合って決めたこと。

 頷いた大河はおもむろに自身のパンツに指を掛けて、身体を浮かせると下着ごとずらした。

 何の躊躇いもない男らしい所作に、直央は目を見張る。
 黒々とした茂みがちらっと視界に入ったが、逸らすようにして大河を見る。

 部屋は外からの陽光も、照明も、煌々としている。

「……こんな明るいとこで、恥ずかしないん……?」

「ああ、それより、直央の顔を見ていたいしな」

 きゅん、どころか、ぎゅんっ、と胸が痛む。「へ、へえ……、そうなんかぁ」とおざなりに相槌を打つが、その顔は耳まで真っ赤だ。

 大河は普段から愛情表現が激しいわけではない。ただ純粋に思ったことを恥ずかしげもなく言ってくるのだ。
 だから今のも、気の利いた甘言などではない。本心だからこそ、直央は毎回嬉しくてどうしようもなくなる。
 好かれているのだと、愛されているのだと、大河を信じることができる。

「直央」

「あ……、そや、時間ないんやったな。頑張るから任せて」

 よし、と気合を入れて、直央はおそるおそる視線を大河の股間に向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虫嫌いの男子高校生が山登り遠足に行って、虫の浮いている汚いトイレで用を足せなくて、道中で限界を迎える話

こじらせた処女
BL
虫嫌いの男の子が山のトイレを使えない話

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

可愛い男の子が実はタチだった件について。

桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。 可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...