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第一章
直央の部屋②
しおりを挟む直央は背後の、壁の時計を確認する。祖母がよく行くスーパーは3つある。自宅から一番近いところで徒歩5分だ。
往復の時間とスーパーでの買い物の時間を考えて、大河と2人きりでいられる時間は20分ほどだろう。
行くスーパーや買い物内容によってはもっと長くかかることもあるだろうが、安全で確実なのが20分だ。
そもそも今日祖母が買い物に行くかどうか分からなかったが、運良く出かけてくれた。
今までならこの時間でくっついたり、手を繋いだり、キスをしたりしていたが、今日は──。
「ど、どないしよ、布団敷く?あ、電気消してカーテンを……」
突然やってきたチャンスタイム。時間が限られていることもあっておろおろと慌てていると、
「落ち着け。布団も明かりもいい。時間も無いだろ」
腕を引かれて、そのまま唇を食まれた。歯列を割って熱い舌が入ってくるのを、おずおずと受け入れる。
「んっ、ふ、あ……っ、あ」
上顎を優しく擦られると、ふにゃり力が抜ける。何度も角度を変えて舌を吸われると、直央の思考は淫欲に染まっていった。
導かれあぐら座りの大河を跨ぐようにして腰を下ろす。
直央からもその厚い唇を貪るようにして唇を重ねると、背中に回されていた大きな手が直央のやわらかい髪を梳き、頭皮を撫でて、そして力強く直央を掻き抱いた。
「……ぅ、たいが、ん……、んン」
だらしないほど甘い声で意味もなく名前を呼ぶと、幸せに胸が震えた。
もっとと言わんばかりに、直央も大河の大きな背中に腕を回す。無駄のない筋肉質で逞しい背中だ。
直央の口端からよだれが溢れる。
くちゅくちゅと、いやらしい音が立つとまるで口の中を大河に犯されているようだ。
恥ずかしい。それでも直央は、口づけをやめなかった。
頭の隅では、そんな自分をおかしいと思う。
今まで直央は、手を繋ぐだけで、キスするだけで、十二分に幸せだったのに、どうしてかもっともっとと大河を求めたくなる。
いつの間にこんなにもみだらな自分になってしまったのか。
考えようとして、それはすぐにあっけなく霧散した。
「大河、脱いで……?」
上擦る声で直央は、大河にそんなお願いをする。
今日は直央が手でする番だ。それは事前に話し合って決めたこと。
頷いた大河はおもむろに自身のパンツに指を掛けて、身体を浮かせると下着ごとずらした。
何の躊躇いもない男らしい所作に、直央は目を見張る。
黒々とした茂みがちらっと視界に入ったが、逸らすようにして大河を見る。
部屋は外からの陽光も、照明も、煌々としている。
「……こんな明るいとこで、恥ずかしないん……?」
「ああ、それより、直央の顔を見ていたいしな」
きゅん、どころか、ぎゅんっ、と胸が痛む。「へ、へえ……、そうなんかぁ」とおざなりに相槌を打つが、その顔は耳まで真っ赤だ。
大河は普段から愛情表現が激しいわけではない。ただ純粋に思ったことを恥ずかしげもなく言ってくるのだ。
だから今のも、気の利いた甘言などではない。本心だからこそ、直央は毎回嬉しくてどうしようもなくなる。
好かれているのだと、愛されているのだと、大河を信じることができる。
「直央」
「あ……、そや、時間ないんやったな。頑張るから任せて」
よし、と気合を入れて、直央はおそるおそる視線を大河の股間に向けた。
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