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第一章
大河の部屋②
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「あんな、痛いのは嫌やから、優しくしてな」
「ああ、優しくする」
「上手くできんくても怒らんといてな」
「そんなことで怒るわけがないだろ」
「あと……」
視界が陰り、上唇を食むようにしてキスが落ちてきた。
「もういいか?ずっと我慢してたんだ。早く直央の中に入りたい」
余裕のない大河の雄の表情を間近で見てしまい、きゅうっ、と腹の奥が甘く蠢く。
めくれた服の裾から手を入れて、自分の薄い下腹を撫でてみる。これからここに大河のものを受け入れるのだ。
「……ちゃんと入るんかな?」
「お前、煽ってるのか」
「何が?」
「本当にたちが悪いな」
ため息混じりに大河が顔を歪める。
「ん?なに?なんの話?」
しつこく訊ねると「もう黙れ」と唇で口を塞がれた。
すぐに湿った舌が入ってくる。粘膜同士が触れ合うぬるぬるとした感触が気持ちいい。キスがこんなにも気持ちいいものだと教えてくれたのは大河だ。
きっと下手だろうけど、精一杯応えたい。
直央からも舌を差し出して、舐めて、絡めて、とろとろに蕩けそうなほど深く交じり合う。
息が上がることに比例して体温も上がってきている気がする。
──暑い。服が邪魔やな。
そんな心を読んだかのように、大河が直央の服を脱がしにかかる。
万歳をしてそれを手助けしようとした時、
「ただいまー!」
「あれっ?知らない靴がある!」
元気のいい声と共に一階の廊下をドタドタと走る足音が聞こえて、直央の心臓は大きく跳ねた。
慌てて大河の身体を押し返す。
岸本家の三男四男である小6の双子が帰ってきてしまったらしい。
「直央くんじゃね。つか、お前らマジでうるさい」
中3の次男も一緒らしく、名前が出た直央はさらに身体を固くする。
危ないところだった。
彼らが大河の部屋にやって来る可能性はゼロではない。おまけにこの部屋には鍵がない。
直央は裾を掴んでいる大きな手を、離せとばかりにぺちぺち叩いた。
「今日はここまでみたいやな」
声のボリュームを絞って、覆いかぶさる大河を覗き込むと、笑ってしまいそうになるくらい不服丸出しの顔だった。
「嫌だ」
そう言いながらも、直央の上から退いてくれるから、なんだか可愛い。
「まあまた今度したらええやん」
慰めようと肩を撫でようとした手をつかまれ、その力の強さにドキリとする。
真っ直ぐな大河の視線が直央を射抜く。
「分かった今日はこれでやめる。だからせめて直央の乳首が見たい」
一拍置いて、直央は「はい?」と首を傾げる。
ものすごく真面目な顔でこの男は今なんと言ったのか、しっかりと聞こえたけれど、あまりにも表情とかけ離れたことを言うから理解できなかった。
「乳首、見たい」
わかりやすくはっきりと言われ、直央は天を仰ぐ。むっつりスケベにも程がある。
学級委員で成績優秀な大河が、じつはこんなにも好色な男だとクラスメイトたちが知ったらいったいどんな反応をするだろう。
女子は卒倒するかもしれない。
「アホかっ、見てどうすんねん。体育の時かてオレ普通に着替えてるし見てるやんっ」
「近くで見たい。見るだけで触らない。まあ、本当はこっちがいいがな」
大河の人差し指が、直央の股間を指差す。
こんなのムッツリどころか、ただのスケベだ。変態だ。
しかも、その二択では直央が下半身を見せるわけがないと分かって言っているから嫌になる。
「……ほんまに、絶対、見るだけ……?」
チョロい自分も嫌になる。
「ああ、勿論だ」
早く終わらそうと、直央は服をぺろりとめくった。男同士だし、上半身くらい恥ずかしくない、はずだった。
「いや、近すぎんそれ?」
直央の右胸の小さな飾りを、鼻がつきそうな程顔を近づけて大河が見てくる。
息を感じるほどの距離に思わず身を引くが、もれなく大河が追ってくる。
「ひゃあっ」
たまらず声を上げたのは、その場所をぱくっと口に含まれたからだ。
舌先でちろちろと刺激されて、直央は叫びそうになった。
しかし、階下から笑い声が聞こえてきてハッと我に返り、なんとか堪える。声を上げたら、誰か来てしまうかもしれない。
刺激に反応して主張しはじめた小さな突起。
吸われて、齧られて、また舐められて、ほとんど涙目になって、どうにか直央は近くの枕を掴んだ。
そしてそれでぼかぼかと大河を殴る。
「触らんいうたやんっ!」
「触ってないだろ」
「確かになあ、口やもんなあ、ってアホかー!」
その日はそれで解散となった。
「ああ、優しくする」
「上手くできんくても怒らんといてな」
「そんなことで怒るわけがないだろ」
「あと……」
視界が陰り、上唇を食むようにしてキスが落ちてきた。
「もういいか?ずっと我慢してたんだ。早く直央の中に入りたい」
余裕のない大河の雄の表情を間近で見てしまい、きゅうっ、と腹の奥が甘く蠢く。
めくれた服の裾から手を入れて、自分の薄い下腹を撫でてみる。これからここに大河のものを受け入れるのだ。
「……ちゃんと入るんかな?」
「お前、煽ってるのか」
「何が?」
「本当にたちが悪いな」
ため息混じりに大河が顔を歪める。
「ん?なに?なんの話?」
しつこく訊ねると「もう黙れ」と唇で口を塞がれた。
すぐに湿った舌が入ってくる。粘膜同士が触れ合うぬるぬるとした感触が気持ちいい。キスがこんなにも気持ちいいものだと教えてくれたのは大河だ。
きっと下手だろうけど、精一杯応えたい。
直央からも舌を差し出して、舐めて、絡めて、とろとろに蕩けそうなほど深く交じり合う。
息が上がることに比例して体温も上がってきている気がする。
──暑い。服が邪魔やな。
そんな心を読んだかのように、大河が直央の服を脱がしにかかる。
万歳をしてそれを手助けしようとした時、
「ただいまー!」
「あれっ?知らない靴がある!」
元気のいい声と共に一階の廊下をドタドタと走る足音が聞こえて、直央の心臓は大きく跳ねた。
慌てて大河の身体を押し返す。
岸本家の三男四男である小6の双子が帰ってきてしまったらしい。
「直央くんじゃね。つか、お前らマジでうるさい」
中3の次男も一緒らしく、名前が出た直央はさらに身体を固くする。
危ないところだった。
彼らが大河の部屋にやって来る可能性はゼロではない。おまけにこの部屋には鍵がない。
直央は裾を掴んでいる大きな手を、離せとばかりにぺちぺち叩いた。
「今日はここまでみたいやな」
声のボリュームを絞って、覆いかぶさる大河を覗き込むと、笑ってしまいそうになるくらい不服丸出しの顔だった。
「嫌だ」
そう言いながらも、直央の上から退いてくれるから、なんだか可愛い。
「まあまた今度したらええやん」
慰めようと肩を撫でようとした手をつかまれ、その力の強さにドキリとする。
真っ直ぐな大河の視線が直央を射抜く。
「分かった今日はこれでやめる。だからせめて直央の乳首が見たい」
一拍置いて、直央は「はい?」と首を傾げる。
ものすごく真面目な顔でこの男は今なんと言ったのか、しっかりと聞こえたけれど、あまりにも表情とかけ離れたことを言うから理解できなかった。
「乳首、見たい」
わかりやすくはっきりと言われ、直央は天を仰ぐ。むっつりスケベにも程がある。
学級委員で成績優秀な大河が、じつはこんなにも好色な男だとクラスメイトたちが知ったらいったいどんな反応をするだろう。
女子は卒倒するかもしれない。
「アホかっ、見てどうすんねん。体育の時かてオレ普通に着替えてるし見てるやんっ」
「近くで見たい。見るだけで触らない。まあ、本当はこっちがいいがな」
大河の人差し指が、直央の股間を指差す。
こんなのムッツリどころか、ただのスケベだ。変態だ。
しかも、その二択では直央が下半身を見せるわけがないと分かって言っているから嫌になる。
「……ほんまに、絶対、見るだけ……?」
チョロい自分も嫌になる。
「ああ、勿論だ」
早く終わらそうと、直央は服をぺろりとめくった。男同士だし、上半身くらい恥ずかしくない、はずだった。
「いや、近すぎんそれ?」
直央の右胸の小さな飾りを、鼻がつきそうな程顔を近づけて大河が見てくる。
息を感じるほどの距離に思わず身を引くが、もれなく大河が追ってくる。
「ひゃあっ」
たまらず声を上げたのは、その場所をぱくっと口に含まれたからだ。
舌先でちろちろと刺激されて、直央は叫びそうになった。
しかし、階下から笑い声が聞こえてきてハッと我に返り、なんとか堪える。声を上げたら、誰か来てしまうかもしれない。
刺激に反応して主張しはじめた小さな突起。
吸われて、齧られて、また舐められて、ほとんど涙目になって、どうにか直央は近くの枕を掴んだ。
そしてそれでぼかぼかと大河を殴る。
「触らんいうたやんっ!」
「触ってないだろ」
「確かになあ、口やもんなあ、ってアホかー!」
その日はそれで解散となった。
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