上 下
20 / 31

ダンジョンには、確かに夢と希望が……って違う?

しおりを挟む
「さて、準備はいいか?」

俺はレイナたちに視線を送ると、三人は緊張した面持ちのままコクンと頷く。

「ねぇ、本当に行くの?」

心配そうに声を掛けるミィナ。

「大丈夫だ、ミィナの創ってくれたポーションも山ほど持ったし、万が一に備えての食料も万全だ。」

あと……。

口には出さなかったが、女神ちゃんのギフト、今日の分はまだ何も降ろしていない。

初見の……、しかも虹色の扉という、前人未到のダンジョンだ。

何があるか分からないため、下手にスキルを決めなほうがいい。

俺は、ミィナにいない間の事を任せると、扉に手をかけ、ゆっくりと開く。




「ふわぁぁぁ……。」

「これがダンジョン……。」

「広い……にゃ?」

マーニャが何とも言えない声をあげる。

目の前には草原が広がり、一見広く見える。

しかしよく見ると背の高い草に紛れているが、10M程先には壁が見える。

その先を追うと、やはり先の方に壁が見える。

壁がなければただっぴろい草原と言えなくもないのだが、その壁が妙な圧迫感を醸し出し、見た目より狭さを感じさせるのだ。

「まぁ、ダンジョンだからな。それよりトラップに気を付けて進むぞ。」

「任せるにゃん。」

マーニャはそう言うと先頭に立ち歩き始める。

マーニャは獣人だけあって、俺達より感覚が鋭い。

そして、普段の調子からは考えられないほど慎重に進んでいる。

俺の気配探知にも、魔物の気配は感じられないし、ここはマーニャに任せて後をついて行くか。

俺達は、壁沿いにダンジョンの中の探索を始めるのだった。


「んー……。」

「マーニャ、どうしたの?」

2時間ほどして、マーニャが少し迷いを見せたので、レイナが声を掛ける。

「にゃんか、おかしいニャ。」

「ん、おかしい。」

マーニャに応えるようにアイナも追従する。

「とりあえず、敵の気配も感じないし、休憩にしようか。」

俺はそう言ってその場に腰を下ろす。

ここまで、モンスターにもトラップにも出会っていないため、いささか退屈していたこともあり、みんなも素直に腰を下ろし、荷物を降ろしてくつろぎ始める。


「それで、何がおかしいんだ?」

俺はみんなにお茶を入れたカップを渡し終えてからマーニャに声を掛ける。

「ウン、にゃんかね、おにゃじ所グルグル回ってる気がするにゃ。」

「同じ所?」

……確かに見回す限り草原で、景色の変化に乏しいけど。

「ウン、マーニャの言う事に間違いない。」

アイナがそう言って石板を見せてくる。

そこにはアイナが書いたと思われる地図……と言っても四角と矢印が書かれているだけだが、その矢印が途中で同じところを重ね書きされていた。

「うーん……じゃぁ、休憩が終わったら戻ってみようか?」

現段階では、確実にループしているかどうかは分からない。

そしてこの手のループの脱出法の一つに、前進せずに後退するというものもある。

その事をみんなに伝えると、レイナが不安そうな顔をする。

「どうした?」

「うん……もし、ループしてたとして、ずっと抜けれなかったらって考えたら怖くなって……。」

俺はそんなレイナに優しく声を掛ける。

「大丈夫だ。とりあえず食料も一ヶ月以上持つだけ持ってきてるし、それだけの時間があれば、入り口にぐらいは余裕で戻れるって。俺を信じろ。」

「……ん、カズトさんが言うなら信じる。」

レイナは少し頬を赤らめ、俺から視線を逸らす。

えっと、これは、フラグが立ったってやつ?

「……甲斐性なしが、頼もしい。」

「レイナちゃん乙女もーどにゃ。」

「マーニャ、どう見る?」

「……甲斐性ナシはヘタレにゃ。とりあえず大丈夫……と思うニャ。」

「ヘタレが寝てるときに襲う?」

「レイナちゃんをセットクするのが先ニャ。」

「そうね。」

……なにやら二人が、ぼそぼそと怖い相談をしているんだが……。

ウン、聞かなかったことにしよう。


「さて、そろそろ出発しようか。」

俺はアイナに、入り口を目標に向かうように告げる。

アイナはマーニャと並んで石版とにらめっこしながら来た道を戻り始めたのだが……。



「やっぱりおかしい。」

本日二度目の休憩。

結論から言おう。俺達は迷っていた。

アイナの石版を元にすれば、ここから西に100mも行けば出口……と言うか俺達が入ってきた扉があるはず。

しかし、ここから西側、というのは俺が今もたれている石壁の向こう側と言う事で……。

「私達が入ってから、真っ直ぐ東を目指してたよね?……壁にぶつかったのって100mぐらいだった?」

レイナがぼそりと呟くとアイナが首を横に振る。

「1kmほど歩いても先が見えにゃかったから、そこから南に進路を変更したにゃ。」

マーニャがそう答える。

「そう……じゃぁ、この壁は?」

レイナが青ざめた顔でそう呟くが、アイナもマーニャも答えられない。

俺はそんな会話を聞きながら、ある仮説を立てる。

……まさかな。でも……。

俺はその仮説を実証するためにも、ある程度の時間を必要とするので、ここで思い切って決断を下すことにした。


「よし、少し早いが、今日はここで夜営だ。」

俺の言葉に、三人娘は少しだけ、ほっとした顔を見せた。

ずっと歩き回って、訳の分からない現象に巻き込まれて……きっと自分たちが考えている以上に疲れていたのだろう。

ウン、ムリはいけない。こういう時は……。

俺は収納から、あるものを取り出す。

村に着いてからは使う事の無かったものだが、こういう所では役に立つ。

「カズトさん、それは?」

「お風呂だよ。以前ミィナと旅している時に使っていたものだ。」

俺が取り出したのは直径3mの幹をくりぬいた樹の湯舟だ。

女の子3人なら、余裕で一緒に入れるはず。

「疲れた時はお風呂に限る。俺が見張っているからゆっくり入って疲れを癒すといいぞ。」

俺は、そういながら、温度を調節した水……というかお湯を、魔法で生成して湯船に溜めていく。

コレ、使っているのは初級魔法の初歩の初歩なんだけど、地味に技術がいるんだよなぁ。

ミィナとの旅の間で技術が向上し、今では、ほらあっという間に、……って、せっかくお風呂の用意が出来たのに、三人は誰一人として服を脱ごうとしない。
このままでは、せっかくのお湯が冷めてしまうではないか。

「どうした?遠慮しなくていいんだぞ?」

「カズトさん、本気で言ってる?」

レイナが責めるような目でそう聞いてくる。

「イヤだなぁ……、俺がこんな所で冗談を言うとでも?」

「……ここ、遮るもの何もないよね?」

レイナがジト目で俺を見る。

「だから俺が見張りをするんじゃないか。俺は気配感知も使えるし、怪しい者が近づいてきたらすぐわかるからな。」

「怪しい者……。」

アイナが俺を指さす。

……人を指さしちゃいけませんって教わらなかったのかな?

でも仕方がないじゃないか。誰かが見張っていないと。

……まぁ、その見張りの時に、見えちゃうのは不可抗力……そう不可抗力なんだ。

「……そんな言い訳しなくても、一緒に入ればいい。」

アイナがそんな事を言う。

……なんですとっ!

『よしキタッ!女の子からのお誘いだぜ。ここは余裕をもって混浴に臨むんだ。』

『だめよっ!、そんな欲望に流されちゃいけないわっ!』

悪魔君と天使ちゃんのバトルが始まる。

「私達は夫婦。一緒に入っても問題ない。」

さらに追い打ちをかけるようにアイナが言う。

「ソ、ソウダネ……夫婦だもんね……。」

『その通りだっ!何の問題はないっ!』

『ダメぇ、正気に戻ってぇぇ……。』

「それとも……カズト様は一緒に入るの……イヤ?」

アイナが耳元でそんな事を囁く。

「い、いや、そうだな……一緒に、入るか……。」

……はい、陥落しました。

脳内では、天使ちゃんを足蹴にした悪魔君がガッツポーズを決めている。

……仕方がないじゃないか。こんなかわいい子達が、一緒に入ろうって誘ってくれてるんだぞ。しかも、名目上、俺達は夫婦。指一本触れていなくても夫婦なのだ。混浴ぐらいいいだろ?
村では新婚さんが混浴してるんだぜ?俺達が混浴して何が悪い。

……あ、ちょ、ちょっと息子さん、今はまだ大人しくしててね。

俺のリビドーにむくッと起き上がる息子をあやしながら俺は服を脱ごうとするが、顔を赤らめたレイナがやってきて「脱がせてあげる」と囁く。

……これはっ!
とうとう、とうとうしちゃうのか、卒業!
しかも相手は三人?
誰?誰と卒業する?

俺の頭の中が混乱している隙に、レイナがギュッと抱きついてきて……俺の腕を後ろに回して縛る。

「え?」

何が起こったか分からずにいると、背後にいたマーニャが俺に目隠しをして縛る。

「あの……えっ?」

「こうすれば安心。」

アイナの声が聞こえる。

……ですよねぇ。分かっていましたとも。

……くそっ、期待させやがって。いつかヒィヒィ言わせてやるからなっ!

「心配ない、ちゃんと一緒に入る。」

アイナの声がしたかと思うと、俺の衣服がゆっくりと脱がされる。

……え?

時々肌に触れるアイナの感触からして、彼女はすでに一糸まとわぬ姿のようだ。

ふと動いた瞬間にポッチみたいなのがあたるのは……

目隠しされ、自由も奪われているが……これはこれでいいかも……。

その後、3人と一緒の湯船に浸かり、身動きできない俺を3人が代わる代わる洗ってくれた。

見えないだけに、妄想が膨らみ、時々触れる少女のポッチに、マイサンも元気いっぱい主張していて……うぅ……オムコにいけない。

くぅ、なんたる恥辱......しかし……。

何か、新たな性癖に目覚めそうだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...