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引き籠り聖女 VS スカイドラゴン

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「ドラゴン……。」
エルザが見上げるように空を仰ぎ見る。
そこまでしてやっとドラゴンの顔を見る事が出来る……それだけでかいのだ。エルザの身背の高さは、後ろ脚の膝にあたる部分ぐらいまでしかない。

身体を覆う鱗は陽の光を浴びて、空色から藍色への綺麗なグラデーションを作り出している。
身に纏う魔力の属性は風。
束縛を嫌い、その気分に応じて、自由気ままに世界を旅する蒼風龍の眷属、スカイドラゴンだ。

『か弱き人間の娘よ、我が本当の姿をみせたことを誇るがよい。しかし、それと戦いの勝敗は別物である。そなたほどの知恵者であるならば、彼我の実力差がわかるであろう?悪い事は言わぬ。ここで敗北を認めるがよい。』

スカイドラゴンの言うとおりだった。
エルザの背丈では、加速してジャンプをしたとしても、ようやくドラゴンのお腹辺りに剣を届かせるのがやっとだ。
しかも、ドラゴンに対して普通の武器でダメージを与えるには、エルザの力量では不可能なので、魔法を併用する必要性がある。
しかし、風の属性を持つエルザとスカイドラゴンでは、あまり相性がいいとは言えず、エルザの持つ魔法でスカイドラゴンにダメージを与えられるとすれば聖属性の魔法ぐらいなのだが、生憎とエルザの使える聖魔法で攻撃に適したものは少ない。
これではまともにダメージを与えることも出来ない、というのは誰の目にも明らかだった。

「簡単に言ってくれるわね。私がここで敗北を認めたらどうなるかわかって言ってるの?」
『そのような些事に興味はない』
「やっぱりね。……その傲慢さはドラゴンらしいと言えるけど、ね……はっきりいてむかつくわっ!」
エルザがその場で思いっ切り飛び上がる。

『メイルシュトローム!』

背後からミヤコの唱えた魔法により、大いなる水の大渦がスカイドラゴンを飲み込む。
バランスを崩したスカイドラゴンの背をエルザが駆け上がり、翼の付け根の鱗と鱗の間の隙間に、魔力を纏わせた小剣を突き刺す。
そのまま、ドラゴンの背を蹴って距離を取りながらキーワードを唱える。

『ファイナルブレイク!』

ドラゴンに突き刺さった小剣が爆発を起こし、その身体を爆炎が包み込む。
その破壊力は、込めた魔力にもよるが、最大エクスプロージョン30発分に相当すると製作者であるユウが、ドヤ顔で言っていた。
当時は、「そんな馬鹿げた威力を込めてどうすんのっ!ドラゴンとでもやり合う気?」などと言っていたのだが、まさか本当にドラゴン相手に使うことになるとは思いもよらなかった。

爆炎が晴れる。
エルザの内包魔力では、いいところエクスプロージョン15発程度の威力が最大ではあったが、流石にそれだけの爆発を間近で喰らえば、いかにドラゴンとはいえ、無傷では済まない。
現に、眼前のスカイドラゴンの体表を覆う鱗は罅割れ、爆心地となった翼はボロボロに崩れている。
……しかし、逆に言えば、それだけのダメージしか与えられていないのだ。

「うぉぉぉぉぉっ!今なら、奴は飛べねぇっ!」
カズトがドラゴンに突っ込んでいく。
魔力を纏わせた拳で、ドラゴンに殴りかかる。
転移者の膨大な魔力の前に、ひび割れた鱗ではダメージを軽減できず、カズトが殴るたびに、鱗が弾け飛んでいく。

「みんな、お願いよっ!」
ミヤコの命を受けて召喚獣たちがそれぞれにドラゴンへと攻撃を仕掛ける。
特にフェンリルの放つ氷の槍は、それなりにダメージを与えていく。

「……女神様の慈悲なる心をもって、無慈悲なる攻撃から守り給え!『聖なる無敵盾セイクリッド・イージス』!」
エルザはカズトの前に聖なる障壁を張り、反動によるダメージを軽減させる。
そして魔力回復ポーションを飲み干した後、予備の小剣を取り出し、再びドラゴンの背を駆け上る。

ユウが作成した自爆する小剣は残り5本。
この5本で倒しきれなかったら負けだ。
だからこそ、狙う場所は、慎重に見極める必要がある。

幸いにも、カズトやミヤコの召喚獣たちの攻撃によって、ドラゴンの気はそちらに向いていて、駆け登るエルザの事は気にも留めていない。

「ここよっ!」
エルザは、ドラゴンの右前脚の付け根に小剣を突き刺してその場を離れる。
「みんな、一度下がってっ!……『ファイナルブレイク!』」

再び爆音が響き、爆炎がドラゴンを包み込む。
爆炎が晴れた後、ドラゴンが一声吠える。
『あんまり見くびるでないぞ人間共よ。』
今の小剣には先ほどと同程度の魔力を込めた筈なのだが、さっきより半分以下のダメージしか与えられなかったように見える。
『同じ攻撃が我に通じると思うなよっ!』
どうやらレジストして爆発の威力を押さえたらしい。

ドラゴンの尻尾が辺り一帯を薙ぎ払う。
巻き込まれた召喚獣たちが弾かれ跳ね飛ばされていく。
「くそっ!隙を突くしかねぇ。」
カズトがドラゴンの攻撃の合間を縫って近づこうとするが、上手くいかない。

相手の攻撃を躱していると、突然ドラゴンの動きが止まる。
「チャンスだぜっ!」
カズトが飛び出す。
「ダメっ!伏せてっ!」
エルザがそう叫び、ドラゴンに向けて小剣を投げつける。

カズトがその場に伏せると同時に、ドラゴンの口からブレスが放たれる。
『ファイナルブレイク!』
エルザが自爆のキーワードを唱える。
カズトとドラゴンの丁度中間の位置で小剣が爆発し、その爆炎がドラゴンブレスを相殺する。

その間にカズトが一旦エルザたちの許へ下がる。
「クッソっ!ブレスを何とかしないと。」
「それもそうだけど、ダメージを与える火力が足りないわ。」
召喚獣たちがドラゴンに攻撃を加えるのを見ながらエルザが悔しそうに呟く。

「……エルちゃん、その小剣ってまだ魔力込めれるよね?」
「うん。」
「あとどれだけ残ってる?」
「二本。」
「じゃぁ、その二本に私が魔力を限界まで込めるから、その間時間を稼いで。」
「それはいいけど、そのあとどうするんだ?」
ポーションを飲み干したカズトが聞いてくる。

「エルちゃんには悪いけど、何とかしてあのドラゴンに頭近くに二本とも突き刺してもらうわ。さすがにユウちゃん特製の自爆剣MAX2本分の威力があれば、首ぐらい千切れるでしょ?」
「よし、それでいこう。ただ、問題はあのブレスだな。」
『それは我が食い止めて見せよう』
黙って聞いていたフェンリルのフェンちゃんがそう口を挟んでくる。
『ただし、我の全力を尽くしても3分が限界だ。』
「3分か……。ミヤコ剣に魔力を注ぐのにどれくらいかかる?」
「もう込め始めてるわ。あと30秒……かな?」
「よし、俺が何とか奴の気を引く。ブレスを吐いてきたときが勝負だ。フェンと俺でブレスを相殺している間にエルちゃんはドラゴンに向かってくれ。そして3分以内にあの首まで辿り着いて剣を突き刺すんだ。」
カズトはそう言い捨ててドラゴンへ向かって走りだしていった。

カズトがドラゴンの腕を躱し、カウンターで拳を突き上げる。
ドラゴンはダメージがないかのように、後ろ足で蹴り上げ、尻尾で薙ぎ払い、前足の鋭い爪で切裂いてくる。
その様々な攻撃を紙一重で躱しつつカウンターを入れるカズト。
ドラゴンは平気な振りをしているが、動きが少々鈍くなっていることから見ると、わずかながらにもダメージが通っているのだろう。

エルザは気配を消しながらドラゴンの足元へとにじり寄っていく。

『ぐぉぉぉっぉ!』
ちまちまとした攻撃に焦れたのか、ドラゴンは勝負を一気につけるべく、大きく息を吸い込みブレスを吐く。
『ウォオオオオオオォォォンッ!』
フェンリルのフェンちゃんが氷のブレスを吐き、ドラゴンのブレスを真正面から受け止める。

流石は神獣だけあって、その魔力はドラゴンに引けを取らない。
しかし、召喚獣と龍族では地力の差が大きすぎる。
フェンちゃんの氷のブレスはジリジリと押され始めている。
カズトがすぐ横で障壁を張った自らの身体を盾に、ブレスの何割かを受け持ってはいるが、それでもドラゴンの威力に押され気味だ。
「クッ、エルちゃん、急げよ。」
カズトはそう呟き、更に魔力を開放する。

エルザはカズトとフェンちゃんがブレスを留めているのを横目に見ながら、ドラゴンの背を駆け上っていく。
最初の爆発でつけた傷が半分ほどふさがっている。
ドラゴンの恐るべき超回復力だ。
このままではそれ程時間を置かず、翼が再生されるだろう。
そうなってしまえば御終いだ。
空を飛ぶドラゴンに対抗できるだけの力はない。
成す術も無く蹂躙されて終わりだろう。
そういう意味でも、この攻撃がラストチャンスだった。

ぐらっ。

ドラゴンの身体が傾く。
バランスを崩したエルザは、辛うじて落ちるのをこらえ、その場に踏みとどまる。

ぐるんっ!

ドラゴンの身体が大きく振られる。
振り落とされそうになりながらも、エルザは、鱗掴んで離さない。
身体が鱗で擦れて切り傷が増える。
鱗を掴んでいる手はすでに血まみれで力が入らない。
ユウ特製の防具を装着していてでさえこの傷だ。
ドラゴンの体表には魔力を中和させる何かがあるのかもしれない。

「くっ、負けないんだからねっ!」
ドラゴンの動きが止まったところで立ち上がり、再び駆け登る。

足場の悪い中を、風の加護の加速を使って走り抜ける。
あと一跳びすればドラゴンの喉元に剣が届く、という所まで来た時、地表の様子が目に入る。
ドラゴンのブレスがやみ、フェンちゃんとカズトが倒れている。
二人……一人と一頭はどうやらドラゴンのブレスを防ぎ切ったらしい。
しかし、ドラゴンにはまだ余力がある。
地に伏せたカズトとフェンちゃんを再びブレスで焼き尽くそうと、大きく息を吸うのが見える。

「やらせないっ!」
エルザは、最後の力を振り絞って小剣を握り締め大きく飛び上がる。
ジャンプの最高点に到達したところで、目の前に迫るドラゴンの喉元に思いっきり小剣を突き刺す。
そのまま落下しながらエルザは最後のキーワードを唱える。

『ファイナルブレイク!』

今までとはけた違いの爆発が起きる。
爆風に煽られて、エルザの身体が吹き飛び少し離れた地面に叩き付けられる。
装備のお陰で大きなダメージはないが、衝撃まで殺せなかったみたいで、一瞬息が詰まる。

『ウググゥ……。』
流石のドラゴンも、ミヤコの魔力量の前には無事でいられずにのた打ち回る。

「やったか?」
「バカッ、それフラグっ!」
満身創痍になりながら、呟くカズトをミヤコがたしなめる。

『グゥォォ……。よもや、矮小な人間ごときに、これほどの手傷を負わされるとは……。』
爆炎が晴れ、やはりボロボロになったスカイドラゴンが呻く。
『しかし、これまでだ。そなたらの勝機はもうない。』
スカイドラゴンが天高く舞い上がる。

「ウソっ!もう翼が再生したのっ?」
「みんな、私の後ろにっ!……『聖なる無敵盾セイクリッド・イージス』!」
エルザは自分の前方に半径3m程度の半円形の障壁を張る。
範囲を狭くした分、強度に魔力を注ぎ込む。

『グゥォォォォッ!』
時を置かず、上空からドラゴンのブレスが放たれる。

「くぅっ……。」
「エルちゃん頑張れ……『魔力譲渡《トランスファー》』」
ミヤコがエルザの肩に手を置き、自分の魔力を流し込んでくれる。
辛うじてブレスを防いで入るが、エルザの魔力が尽きるか、集中が途切れたら、そこまでだ。

「クッ……もう……。」
エルザは片膝を落とす。それでも障壁は張ったまま堪えている。
しかし、それは最後のあがきであり、倒れるのも時間の問題だった。
「クッ……。」

どれほど耐え続けたのだろう、不意にドラゴンのブレスが止む。
ブレスの方が先に尽きたらしい。
と同時にエルザがその場に崩れ落ちる。
当然、エルザによって支えられていた障壁も消える。

スカイドラゴンは好機とばかりに息を大きく吸い込む。
「クッ、ここまでか……。ミヤコっ!」 
カズトがドラゴンに背を向け、ミヤコを抱きしめる。
まるで自分がミヤコの盾になるかのように。
「カズト……。まぁ、最後がアンタと一緒ってのもいいかもね。」
ミヤコも最後を悟り、諦めた様に身体の力を抜き、カズトに身を預ける。

スカイドラゴンのブレスがエルザたちに直撃する。
「だけど、少しは足掻くからね。」
ミヤコは残りの魔力を込めて魔力障壁を張る。
無属性の障壁で、大抵の攻撃は弾くことが出来るだけの強度を持っているが、ドラゴンのブレスの前には、数秒ほど生きながらえる事しかできないだろう。

しかし、その数秒が運命の明暗を分ける。
パリーンっと、障壁が破れる音がし、ミヤコは死を覚悟する。
最後ぐらいは、カズトに……と、近くにあるカズトの唇に自分の唇を押し付ける。
カズトもそれに応えてくれる……そして、ブレスによって、跡形もなく焼きつくされる……筈だった。

「……生きてる?」
……いつまでたっても訪れない死の足音に、不審を抱きながら、ミヤコはそっと唇を離し空を見上げる。

そこには、微動だにしないスカイドラゴンと、その眼前に浮いているユウの姿があった。
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