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引きこもり聖女と要塞の村
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「はーい、それはこちですよー。」
ミヤコの指示に従い、村人たちが動いている。
かなりの重労働だが、皆不平を漏らすでもなく、一生懸命働いていた。
「ミヤコちゃん、お疲れさま。ちょっと休憩しないかい?」
そんなミヤコに、冷たい飲み物を差し出しながら、マルガリータが声をかける。
「ありがとう、マルガリータさん。」
ミヤコは飲み物を受け取って、手近な台を椅子にして座る。
「大分出来て来たねぇ。でも、ここまでする必要があるのかい?」
「うーん、私も規模が大きい気もするんだけどねぇ……まぁ、ユウと親衛隊が暴走した結果だから仕方がないでしょ。」
ミヤコは目の前の光景を見つめながらそう言う。
今ミヤコが行っているのは、村の周りを囲う『城壁』の作業だ。
事の起こりは、ユウが「村の守りを固める」と言ったことから始まった。
それになぜかエルザが賛同したため「村の要塞化計画」が始まったのだ。
戦争が悪化し、べリア王国の敗戦は濃厚との事だった。
敗戦がこの村にどういう影響を与えるかまでは分からないが、食い詰めて盗賊と化した者たちが襲いに来ることは可能性として大きいし、敗戦ともなれば、領主が護ってくれるとは限らない。
最悪の場合、領主の軍がこの村に略奪に現れる可能性だってある。
領主の軍でなくても、落ち延びてきたべリア軍の敗残兵とか、敗残兵狩りをしているガリア王国の兵とかが襲ってくる可能性だってある。
それらの事を考慮すると、村の守りを強化するのは必要な事だと、エルザは説明するのだった。
「私もここまでするつもりはなかったんだけどねぇ。」
「あ、エルちゃん。」
「様子を見に来たんだけど、順調みたいね。」
「ここまでするつもりはなかったって、どういうことだい?」
マルガリータがエルザにも飲み物を渡しながら訊ねる。
「あ、うん、最初はね、村の周りにトラップを仕掛けるのと、柵を作るだけの筈だったのよ。後は、万が一の事を考えて、教会に逃げ込める準備って感じだったんだけど、ユウがね……。」
◇
「諸君、集まってくれたことに感謝する。」
いつもの広場の中央にユウが立ち、何やら演説を始める。
「今、この村は未曽有の危機に晒されようとしている、とのご神託があった。」
うぉぉっぉ~!
なぜか盛り上がる村人たち。
最前列に位置する親衛隊?達はいつもの事だけど、他の村人たちも、何やら興奮し始めている。
「今、この国は滅びを迎えようとしている。抑える者のいなくなったこの界隈では、力あるものがルールとなり、すべてを喰らう。力なきものは、搾取されるのを、ただただ、甘んじて受け入れるしかない。男は殺されるか奴隷に。女は子どもであろうが、関係なく強者の慰みものに、老人たちは戯れに命を奪われる……。」
ユウの言葉に村人たちの顔つきが険しいものになっていく。
「汝らはこのまま座してそれを受け入れるのか?」
「「「「「「否!」」」」」」
「ここから逃げ出して滅びを迎えるか?」
「「「「「「否!」」」」」」
「運命に抗い、大切な者を護るために足掻くか?」
「「「「「「応!」」」」」」
「ならば、このユースティアに従うがよい。汝らに守りの加護を与えようぞ!」
うぉぉぉぉ~~~~!
村人たちの咆哮が響き渡る。
『『『『ユウ様、ばんざーい!』』』』
一人の言葉が伝染し、瞬く間にユウを湛える声が沸き上がる。
広場の盛り上がりは最高潮を迎えたところで、ユウが厳かに、指示を伝える。
「では、A班は使徒ミヤコの指示に従って城壁を。」
「「「「「「応っ!」」」」」」
「B班は使徒、カズトに従って堀を掘る。」
「「「「「「イエス・マムっ!」」」」」」
いつの間に班が出来ていたのか知らないが、ユウの言葉に従い、瞬く間にいくつかのグループに分かれ、指名されたリーダーの許へと集まる。
「ったく、誰が使徒よ……。ハァ、そこのアナタとアナタ、何人か連れて材木の確保を。あなたは石材をお願いね。それからそこのあなた……。」
文句を言いながらミヤコは、集まった人々に作業を振り分けるのだった。
◇
「……って感じでね。結局、かなり大掛かりな作業になっちゃったのよ。」
「あんたも大変だねぇ。でも、うちらの為にそこまでしてくれるのは、本当にありがたいよ。聖女様には感謝しきれないねぇ。」
「だったら、またパイを焼いて来て下さい。ユウ、アレかなり気に入ってましたから、大喜びですよ。」
「そうさね、じゃぁ、さっそく差し入れの用意でもするかねぇ。」
マルガリータはそう言って去っていく。
その背中を見送った後、ミヤコがエルザに訊ねる。
「ねぇ、私は作業してるから、何作ってるかはわかるんだけど、結局、最終的な形が分からないのよねぇ。どんな感じになるの?」
「あ、あはは……知らない方がいいと思うけどね……。」
エルザは乾いた笑いを浮かべながら1枚の地図と広げてみせる。
「まず、ここがタウの村でしょ。森とか山脈のお陰で出入りがかなり制限されているから、殆どの場合、ここかここからじゃないと村に入れないのね。」
「うんうん」
要所を指し示しながら説明するエルザに頷くミヤコ。
「でね、この辺り一帯に罠を仕掛けてあるの。ユウ特製の落とし穴やトラバサミ、降り注ぐ槍の雨などが中心ね。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃぁ私たちも危険じゃないの?」
「私もそう思ったんだけどね、何でも普段は機能停止していて、有事の際に教会にあるスイッチを入れれば作動する仕組みになってるらしいのよ。ユウが、嬉々としながら作っていたわ。」
「はぁ……。それで最近ユウちゃん大人しかったのね。」
「まぁね。それから村を囲う城壁はミヤコが今作ってる奴ね。」
「うん、今3重目に入っているところ。」
「この一番外側の城壁と2番目の城壁の間は、カズトたちが深さ20m、幅50mの堀を作ってるわ。後は水を引き込むだけの状態ね。水が入ったら要所に設置してある橋を渡らないと出入りできなくなるわ。」
「成程ね、有事の際は橋を上げるか落としてしまえば時間が稼げるってことね。」
「……ユウがそんな単純だと思う?」
「えっ?」
「出来上がった堀にはアークサーペントを召喚するそうよ。もし誰かが攻めてきた場合、第一の城壁を乗り越えた後はアークサーペントとの戦いになるわね。」
「……もう、それだけでいいんじゃない?って言うか村の人の安全は大丈夫なの?」
「召喚するから、ユウには絶対服従だそうよ。」
「そうなんだ。」
「さらには第2の城壁には、有事の際はハルピュイア達が備えてくれることになってるから、まずここを抜けることは出来ないと思うけど、それでも抜けちゃった場合は……。」
「場合は?」
「第二の城壁と第三の城壁の間のスペースには落とし穴と地雷を設置するそうよ。空を飛ばない限り、そのどちらかに必ず引っかかるようにびっしりと敷き詰めるって。さらには第三の城壁の内側から油と火矢を放つ装置が仕込んであるそうだから、まず超えることは出来ないとは思うのよ。」
「って言うか、過剰防衛でしょうがっ!何考えてんのよ。」
「まぁ、普通はそう思うよね。でも、ユウが言うには3万ぐらいの兵が2/3を犠牲にして踏み台にすれば、抜けられなくはない、だそうよ。」
「うっ、それは……。」
確かに、数百人の肉壁を盾にして城壁を登り、堀を埋めるのには1万人も必要としないだろう。
そうして残った人数が第二の城壁を攻略、これも1万人を端から犠牲にするつもりで動けば、第三の城壁迄クリアできるのは間違いない。
そうして残った兵の数は1万にも満たないだろうが、それだけいれば、この村を蹂躙するには十分だ。
「って言うか、そもそもこんな村に3万もの兵が来る?」
「普通は来ないでしょうけど……。」
エルザはそう言いながら声を潜める。
「ユウがいるからね。彼女を手に入れる為なら10万の兵だって惜しくないと考えるバカは、いると思うわ。」
「あっ……。」
ミヤコはエルザに言われて、そのことを思い出す。
神話級のアイテムを易々と作り出すユウ。
一人でエンシェントドラゴンを屠るだけの魔力を持つユウ。
ユウ一人いれば世界を亡ぼすことも可能なのは神話が証明している。
ユウの正体を知らなくても、その力の一端を見れば、なんとしても手に入れようと画策するものは出てくるはずだ。
「だからね、そこまでしても敵が攻め入ってくる場合の事も考えて、教会内もかなり改装してるのよ。ユウが言うには転送の魔法陣さえ設置できれば完璧って言うんだけどね、まだ、そこまでは出来ないから、今は教会から抜け道を作っている最中。いざと言う時はそこから村の人を逃がすんだって。」
「成程ね……じゃぁ、私もちょっと気合い入れないといけないかな?」
「気合い入れるって?」
「うん、戦力の増強かな。……四聖獣か、古代龍、神獣あたりを召喚出来ないかなぁって、考えてるのよ。」
ミヤコは前々から、考えていたことを話す。
ミヤコの召喚獣の中で一番”格”が高いのは蜘蛛の精霊獣であるクーちゃんだ。
そのクーちゃんの話によれば、クーちゃんのような、精霊にまで進化した魔獣、神格化した魔獣などが少なからずいるらしい。
ミヤコなら、いずれは召喚できるようになる、とクーちゃんは言うのだが、エルザの話を聞いた今では、いずれではなく、今すぐに召喚できるようにならなければ、と思うのだった。
「まぁ、ユウが楽しそうに色々やってるから、しばらくは見守る方向で。」
「別にいいけどね。村の人たちさえよければ。」
「……女神様は乗り越えられない試練を課したりはしません。すべての試練は乗り越え、成長するためにあるのです。……女神様に祈りを!」
「……いいけどね。まぁ、指示を出してるのも女神様だしね。」
ミヤコがそういうと、なんとも言えない表情のまま明後日の方を見るエルザだった。
そのあとも、村の要塞化は順調に進み、カタパルトや弩、投石機などの巨大兵器をユウの指導の下作成し、各城壁に設置されていく。
一通りの設備が整い、完成祝いの祭りで盛り上がっているところに、その知らせは届いた。
『べリア王国、敗戦。以後ガリア王国に従うべし』
そういう御触れが、各地に公布されたのだった。
ミヤコの指示に従い、村人たちが動いている。
かなりの重労働だが、皆不平を漏らすでもなく、一生懸命働いていた。
「ミヤコちゃん、お疲れさま。ちょっと休憩しないかい?」
そんなミヤコに、冷たい飲み物を差し出しながら、マルガリータが声をかける。
「ありがとう、マルガリータさん。」
ミヤコは飲み物を受け取って、手近な台を椅子にして座る。
「大分出来て来たねぇ。でも、ここまでする必要があるのかい?」
「うーん、私も規模が大きい気もするんだけどねぇ……まぁ、ユウと親衛隊が暴走した結果だから仕方がないでしょ。」
ミヤコは目の前の光景を見つめながらそう言う。
今ミヤコが行っているのは、村の周りを囲う『城壁』の作業だ。
事の起こりは、ユウが「村の守りを固める」と言ったことから始まった。
それになぜかエルザが賛同したため「村の要塞化計画」が始まったのだ。
戦争が悪化し、べリア王国の敗戦は濃厚との事だった。
敗戦がこの村にどういう影響を与えるかまでは分からないが、食い詰めて盗賊と化した者たちが襲いに来ることは可能性として大きいし、敗戦ともなれば、領主が護ってくれるとは限らない。
最悪の場合、領主の軍がこの村に略奪に現れる可能性だってある。
領主の軍でなくても、落ち延びてきたべリア軍の敗残兵とか、敗残兵狩りをしているガリア王国の兵とかが襲ってくる可能性だってある。
それらの事を考慮すると、村の守りを強化するのは必要な事だと、エルザは説明するのだった。
「私もここまでするつもりはなかったんだけどねぇ。」
「あ、エルちゃん。」
「様子を見に来たんだけど、順調みたいね。」
「ここまでするつもりはなかったって、どういうことだい?」
マルガリータがエルザにも飲み物を渡しながら訊ねる。
「あ、うん、最初はね、村の周りにトラップを仕掛けるのと、柵を作るだけの筈だったのよ。後は、万が一の事を考えて、教会に逃げ込める準備って感じだったんだけど、ユウがね……。」
◇
「諸君、集まってくれたことに感謝する。」
いつもの広場の中央にユウが立ち、何やら演説を始める。
「今、この村は未曽有の危機に晒されようとしている、とのご神託があった。」
うぉぉっぉ~!
なぜか盛り上がる村人たち。
最前列に位置する親衛隊?達はいつもの事だけど、他の村人たちも、何やら興奮し始めている。
「今、この国は滅びを迎えようとしている。抑える者のいなくなったこの界隈では、力あるものがルールとなり、すべてを喰らう。力なきものは、搾取されるのを、ただただ、甘んじて受け入れるしかない。男は殺されるか奴隷に。女は子どもであろうが、関係なく強者の慰みものに、老人たちは戯れに命を奪われる……。」
ユウの言葉に村人たちの顔つきが険しいものになっていく。
「汝らはこのまま座してそれを受け入れるのか?」
「「「「「「否!」」」」」」
「ここから逃げ出して滅びを迎えるか?」
「「「「「「否!」」」」」」
「運命に抗い、大切な者を護るために足掻くか?」
「「「「「「応!」」」」」」
「ならば、このユースティアに従うがよい。汝らに守りの加護を与えようぞ!」
うぉぉぉぉ~~~~!
村人たちの咆哮が響き渡る。
『『『『ユウ様、ばんざーい!』』』』
一人の言葉が伝染し、瞬く間にユウを湛える声が沸き上がる。
広場の盛り上がりは最高潮を迎えたところで、ユウが厳かに、指示を伝える。
「では、A班は使徒ミヤコの指示に従って城壁を。」
「「「「「「応っ!」」」」」」
「B班は使徒、カズトに従って堀を掘る。」
「「「「「「イエス・マムっ!」」」」」」
いつの間に班が出来ていたのか知らないが、ユウの言葉に従い、瞬く間にいくつかのグループに分かれ、指名されたリーダーの許へと集まる。
「ったく、誰が使徒よ……。ハァ、そこのアナタとアナタ、何人か連れて材木の確保を。あなたは石材をお願いね。それからそこのあなた……。」
文句を言いながらミヤコは、集まった人々に作業を振り分けるのだった。
◇
「……って感じでね。結局、かなり大掛かりな作業になっちゃったのよ。」
「あんたも大変だねぇ。でも、うちらの為にそこまでしてくれるのは、本当にありがたいよ。聖女様には感謝しきれないねぇ。」
「だったら、またパイを焼いて来て下さい。ユウ、アレかなり気に入ってましたから、大喜びですよ。」
「そうさね、じゃぁ、さっそく差し入れの用意でもするかねぇ。」
マルガリータはそう言って去っていく。
その背中を見送った後、ミヤコがエルザに訊ねる。
「ねぇ、私は作業してるから、何作ってるかはわかるんだけど、結局、最終的な形が分からないのよねぇ。どんな感じになるの?」
「あ、あはは……知らない方がいいと思うけどね……。」
エルザは乾いた笑いを浮かべながら1枚の地図と広げてみせる。
「まず、ここがタウの村でしょ。森とか山脈のお陰で出入りがかなり制限されているから、殆どの場合、ここかここからじゃないと村に入れないのね。」
「うんうん」
要所を指し示しながら説明するエルザに頷くミヤコ。
「でね、この辺り一帯に罠を仕掛けてあるの。ユウ特製の落とし穴やトラバサミ、降り注ぐ槍の雨などが中心ね。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃぁ私たちも危険じゃないの?」
「私もそう思ったんだけどね、何でも普段は機能停止していて、有事の際に教会にあるスイッチを入れれば作動する仕組みになってるらしいのよ。ユウが、嬉々としながら作っていたわ。」
「はぁ……。それで最近ユウちゃん大人しかったのね。」
「まぁね。それから村を囲う城壁はミヤコが今作ってる奴ね。」
「うん、今3重目に入っているところ。」
「この一番外側の城壁と2番目の城壁の間は、カズトたちが深さ20m、幅50mの堀を作ってるわ。後は水を引き込むだけの状態ね。水が入ったら要所に設置してある橋を渡らないと出入りできなくなるわ。」
「成程ね、有事の際は橋を上げるか落としてしまえば時間が稼げるってことね。」
「……ユウがそんな単純だと思う?」
「えっ?」
「出来上がった堀にはアークサーペントを召喚するそうよ。もし誰かが攻めてきた場合、第一の城壁を乗り越えた後はアークサーペントとの戦いになるわね。」
「……もう、それだけでいいんじゃない?って言うか村の人の安全は大丈夫なの?」
「召喚するから、ユウには絶対服従だそうよ。」
「そうなんだ。」
「さらには第2の城壁には、有事の際はハルピュイア達が備えてくれることになってるから、まずここを抜けることは出来ないと思うけど、それでも抜けちゃった場合は……。」
「場合は?」
「第二の城壁と第三の城壁の間のスペースには落とし穴と地雷を設置するそうよ。空を飛ばない限り、そのどちらかに必ず引っかかるようにびっしりと敷き詰めるって。さらには第三の城壁の内側から油と火矢を放つ装置が仕込んであるそうだから、まず超えることは出来ないとは思うのよ。」
「って言うか、過剰防衛でしょうがっ!何考えてんのよ。」
「まぁ、普通はそう思うよね。でも、ユウが言うには3万ぐらいの兵が2/3を犠牲にして踏み台にすれば、抜けられなくはない、だそうよ。」
「うっ、それは……。」
確かに、数百人の肉壁を盾にして城壁を登り、堀を埋めるのには1万人も必要としないだろう。
そうして残った人数が第二の城壁を攻略、これも1万人を端から犠牲にするつもりで動けば、第三の城壁迄クリアできるのは間違いない。
そうして残った兵の数は1万にも満たないだろうが、それだけいれば、この村を蹂躙するには十分だ。
「って言うか、そもそもこんな村に3万もの兵が来る?」
「普通は来ないでしょうけど……。」
エルザはそう言いながら声を潜める。
「ユウがいるからね。彼女を手に入れる為なら10万の兵だって惜しくないと考えるバカは、いると思うわ。」
「あっ……。」
ミヤコはエルザに言われて、そのことを思い出す。
神話級のアイテムを易々と作り出すユウ。
一人でエンシェントドラゴンを屠るだけの魔力を持つユウ。
ユウ一人いれば世界を亡ぼすことも可能なのは神話が証明している。
ユウの正体を知らなくても、その力の一端を見れば、なんとしても手に入れようと画策するものは出てくるはずだ。
「だからね、そこまでしても敵が攻め入ってくる場合の事も考えて、教会内もかなり改装してるのよ。ユウが言うには転送の魔法陣さえ設置できれば完璧って言うんだけどね、まだ、そこまでは出来ないから、今は教会から抜け道を作っている最中。いざと言う時はそこから村の人を逃がすんだって。」
「成程ね……じゃぁ、私もちょっと気合い入れないといけないかな?」
「気合い入れるって?」
「うん、戦力の増強かな。……四聖獣か、古代龍、神獣あたりを召喚出来ないかなぁって、考えてるのよ。」
ミヤコは前々から、考えていたことを話す。
ミヤコの召喚獣の中で一番”格”が高いのは蜘蛛の精霊獣であるクーちゃんだ。
そのクーちゃんの話によれば、クーちゃんのような、精霊にまで進化した魔獣、神格化した魔獣などが少なからずいるらしい。
ミヤコなら、いずれは召喚できるようになる、とクーちゃんは言うのだが、エルザの話を聞いた今では、いずれではなく、今すぐに召喚できるようにならなければ、と思うのだった。
「まぁ、ユウが楽しそうに色々やってるから、しばらくは見守る方向で。」
「別にいいけどね。村の人たちさえよければ。」
「……女神様は乗り越えられない試練を課したりはしません。すべての試練は乗り越え、成長するためにあるのです。……女神様に祈りを!」
「……いいけどね。まぁ、指示を出してるのも女神様だしね。」
ミヤコがそういうと、なんとも言えない表情のまま明後日の方を見るエルザだった。
そのあとも、村の要塞化は順調に進み、カタパルトや弩、投石機などの巨大兵器をユウの指導の下作成し、各城壁に設置されていく。
一通りの設備が整い、完成祝いの祭りで盛り上がっているところに、その知らせは届いた。
『べリア王国、敗戦。以後ガリア王国に従うべし』
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