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引きこもりメイドとサキュバスっ娘 その3
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「くすん……。もうお嫁にいけない。」
「責任はとる。」
ぐたっりと疲れ切り、打ちひしがれている少女を、ユウはお姫様抱っこする。
いつも思うんだけど、小柄なユウのどこにそんな力があるのだろう?
そんなどうでもいい事をエルザは考えていた。
というか、どうでもいい事を考えて現実逃避していた。
目の前にはつやつやした顔のユウと、明らかに事後であると思われる全裸の少女。
そしてそれを眺めるハルピュイア達。
説明を、と無言で訴えてくるレーナの視線が痛い。
「えっと、もうすぐ馬車がここに来るから、落ち着いてから話しましょ?」
エルザは大きな布を取り出し、少女にかけながらレーナに言う。
レーナは周りを見回し、少し諦めたような表情で頷く。
ユウが少女に夢中になっている間に、エルザは馬面ゴーレムたちに命じて、馬車をここまで運んでくるように伝えていた。
ああなったユウは暫く動かせないし、捕われていたハルピュイア達も衰弱が激しく動かせそうになかったからだ。
「えっと、ユウのせいでうやむやになってたけど、あなたはみぃで魔族……でいいのよね?」
「そうよ。私はサキュバス族のみぃ。」
ミィはそう言って隠していた角と小さな羽根を顕現させる。
「うぉぉ、リアルロリサキュバスキター!」
「うっさい、黙れっ!」
背後で何やら喚くカズトをミヤコが殴って黙らせる。
「サキュバスって、あのサキュバスよね?」
「うむ、サキュバスの魅了は強力。抗えなかった。」
「嘘よっ!アンタに魅了が聞いてなかったの知ってるんだからねっ!うぅぅ……私サキュバスなのにぃ……。」
とぼけて言うユウに、涙目のみぃが糾弾する。
余程の責めを受けたらしいが、それ以上に喜びを甘受してしまったことを悔やんでいるみたいだった。
「えっとね、ユウだから仕方がないよ。」
えるざはみぃの方をポンポンと叩き慰める。
「えっと、ひょっとしてあなたも?」
「エルたんは私の嫁。」
ミィの探る様な声に、エルザではなくユウが応える。
それを聞いたみぃは今までのどこか警戒した様な視線ではなく、共感し、同乗するよ負うな愛でエルザを見て言う。
「そっかぁ、あなたも苦労してるんだね。」
その言葉に、エルザは黙って頷く事しかできなかった。
◇
「……という事で、私達も無我夢中で逃げてたからよく分からないのよ。」
「そっかぁ、あなた達も「跳ばされてきた」ってわけね。」
エルザはミィの話を聞いて一息つく。
ユウのおかげ?で、妙な親近感を得たミィとエルザは今までの警戒心はどこへやら、急激に仲良くなった。
そして、みぃがどうしてここに居るのかを聞き終わったところである。
ユウジと名乗る人間に出会ったことから始まり、セイマ=リア王国で起きたこと、魔族と人間という種族の垣根を超えた勢力を作り上げようとしていた事、人間族の裏切りにより、折角集まっていた魔族達がバラバラに散ってしまったことなど、エルザたちの知らない話が、ポンポン出てくる。
「そっかぁ、リア王国の噂は本当だったんだね。」
エルザ達が試験を受けている最中、街の噂で流れていた、遠く離れたリア王国で異変が起きているという噂。
詳細までは語られなかったtが、こう言う事だったんだ、とエルザは納得する。
騒ぎの中心になっているのは「ユウジ」という名の人間。
たぶん彼はテンイシャなのだろう。
王宮もその事は推測していたから、同じテンイシャのカズトとミヤコから引き離しておきたいと考えたという事はすぐにわかった。
「なぁ、そのユウジってやつ、俺達と同じなんだろ?」
「ん、たぶんね。」
カズトの言葉にエルザは軽く頷く。
「だったら、何とかして接触できねぇかな?話せばわかりあえると思うんだ。」
「どうかしら?話を聞いてるとあなたとそっくりだから、かえって反発するんじゃない?ほら、同族嫌悪ってやつ?」
ミヤコが冷たくそう言い放つ。
「どこが似てるってんだよ。」
「異世界でハーレム作ろうとしてる所?」
「……。」
ミヤコの的確な言葉にカズトは黙り込む。
「カズトもユウジと同じ?」
カズトたちの会話を聞いていたミィが、おもむろにカズトの横に座る。
「えっと、その、みぃちゃん?」
「さっきユウに少し分けてもらったけど……もう限界なの。」
みぃはカズトが抵抗する間もなく、その下腹部を覆う布を剥ぎ取りむき出しにさせる。
隆起したカズトの者がその場に曝け出されると、離れたところにいるメイドちゃん達が、「キャッ」と可愛い悲鳴を上げる。
あまりにも急すぎて、現状の判断が追い付かない周りを無視して、みぃは、そのそそり立ったものを自らの口で咥え、刺激を与え始める。
「あ、ちょっ、待っ……うっ!」
その天にも昇るような心地よい刺激に、経験のないカズトが抗える筈もなく、あっという間に昇りつめて、その小さな口の中に欲望の全てを吐き出す。
「んっ……ゴクン。」
カズトの全てを口いっぱいに受け止め、そのまま嚥下し、軽く舐めとった後ようやくその口を離す。
「ゴチソウサマ。これで1週間は大丈夫。」
みぃの言葉に、止まっていた時が動き出すかのように周りが動き出す。
「ちょ、ちょっと、みぃ、何やってるのよっ!」
「あ、エル、話し中にごめん。どうしても我慢できなくて……もう2週間以上精気を得てなかったから。」
「ん、サキュバスには男の精気が必要。私みたいな女の子じゃ一時凌ぎにしかならない。……でもみぃ、ごっくんだけでいいの?」
「男とするなんて絶対イヤ。」
みぃの言葉にカズトが項垂れる。
「どうでもいいけど、早くしまいなさいよ、ソレ。」
そのカズトの様子を見て、冷たい視線を向けながら、ミヤコが言う。
みぃの話によれば、みぃはサキュバス族の中でも変わり種で、女の子が好きなんだそうだ。
元々、サキュバス族が糧とするのは、生物の生命エネルギーそのものであり、エッチしなければ生きていけないわけではないらしい。
ただ、何もせずに生命エネルギーを得るのは非常に難しく、効率も非常に悪い。
なので、エッチをして昇りつめた時に放たれる精気をマナと共に取り込むというのが、サキュバス族が生きていくために編み出した方法である。
そして、その相手は女性より男性の方がいいというのは、男性の放つ子種には溢れんばかりの精気の元が詰まっていると言い、射精直後の相乗効果で、得られる精気は女性を相手にして得られる精気の何十倍にもになる。
自らの体内に直接受けとめればその精気のエネルギーを余すことなく、変換できるらしいのだが、口で受け止めても7割は回収できるという。
だからみぃは普段は女の子を相手にして、エネルギーが底をつきかける前に、イヤイヤ男性を相手にして精気を補充していたのだという。
だから今までにミィが身体を許したのは、ユウジ一人だけという話だった。
「というわけでね、エル。私を雇わない?」
「雇うって……。」
急な申し出に戸惑うエルザ。
「うん、正直言ってね、このままだと私たち、生きていくためにちょっと無理しなきゃいけないところまで追いつめられているの。」
彼女の言う「無理」とは、魔族としての力を開放することだ。
そうなってしまえば、護る力を持たない村人たちなどはあっという間に犠牲になり、そしてみぃ達は、ひと時の満腹感の後、人を敵に回すことになる。
「それ脅迫?」
「ううん、違うよ。単なる事実。でもね、ユウジのおかげで、人間にも良い人と悪い人がいるって事を知ったんだ。悪い人間は餌同然でいいとしても、いい人間を手にかけるのは、生きていく為って言ってもやっぱり気分のいいものじゃないでしょ?だからと言って、私達は人間と共存して生きていくためのの術を知らない。ユウジが間に居てくれたから私達は共存できたの。だから……。」
「私達に、そのユウジさんの代わりをやれって言いたいのね。」
「うん、そう言う事。その代わり私達も出来ることは力を貸すよ。」
「……私が断ったら、あなた達は人間の村を襲いに行くのね。」
「うん、仕方がないよ。生きていく為だもの。エルだったら、ずっと食事が出来なくて、死ぬ寸前にいた時、目の前にご飯が有ったらどうする?手を伸ばすよね?それがたとえ人のものであっても。」
死に直面した時、人はひとつの選択肢を迫られる。
そのまま座して死を受け入れるか、抗って生き延びるか。
抗って生き延びることを選ぶのであれば、その手段に善悪は関係ない。
生き延びることが最優先であり、他の事は生き延びてから考える事だから……。
みぃの言っていることは、つまりそう言う事だった。
「ごめんね、エルが困るのわかってる。だけど、私も、もう一度有事に会うまでは死ぬわけにはいかないの。」
「はぁ……脅迫と変わらないわよね。」
「いいの?」
「焦らないで、条件次第よ。あなた達の出す条件が呑めないものなら、私がここであなたを殺す。」
「物騒だなぁ。……エル相手で負けるとは思わないけど、そこにユウが加わるなら、私達は全滅するよね。」
冷静に戦力を分析して見せるみぃ。
「だから、私も争う事はしたくないの。私達の出す条件で無理なものはそう言ってね、出来るだけ妥協案を考えるから。」
「ん、わかった。」
そこからエルザとミィは、お互いの立場を考慮しあいながら条件の突合せを始める。
「まず私の条件は、1週間に一度でいいからあの男の精気を飲ませて。あの男じゃなくてもいいけど、出来居るだけ性格がいいほうがいいかな?さっきの盗賊達のような男はチョット……。」
「OKだ!エルちゃんが雇わないなら、俺が雇うっ!」
「うっさい、黙れっ!」
話に割り込んできたカズトをミヤコが足蹴にして引き離す。
「1週間に一度でいいの?カズトがいいなら毎日でもいいけど?」
エルザの言葉にカズトが大きく縦に首を振る。
「普段は女の子のほうがいい。」
「ユウの相手ならいいけど……他の子たちは本人と相談してね。合意の上なら私が口っすことじゃないわ。」
「ん、それでいい。」
「私達の要求は、あそこにあるような森に巣を作ることを認めてもらい、他の人間に不干渉でいてもらう事だが……出来るか?」
レーナがそう言ってくる。
ハルピュイア達は森の高い樹の上や断崖絶壁の岩肌などに巣を作るらしい。
食料になるのは主にイノシシやシカなど野生の動物らしい。
以前より、自ら進んで人族と敵対することは無かったが、人族の方が放っておいてくれなくて争いが絶えることがなかったという。
「私達が望むのは平穏。食糧の取れる森と、鈴鹿奈環境があればそれだけでいい。それを乱すのはいつも人間の方なのだ。」
レーナが悲しそうに言う。
「それなら大丈夫かな?あの森の向こう側が、今私達が拠点にしている村だから。村の人達にはテリトリーに入り込まないように言い聞かせておくわ。ただ、迷い込む人がいるかも知れないから、いきなり攻撃せずに警告を発してあげてくれると嬉しいな?」
「警告に従わなかったら?」
「さすがにそれ以上は面倒見切れないわ。あなた達に我慢を強いることも出来ないしね。」
言外に、好きにして、とエルザは言う。
正直なところ、エルザは人間の代表でもなく、村の代表でもない。
警告を発することは出来てもそれ以上の事まで責任は持てないのだ。
「じゃぁ、私からの条件ね。みぃは普段はあのメイドちゃん達と一緒に働いてもらう事と、私達と一緒に行動して。」
「一緒に?どういうこと?」
「あのね……。」
エルザはみぃに、ここが別の大陸であること、元の大陸へ気会えるための高度王をしていることなどを話す。
「そういういことなら私からお願いしたい。変える方法を密消えたら一緒に連れ帰って欲しい。」
レーナも、みぃの言葉に大きく頷く。
「細かい事は後で追々決めていくとして、とりあえずは交渉成立……かな?」
「うん、よろしくね。」
みぃは立ち上がって、エルザとユウ、ミヤコと握手を交わす。
手を差し出していたカズトを自然とスルーしかけて、思い出したように、その手を握る。
「よろしくね、私の愛しい人」
ミィが、カズトだけに聞こえるようにそっと囁く。
途端に舞上がるカズト。
その締まりのない顔を見ながら、ミヤコがエルザに呟く。
「いま、みぃは「ごはん」って言ったよね?」
「あ、あはは……本人が喜んでいるから、いいんじゃないかなぁ?」
「……暴走しなきゃいいけどねぇ。」
ミヤコは面倒毎が増えないように、と祈るのだった。
「責任はとる。」
ぐたっりと疲れ切り、打ちひしがれている少女を、ユウはお姫様抱っこする。
いつも思うんだけど、小柄なユウのどこにそんな力があるのだろう?
そんなどうでもいい事をエルザは考えていた。
というか、どうでもいい事を考えて現実逃避していた。
目の前にはつやつやした顔のユウと、明らかに事後であると思われる全裸の少女。
そしてそれを眺めるハルピュイア達。
説明を、と無言で訴えてくるレーナの視線が痛い。
「えっと、もうすぐ馬車がここに来るから、落ち着いてから話しましょ?」
エルザは大きな布を取り出し、少女にかけながらレーナに言う。
レーナは周りを見回し、少し諦めたような表情で頷く。
ユウが少女に夢中になっている間に、エルザは馬面ゴーレムたちに命じて、馬車をここまで運んでくるように伝えていた。
ああなったユウは暫く動かせないし、捕われていたハルピュイア達も衰弱が激しく動かせそうになかったからだ。
「えっと、ユウのせいでうやむやになってたけど、あなたはみぃで魔族……でいいのよね?」
「そうよ。私はサキュバス族のみぃ。」
ミィはそう言って隠していた角と小さな羽根を顕現させる。
「うぉぉ、リアルロリサキュバスキター!」
「うっさい、黙れっ!」
背後で何やら喚くカズトをミヤコが殴って黙らせる。
「サキュバスって、あのサキュバスよね?」
「うむ、サキュバスの魅了は強力。抗えなかった。」
「嘘よっ!アンタに魅了が聞いてなかったの知ってるんだからねっ!うぅぅ……私サキュバスなのにぃ……。」
とぼけて言うユウに、涙目のみぃが糾弾する。
余程の責めを受けたらしいが、それ以上に喜びを甘受してしまったことを悔やんでいるみたいだった。
「えっとね、ユウだから仕方がないよ。」
えるざはみぃの方をポンポンと叩き慰める。
「えっと、ひょっとしてあなたも?」
「エルたんは私の嫁。」
ミィの探る様な声に、エルザではなくユウが応える。
それを聞いたみぃは今までのどこか警戒した様な視線ではなく、共感し、同乗するよ負うな愛でエルザを見て言う。
「そっかぁ、あなたも苦労してるんだね。」
その言葉に、エルザは黙って頷く事しかできなかった。
◇
「……という事で、私達も無我夢中で逃げてたからよく分からないのよ。」
「そっかぁ、あなた達も「跳ばされてきた」ってわけね。」
エルザはミィの話を聞いて一息つく。
ユウのおかげ?で、妙な親近感を得たミィとエルザは今までの警戒心はどこへやら、急激に仲良くなった。
そして、みぃがどうしてここに居るのかを聞き終わったところである。
ユウジと名乗る人間に出会ったことから始まり、セイマ=リア王国で起きたこと、魔族と人間という種族の垣根を超えた勢力を作り上げようとしていた事、人間族の裏切りにより、折角集まっていた魔族達がバラバラに散ってしまったことなど、エルザたちの知らない話が、ポンポン出てくる。
「そっかぁ、リア王国の噂は本当だったんだね。」
エルザ達が試験を受けている最中、街の噂で流れていた、遠く離れたリア王国で異変が起きているという噂。
詳細までは語られなかったtが、こう言う事だったんだ、とエルザは納得する。
騒ぎの中心になっているのは「ユウジ」という名の人間。
たぶん彼はテンイシャなのだろう。
王宮もその事は推測していたから、同じテンイシャのカズトとミヤコから引き離しておきたいと考えたという事はすぐにわかった。
「なぁ、そのユウジってやつ、俺達と同じなんだろ?」
「ん、たぶんね。」
カズトの言葉にエルザは軽く頷く。
「だったら、何とかして接触できねぇかな?話せばわかりあえると思うんだ。」
「どうかしら?話を聞いてるとあなたとそっくりだから、かえって反発するんじゃない?ほら、同族嫌悪ってやつ?」
ミヤコが冷たくそう言い放つ。
「どこが似てるってんだよ。」
「異世界でハーレム作ろうとしてる所?」
「……。」
ミヤコの的確な言葉にカズトは黙り込む。
「カズトもユウジと同じ?」
カズトたちの会話を聞いていたミィが、おもむろにカズトの横に座る。
「えっと、その、みぃちゃん?」
「さっきユウに少し分けてもらったけど……もう限界なの。」
みぃはカズトが抵抗する間もなく、その下腹部を覆う布を剥ぎ取りむき出しにさせる。
隆起したカズトの者がその場に曝け出されると、離れたところにいるメイドちゃん達が、「キャッ」と可愛い悲鳴を上げる。
あまりにも急すぎて、現状の判断が追い付かない周りを無視して、みぃは、そのそそり立ったものを自らの口で咥え、刺激を与え始める。
「あ、ちょっ、待っ……うっ!」
その天にも昇るような心地よい刺激に、経験のないカズトが抗える筈もなく、あっという間に昇りつめて、その小さな口の中に欲望の全てを吐き出す。
「んっ……ゴクン。」
カズトの全てを口いっぱいに受け止め、そのまま嚥下し、軽く舐めとった後ようやくその口を離す。
「ゴチソウサマ。これで1週間は大丈夫。」
みぃの言葉に、止まっていた時が動き出すかのように周りが動き出す。
「ちょ、ちょっと、みぃ、何やってるのよっ!」
「あ、エル、話し中にごめん。どうしても我慢できなくて……もう2週間以上精気を得てなかったから。」
「ん、サキュバスには男の精気が必要。私みたいな女の子じゃ一時凌ぎにしかならない。……でもみぃ、ごっくんだけでいいの?」
「男とするなんて絶対イヤ。」
みぃの言葉にカズトが項垂れる。
「どうでもいいけど、早くしまいなさいよ、ソレ。」
そのカズトの様子を見て、冷たい視線を向けながら、ミヤコが言う。
みぃの話によれば、みぃはサキュバス族の中でも変わり種で、女の子が好きなんだそうだ。
元々、サキュバス族が糧とするのは、生物の生命エネルギーそのものであり、エッチしなければ生きていけないわけではないらしい。
ただ、何もせずに生命エネルギーを得るのは非常に難しく、効率も非常に悪い。
なので、エッチをして昇りつめた時に放たれる精気をマナと共に取り込むというのが、サキュバス族が生きていくために編み出した方法である。
そして、その相手は女性より男性の方がいいというのは、男性の放つ子種には溢れんばかりの精気の元が詰まっていると言い、射精直後の相乗効果で、得られる精気は女性を相手にして得られる精気の何十倍にもになる。
自らの体内に直接受けとめればその精気のエネルギーを余すことなく、変換できるらしいのだが、口で受け止めても7割は回収できるという。
だからみぃは普段は女の子を相手にして、エネルギーが底をつきかける前に、イヤイヤ男性を相手にして精気を補充していたのだという。
だから今までにミィが身体を許したのは、ユウジ一人だけという話だった。
「というわけでね、エル。私を雇わない?」
「雇うって……。」
急な申し出に戸惑うエルザ。
「うん、正直言ってね、このままだと私たち、生きていくためにちょっと無理しなきゃいけないところまで追いつめられているの。」
彼女の言う「無理」とは、魔族としての力を開放することだ。
そうなってしまえば、護る力を持たない村人たちなどはあっという間に犠牲になり、そしてみぃ達は、ひと時の満腹感の後、人を敵に回すことになる。
「それ脅迫?」
「ううん、違うよ。単なる事実。でもね、ユウジのおかげで、人間にも良い人と悪い人がいるって事を知ったんだ。悪い人間は餌同然でいいとしても、いい人間を手にかけるのは、生きていく為って言ってもやっぱり気分のいいものじゃないでしょ?だからと言って、私達は人間と共存して生きていくためのの術を知らない。ユウジが間に居てくれたから私達は共存できたの。だから……。」
「私達に、そのユウジさんの代わりをやれって言いたいのね。」
「うん、そう言う事。その代わり私達も出来ることは力を貸すよ。」
「……私が断ったら、あなた達は人間の村を襲いに行くのね。」
「うん、仕方がないよ。生きていく為だもの。エルだったら、ずっと食事が出来なくて、死ぬ寸前にいた時、目の前にご飯が有ったらどうする?手を伸ばすよね?それがたとえ人のものであっても。」
死に直面した時、人はひとつの選択肢を迫られる。
そのまま座して死を受け入れるか、抗って生き延びるか。
抗って生き延びることを選ぶのであれば、その手段に善悪は関係ない。
生き延びることが最優先であり、他の事は生き延びてから考える事だから……。
みぃの言っていることは、つまりそう言う事だった。
「ごめんね、エルが困るのわかってる。だけど、私も、もう一度有事に会うまでは死ぬわけにはいかないの。」
「はぁ……脅迫と変わらないわよね。」
「いいの?」
「焦らないで、条件次第よ。あなた達の出す条件が呑めないものなら、私がここであなたを殺す。」
「物騒だなぁ。……エル相手で負けるとは思わないけど、そこにユウが加わるなら、私達は全滅するよね。」
冷静に戦力を分析して見せるみぃ。
「だから、私も争う事はしたくないの。私達の出す条件で無理なものはそう言ってね、出来るだけ妥協案を考えるから。」
「ん、わかった。」
そこからエルザとミィは、お互いの立場を考慮しあいながら条件の突合せを始める。
「まず私の条件は、1週間に一度でいいからあの男の精気を飲ませて。あの男じゃなくてもいいけど、出来居るだけ性格がいいほうがいいかな?さっきの盗賊達のような男はチョット……。」
「OKだ!エルちゃんが雇わないなら、俺が雇うっ!」
「うっさい、黙れっ!」
話に割り込んできたカズトをミヤコが足蹴にして引き離す。
「1週間に一度でいいの?カズトがいいなら毎日でもいいけど?」
エルザの言葉にカズトが大きく縦に首を振る。
「普段は女の子のほうがいい。」
「ユウの相手ならいいけど……他の子たちは本人と相談してね。合意の上なら私が口っすことじゃないわ。」
「ん、それでいい。」
「私達の要求は、あそこにあるような森に巣を作ることを認めてもらい、他の人間に不干渉でいてもらう事だが……出来るか?」
レーナがそう言ってくる。
ハルピュイア達は森の高い樹の上や断崖絶壁の岩肌などに巣を作るらしい。
食料になるのは主にイノシシやシカなど野生の動物らしい。
以前より、自ら進んで人族と敵対することは無かったが、人族の方が放っておいてくれなくて争いが絶えることがなかったという。
「私達が望むのは平穏。食糧の取れる森と、鈴鹿奈環境があればそれだけでいい。それを乱すのはいつも人間の方なのだ。」
レーナが悲しそうに言う。
「それなら大丈夫かな?あの森の向こう側が、今私達が拠点にしている村だから。村の人達にはテリトリーに入り込まないように言い聞かせておくわ。ただ、迷い込む人がいるかも知れないから、いきなり攻撃せずに警告を発してあげてくれると嬉しいな?」
「警告に従わなかったら?」
「さすがにそれ以上は面倒見切れないわ。あなた達に我慢を強いることも出来ないしね。」
言外に、好きにして、とエルザは言う。
正直なところ、エルザは人間の代表でもなく、村の代表でもない。
警告を発することは出来てもそれ以上の事まで責任は持てないのだ。
「じゃぁ、私からの条件ね。みぃは普段はあのメイドちゃん達と一緒に働いてもらう事と、私達と一緒に行動して。」
「一緒に?どういうこと?」
「あのね……。」
エルザはみぃに、ここが別の大陸であること、元の大陸へ気会えるための高度王をしていることなどを話す。
「そういういことなら私からお願いしたい。変える方法を密消えたら一緒に連れ帰って欲しい。」
レーナも、みぃの言葉に大きく頷く。
「細かい事は後で追々決めていくとして、とりあえずは交渉成立……かな?」
「うん、よろしくね。」
みぃは立ち上がって、エルザとユウ、ミヤコと握手を交わす。
手を差し出していたカズトを自然とスルーしかけて、思い出したように、その手を握る。
「よろしくね、私の愛しい人」
ミィが、カズトだけに聞こえるようにそっと囁く。
途端に舞上がるカズト。
その締まりのない顔を見ながら、ミヤコがエルザに呟く。
「いま、みぃは「ごはん」って言ったよね?」
「あ、あはは……本人が喜んでいるから、いいんじゃないかなぁ?」
「……暴走しなきゃいいけどねぇ。」
ミヤコは面倒毎が増えないように、と祈るのだった。
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すると、コクッと力強くうなずく。
「そうなのか……。でも、どうして俺なんだ?」
「赤猫族の女……。命の恩人には、絶対服従スル……」
「へ?」
シンヤは思わず聞き返す。
だが、彼が思考を整理している間に、ミレアが距離を詰めてきて……。
彼女の口唇が、シンヤの頬に触れた。
「え!?」
突然のことに驚くシンヤ。
その隙をついて、今度は彼の首筋に舌を這わせる。
「ちょっ……! 何してんだよ!!」
慌てて飛び退くシンヤ。
「強い雄の子種がほしイ……。シンヤ、あたしと子どもをつくろウ?」
「いやいやいやいや!」
「ダメ……?」
「いや、そういう問題じゃなくてさ……。命の恩人というだけで、そこまでしなくてもいいぞ?」
「ソレだけじゃない。匂いも気に入った……」
「はぁ……」
「それに、シンヤはすごく強い魔力を持ってイル……。あたしも魔力持ちだからワカル……」
「まあ、確かにそうだけどな」
「きっと役に立つ……。あたしを使ってほしイ……」
そう言うと、ミレアは再び顔を近づけてくる。
「おい……。ちょっと待てって……」
「シンヤ、スキ……。早く赤ちゃんつくろウ?」
「いやいやいやいや!!」
迫ってくる猫娘を押しとどめようとするシンヤ。
だが、ミレアの力は強く、どんどん押し込まれていくのだった。
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