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引きこもりメイドとサキュバスっ娘 その2

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「へっへっへ……。手こずらせてくれたじゃねぇか。」
「クッ……お腹が一杯ならアンタらなんかに……。」
「クックク……今からお腹一杯にしてやるよ。タプンタプンになぁ。」
ゲラゲラと品のない笑い声をあげる盗賊たち。

なんて言っても目の前にいるのは、やや幼くはあるが、美少女と言って差し支えないほどの容姿が整った少女だ。
それが今は四肢を縛られ身動きが取れずにいる。
この少女をこれから好き放題出来るのだ。

先日捕まえてきたハルピュイア達もいるが、あいつらは、顔がよくても、あの羽根のせいでただの魔物にしか見えない。
獣姦趣味でもなければ、あんなの相手にしようなんて思えない。
しかし目の前の少女は耳が少し尖っているところを除けば、どこからどう見ても人間の少女と変わりがない。

その場にいる男たちの頭の中は、もうそれだけで一杯になっていた。

(……マズいわ。魅了空間《チャームフィールド》が発生してるのはいいけど、私が動けない。って言うか、男どもに好きにされるのは願い下げよ。)
魅了空間《チャームフィールド》は、サキュバス族なら誰もが使える一種の結界だ。
この結界の中にいるものは、思考能力が低下したうえで催淫効果が付与される。
つまり、ヤること以外考えられなくなるのだ。
普通であれば、そうなった人間の雄どもを、好きなだけ、自由に捕食するのだが、先に自由を奪われたみぃにしてみれば、男どもの好き放題に蹂躙される餌になりかねない。

(こうなったら、最初の一人にヤられるのは、仕方がないと諦めるしかないわね。その代わり、限界まで搾り取ってあげるわ)
人間の雄一人分の精気を補充できれば魔力もかなり回復する。
そうすれば、この戒めも簡単に解ける。

(あとは幻惑をかけて、互いが女性であるように見せれば、放っておいても大丈夫よね。……汚い絵面になるけど。)
その間に捕まって居るハルピュイア達を助け出して逃げ出せばいいと、みぃは考える。
どうせ自分はサキュバスなのだ。こんな男たちを相手にするのも、生きていくためには必要であり平気な事なのだ。
(……ユウジ、ごめんね。……他の男に汚されちゃうよ……。)
平気だ、と頭では思っていても感情が反発する。
そもそも、自ら進んで精気を得るのであれば、どんな男が相手でもミィは気にしない。生きるために必要な事で、食事をするのと何ら変わりのない事だからだ。

しかし、自らの意思に反して無理やり犯されるのは、いくらサキュバス族と言えども精神的苦痛が伴う。
自らするのは言いがやられるのは嫌だ……我儘なようだが、実際にそうなんだから仕方がない。
仕方がないが、今目の前に迫っているのも現実であり、いくら嫌だと言っても、助かるためには受け入れるしかなかった。

男がみぃに被さり、その胸を揉む。
布越しとはいえ、そのおぞましさに身を捩るみぃ。
左右から手が伸びてきた、みぃの衣服をはぎ取る。
のしかかってきた男は、もう一刻も待てないとばかりに、自らの衣類を引きちぎり、その隆起した逸物をみぃに見せつける。

もうダメ……。
ミィが覚悟を決めたその時……。

「汚らわしいわ。」
「ん、浄化する……『浄化の炎』!」
部屋の中が一瞬にして炎に包まれる。
それを見たみぃは、自分の最後を覚悟したのだった。



「あそこで間違いない?」
「だと思うのですが……。」
「その割んは見張りの一人もいないなんておかしいわ。留守なのかしら?」
エルザは首を傾げる。

何もない森の中の一角、少しだけ気のないエリアが広がっているその中央に、少し大きめの古ぼけた家が建っている。
みぃが向かったという方向と、気配探知からして、ここが盗賊のアジトで間違いないと思うのだが、それにしてはひっそりとしている。

立地的に囲まれたら終わりだ。だから普通であれば、警戒のためにも見張りが外にいるのが普通だ。
実際に、火を使った跡が残っていることからも、普段は見張りを出していることは間違いない。

アジトに人がいるかどうかは、気配を探れば簡単に分かるはず……と、エルザは先ほどから気配を探ろうと試みているが、このアジトに近づき始めた頃から、何かが邪魔をしているみたいで、はっきりとした気配が分からない。
それはユウも同じみたいで、気配を探るために、先程から珍しく集中しているため、下手に声が掛けられない。

「ん、わかった。中にいるのは間違いない。」
「中にいるのね。襲撃がバレてた?」
「それはないけど、急ぐ。時間がない。」
ユウが駆け出すのを見て、慌てて追いかけるエルザ。

ユウを追い越して扉を蹴破る……が予想していた反撃が来ない。
「どうなってるの?」
そっと家の中に入ると、妙な感じに包まれる。
「結界……おそらく精神に働きかけるもの……それがなかったらエルたんも捉えられていた。」
ユウがそう言ってエルザの尻尾を撫でる。
「ひゃんっ!」

エルザの尻尾はネコミミとセットで使うアクセサリーで、状態異常に対して非常に高い抵抗力を持つ。
最近ユウがいじくりまわしバージョンアップしたため、かなり高位の術でない限り、殆どの状態異常を無効化できるようになった。
それはいいのだが、なぜか、このアクセサリーを、装着時に触られると、その感触が数倍の刺激となって伝わるようになっている。
ユウがバージョンアップした目的はだったらしく、今のように不意に触ってはエルザの反応を見て喜んでいる。

……技術は凄いがやってることはセクハラオヤジと一緒、とその様子を見たミヤコが言ったのが妙に印象的だった。

「あ、みぃがっ!」
レーナが声を上げる。
その視線の先には縛られて身動きが取れない女の子を十数人の男が取り囲んでいるのが見える。
レーナの声はかなり大きかったのだが、その声に反応せず、ただ女の子を取り囲んでいる様子は、どう見てもおかしい。

慌てて駆け寄ろうとするレーナをエルザが止める。
「あっちは私達が行くわ。あなたは仲間を助けてあげて。……クーちゃんも手伝ってあげて。」
反対側の片隅に、ひとまとめに固められたハルピュイア達。
其処にも男たちが群がっている。

「この結界のせいで、このカス共はヤる事だけ考えている。」
「汚らわしいわね。」
少女に近づきながらそんな会話をする二人。
これだけ堂々と近づいても、男たちは少女に獣じみた目を向け、エルザ達の存在には気づいていない。

「ん、浄化する……『浄化の炎』!」
部屋の中が一瞬にして炎に包まれる。
しかし、エルザとユウ、レーナを含むハルピュイア達、そして目の前の少女には一切ダメージがない。
炎は確かに存在するのだが、エルザたちを擦り抜け、触ろうにも触れない。
逆に言えば炎がエルザたちに干渉することはない。
なので火傷一つ追わずに済んでいるのだ。

「なんか、建物まで燃えないって言うのも不思議ね。」
「ん、対象を「煩悩にまみれた男性」にしてあるから、対象外のモノには一切干渉しない。」
「それって、煩悩にまみれていない男だったら無事ってこと?」
エルザは慌てて周りを警戒する。

「あの結界内で煩悩にまみれない男なんて存在しないわ。」
縛られて転がされている少女が口を開く。
「ところで……助けてくれた……のかな?」
少女の視線はエルザの奥、……ハルピュイア達の戒めを解いているレーナに向いていた。
レーナが助けに来てくれたのだろうと理解するが、だからと言って見知らぬ人間を、事情の説明を受ける前から無条件に信用するわけにはいかなかった。

「えっとあなたがみぃ、でいいのかな?」
「そうよ。助けに来てくれたのなら……解いてくれると嬉しいな?」
「あ、うん、そうね。」
「エルたんストップ。」
近寄って戒めを解こうとするエルザをユウが止める。
「ユウ、どうして?」
「この娘は魔族。」
「だから?」
みぃは挑戦するような目つきでユウを見る。

「……これは私の意思じゃない。すべてはこの結界のせい。」
「ちょ、ちょっと、ユウ何言ってるの?」
「この結界の中にいる者は煩悩にまみれて欲望に忠実になる。だから、何をやっても、全部結界を張った人のせい。私は悪くない。」
「ちょ、ちょっと、何する気よ……って言うか、あなた結界の効果レジストしてるでしょ!」
何か道具を取り出したユウを見て、みぃは慌てる。
「んー、この結界は協力でぇ、抗えないわぁ。」
棒読みでそんなことを言うユウ。
ここにきて、エルザはユウが何をしようとしてるか悟る。

「ちょっと、アンタこの娘の連れでしょっ!止めてよ。」
「……ごめん、無理。」
「何でぇ……あっ、ダメ、ダメだってばぁ……。」
エルザは二人から視線を逸らし、レーナの方へ向かう。
これから起こる惨劇を見せないために、捕まっていあたハルピュイアと共に家の外へ出ることにした。

「い、やぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!」
家の中一杯にみぃの絶叫が響き渡るが、エルザは聞こえない振りをして、ハルピュイア達の治療にいそしむのだった。
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