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浅葱明日香という女の子の事情
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浅葱明日香……学業、スポーツ共に、平均よりは出来る方であり、身長はやや低めだが、均整の取れた身体つきに、発育のよい、88のCカップというバストサイズに加え、それなり……いや、かなり整った容姿。
そして、男女ともに分け隔てなく接する気さくな性格と、女の子らしい細やかな気配りが出来る性格。
ハイスペックな彼女と付き合いたいと考える男子は数多くいたが、そんな彼女が選んだのは幼馴染の少年だった。
告白は彼の方から……小学校の時から好きだったという。
真っすぐに想いをぶつけられて、嫌な気分になる女の子はいない……多分。
明日香も、昔から気安く付き合える彼であればいいかな?とその告白を受けることにした。
交際が始まった頃は、明日香も浮かれていた。
授業中も、彼と視線が合うだけで、落ち着かなくなり、それがまた心をふわふわとさせた。
初めてのデートの時、手を繋いだだけで、真っ赤になり、何もしゃべれなくなった。
こんな乙女な部分が自分にもあったのか?と、明日香は改めて恋愛というものを甘く見ていたと思ったものだった。
明日香としては、彼と一緒に居るだけでよかった。彼と一緒なら、ただのウィンドショッピングでもとても楽しかったのだ。
しかし、3か月も経つと、彼の態度が少しづつ変化してくる。
具体的には、身体に触れてくる頻度が高くなってきたのだ。
歩くときは手を繋いでいるだけでなく、腕を組まされる。
隣に座ると、肩を抱かれ引き寄せられる。
そんな事が多くなっていた。
そして、ある日のデートの帰り、彼からキスを求められた。
近づいて来る彼の顔を、明日香はぐっと押しのける。
明日香としても、いつかは……と考えていたものの、その日は一歩を踏み出す勇気が持てず、結局、その日は気まずいまま別れることになった。
……それが最期のデートになるとは、この時は思いもよらなかった。
数日後、急な父親の転勤が決まり、それに合わせて引っ越し、転校が決まった。
丁度年度末という事もあり、それにあわせた異動を急かされたのだ。
明日香は、彼と直接話す間もなく転校することになった。
最後に顔を合わせた時に気まずく分かれた事を悔やんでいた明日香だったが、転校することをメールで伝えた時、彼が遠距離でも交際を続けたいと言ってくれたことだけが、唯一の救いだった。
しかし、彼との遠距離恋愛は、あっけなく終わりを告げる。
引っ越したのが三月の半ば過ぎ……春休みに入る前の事。
そして、彼から別れの電話があったのがつい昨日の事……。ほんの2週間程度……春休みの終わりと共に明日香の恋も終わったという事実に呆然とするしかなかった。
明日香としても、遠距離恋愛は長続きしないという話を聞いていたから、覚悟はしていた。
していたが、あまりにも短すぎるのではないのだろうか?
そう混乱する明日香に親友だと思っていた少女から追い打ちの連絡が入った。
『ごめんね、健司と付き合うことになったから。一応報告しておいた方がいいと思って。』
そんな連絡だった。
親友だと思っていた京子と彼氏だった健司が付き合う……それはまだいい。
遠距離恋愛を続けていれば、いつかは破局が訪れるかもしれない。
勿論そんな事にならないように努力をしようと思っていた。
だけど、そんな日が訪れたのなら、それは自分の努力不足だったと、素直に諦めようと考えていた。
そして、その後、健司が誰かと付き合う日が来るかもしれない……その時は出来る限り、笑顔で祝福するべきだ、とそう考えていた。
……付き合い始めたばかりなのに、別れた後の事を考えているあたり、明日香は無自覚に何処かで「この恋は長続きしない」と諦めていたのかもしれない。
明日香本人には全くその自覚はないのだが。
そういう覚悟をしていたにもかかわらず、今回の事はあまりにもショックが大きすぎた。
健司から「遠距離は辛いんだ。別れよう」というメールがきたのが、昨日の夜遅く。
そして、京子から「もう別れたんだから問題ないよね?」と健司と付き合う旨が書かれたメッセージが来たのが昨日の夜中……というか日付が変わっていたからもう今日なのかも……。
しかも、京子はご丁寧なことに、彼の部屋で、今撮影しました、とも思われる、彼とキスをしている写真迄添付してきたのだ。それは、真夜中の今、彼と彼女が一緒に居るという事で……。
明日香と別れてから健司と付き合いだしたのではない……以前から京子と健司は付き合っていた……。
つまり……そう言う事なのだろう。
失恋と親友の裏切りに、明日香は眠ることが出来なかった。
夜が明けて、朝になっても、地に足がついている感じがしなく、ずっとぼーっとしていた。
頭が考えることを拒否していたのだ。
そして、気付けば、街をふらふらと彷徨い、なにかに惹かれるかのように、カフェへと入っていた。
「いらっしゃいませぇ。」
迎え入れてくれた店員さんの声に、一瞬ハッと我に返る明日香。
自分がどうやってここまで来たのか覚えていないけど……。
それでも銀髪の店員さんに案内されるまま、奥のテーブルへと腰掛ける。
「あ、えっと……ホットを。」
「かしこまりました。ミルクとシュガーはどうされますか?」
「あ……えっと……ナシで……お願いします。」
嘘だ。普段からコーヒーなんて呑まない。なのにブラックで何て飲める気がしない……。
なのに、口からついて出た言葉は、自分の心を容易く裏切る。
そんな自分が嫌になる……。
……あんな可愛い娘なら、こんなドロドロとした悩みはないんだろうなぁ。
オーダーを撮ってカウンターに向かう銀髪の少女の後姿を眺めながら、明日香はそんな事を思うのだった。
◇
……苦っ。
どれくらいぼーっとしていたのだろう?
いつの間にか目の前に置かれていたコーヒーに無意識に口をつけ、その苦さに、ハッと我に返る。
店内はにぎわっていたはずなのに、今はシーンと静まり返っている。
それなりにいたお客も、すでに帰ったのか、店内には自分を含めても、2~3人しか客がいない。
……えっと、今は……もう5時半?
時計を見てびっくりする。ボーっとしていたものの、ここに入ったのが4時頃だったことは覚えている。
つまり私は1時間以上、ぼーっとしていたというわけだ。
すっかり冷めてしまったコーヒーに、備え付けられたミルクと砂糖をたっぷりと入れて、一気に飲み干す。
……甘苦ッ!
砂糖を入れすぎたために迫りくる強烈な甘さと、コーヒー独自の苦さが混ざったことで、口の中が酷いことになった。
その為、砂糖とミルクを頼んでいない筈なのに、何故か添えられていたという事に明日香が気づくことはなく、明日香はそのまま水を一気に飲み干し、口の中の甘たるくて苦いというおかしな感覚を洗い流す。
だけど、そのコーヒーの痛烈な味覚が幸いしたのだろうか?
今まで感じていた重苦しい何かが、お水を飲んだ時に、少しだけ一緒に洗い流された感じになる。
「あれっ?」
テーブルに落ちた水滴に、少しだけ動揺する。
「何で……私……。」
その水滴は、コップから滴り落ちたものでなく、私の眼から零れ落ちていた。
……なんで泣いているんだろう。
慌ててハンカチで目元を拭う。
「ゴメンナサイ、そんなに苦かったですか?」
不意に声が掛けられる。
「今日マスターが不在なので、コーヒーの味が安定しないんです。」
こんなんでお店やっていて大丈夫なんですかねぇ?と銀髪の店員さんが笑いながら、明日香の目の前のカップを下げ、代わりにケーキとハーブティを置く。
「えっと、私頼んでないですけど……。」
「ボクのおごり。その代わり、ここで休憩させてもらってもいいかな?」
よくわからないけど、この店員さんがここでサボる口実を作る代わりに御馳走してくれるのかな?
明日香はそう考え、にっこりと笑って承諾する。
決してショートケーキに釣られたわけじゃない……そう、心の中で言い訳しながら。
「美味しい?」
明日香がショートケーキを口に運んでいると、銀髪の店員さんがそう訊ねてくる。
「えっと、美味しいわ。」
「ホント?よかったぁ!」
店員さんはすごくいい笑顔で喜びを表現する。
その可愛らしさに、思わず見とれてしまう明日香。
「それ、少し生クリームの配分をアレンジしてあるんだよね。」
悠と名乗った店員は、その配合を決めるのに、如何に苦労したか?という事を面白おかしく話してくれる。
どうやら、目の前の店員さんがこのケーキを焼いたらしいという事を理解する明日香。
「それでね、最後には『ユウのケーキは当分見たくない』って言いだすんだよ酷いと思わない?」
そう言う彼女の表情がおかしくて、明日香はついクスッと笑ってしまう。
「あ、やっと笑った。」
悠が嬉しそうにそう言う。
「えっ?」
「やっぱり、女の子は笑顔が一番だよ。」
……あなたに言われると説得力があるわね。
目の前で、「天使の微笑み」ともいうべき極上の笑顔を見せられて、明日香は、つい、そう呟くのだった。
そして、男女ともに分け隔てなく接する気さくな性格と、女の子らしい細やかな気配りが出来る性格。
ハイスペックな彼女と付き合いたいと考える男子は数多くいたが、そんな彼女が選んだのは幼馴染の少年だった。
告白は彼の方から……小学校の時から好きだったという。
真っすぐに想いをぶつけられて、嫌な気分になる女の子はいない……多分。
明日香も、昔から気安く付き合える彼であればいいかな?とその告白を受けることにした。
交際が始まった頃は、明日香も浮かれていた。
授業中も、彼と視線が合うだけで、落ち着かなくなり、それがまた心をふわふわとさせた。
初めてのデートの時、手を繋いだだけで、真っ赤になり、何もしゃべれなくなった。
こんな乙女な部分が自分にもあったのか?と、明日香は改めて恋愛というものを甘く見ていたと思ったものだった。
明日香としては、彼と一緒に居るだけでよかった。彼と一緒なら、ただのウィンドショッピングでもとても楽しかったのだ。
しかし、3か月も経つと、彼の態度が少しづつ変化してくる。
具体的には、身体に触れてくる頻度が高くなってきたのだ。
歩くときは手を繋いでいるだけでなく、腕を組まされる。
隣に座ると、肩を抱かれ引き寄せられる。
そんな事が多くなっていた。
そして、ある日のデートの帰り、彼からキスを求められた。
近づいて来る彼の顔を、明日香はぐっと押しのける。
明日香としても、いつかは……と考えていたものの、その日は一歩を踏み出す勇気が持てず、結局、その日は気まずいまま別れることになった。
……それが最期のデートになるとは、この時は思いもよらなかった。
数日後、急な父親の転勤が決まり、それに合わせて引っ越し、転校が決まった。
丁度年度末という事もあり、それにあわせた異動を急かされたのだ。
明日香は、彼と直接話す間もなく転校することになった。
最後に顔を合わせた時に気まずく分かれた事を悔やんでいた明日香だったが、転校することをメールで伝えた時、彼が遠距離でも交際を続けたいと言ってくれたことだけが、唯一の救いだった。
しかし、彼との遠距離恋愛は、あっけなく終わりを告げる。
引っ越したのが三月の半ば過ぎ……春休みに入る前の事。
そして、彼から別れの電話があったのがつい昨日の事……。ほんの2週間程度……春休みの終わりと共に明日香の恋も終わったという事実に呆然とするしかなかった。
明日香としても、遠距離恋愛は長続きしないという話を聞いていたから、覚悟はしていた。
していたが、あまりにも短すぎるのではないのだろうか?
そう混乱する明日香に親友だと思っていた少女から追い打ちの連絡が入った。
『ごめんね、健司と付き合うことになったから。一応報告しておいた方がいいと思って。』
そんな連絡だった。
親友だと思っていた京子と彼氏だった健司が付き合う……それはまだいい。
遠距離恋愛を続けていれば、いつかは破局が訪れるかもしれない。
勿論そんな事にならないように努力をしようと思っていた。
だけど、そんな日が訪れたのなら、それは自分の努力不足だったと、素直に諦めようと考えていた。
そして、その後、健司が誰かと付き合う日が来るかもしれない……その時は出来る限り、笑顔で祝福するべきだ、とそう考えていた。
……付き合い始めたばかりなのに、別れた後の事を考えているあたり、明日香は無自覚に何処かで「この恋は長続きしない」と諦めていたのかもしれない。
明日香本人には全くその自覚はないのだが。
そういう覚悟をしていたにもかかわらず、今回の事はあまりにもショックが大きすぎた。
健司から「遠距離は辛いんだ。別れよう」というメールがきたのが、昨日の夜遅く。
そして、京子から「もう別れたんだから問題ないよね?」と健司と付き合う旨が書かれたメッセージが来たのが昨日の夜中……というか日付が変わっていたからもう今日なのかも……。
しかも、京子はご丁寧なことに、彼の部屋で、今撮影しました、とも思われる、彼とキスをしている写真迄添付してきたのだ。それは、真夜中の今、彼と彼女が一緒に居るという事で……。
明日香と別れてから健司と付き合いだしたのではない……以前から京子と健司は付き合っていた……。
つまり……そう言う事なのだろう。
失恋と親友の裏切りに、明日香は眠ることが出来なかった。
夜が明けて、朝になっても、地に足がついている感じがしなく、ずっとぼーっとしていた。
頭が考えることを拒否していたのだ。
そして、気付けば、街をふらふらと彷徨い、なにかに惹かれるかのように、カフェへと入っていた。
「いらっしゃいませぇ。」
迎え入れてくれた店員さんの声に、一瞬ハッと我に返る明日香。
自分がどうやってここまで来たのか覚えていないけど……。
それでも銀髪の店員さんに案内されるまま、奥のテーブルへと腰掛ける。
「あ、えっと……ホットを。」
「かしこまりました。ミルクとシュガーはどうされますか?」
「あ……えっと……ナシで……お願いします。」
嘘だ。普段からコーヒーなんて呑まない。なのにブラックで何て飲める気がしない……。
なのに、口からついて出た言葉は、自分の心を容易く裏切る。
そんな自分が嫌になる……。
……あんな可愛い娘なら、こんなドロドロとした悩みはないんだろうなぁ。
オーダーを撮ってカウンターに向かう銀髪の少女の後姿を眺めながら、明日香はそんな事を思うのだった。
◇
……苦っ。
どれくらいぼーっとしていたのだろう?
いつの間にか目の前に置かれていたコーヒーに無意識に口をつけ、その苦さに、ハッと我に返る。
店内はにぎわっていたはずなのに、今はシーンと静まり返っている。
それなりにいたお客も、すでに帰ったのか、店内には自分を含めても、2~3人しか客がいない。
……えっと、今は……もう5時半?
時計を見てびっくりする。ボーっとしていたものの、ここに入ったのが4時頃だったことは覚えている。
つまり私は1時間以上、ぼーっとしていたというわけだ。
すっかり冷めてしまったコーヒーに、備え付けられたミルクと砂糖をたっぷりと入れて、一気に飲み干す。
……甘苦ッ!
砂糖を入れすぎたために迫りくる強烈な甘さと、コーヒー独自の苦さが混ざったことで、口の中が酷いことになった。
その為、砂糖とミルクを頼んでいない筈なのに、何故か添えられていたという事に明日香が気づくことはなく、明日香はそのまま水を一気に飲み干し、口の中の甘たるくて苦いというおかしな感覚を洗い流す。
だけど、そのコーヒーの痛烈な味覚が幸いしたのだろうか?
今まで感じていた重苦しい何かが、お水を飲んだ時に、少しだけ一緒に洗い流された感じになる。
「あれっ?」
テーブルに落ちた水滴に、少しだけ動揺する。
「何で……私……。」
その水滴は、コップから滴り落ちたものでなく、私の眼から零れ落ちていた。
……なんで泣いているんだろう。
慌ててハンカチで目元を拭う。
「ゴメンナサイ、そんなに苦かったですか?」
不意に声が掛けられる。
「今日マスターが不在なので、コーヒーの味が安定しないんです。」
こんなんでお店やっていて大丈夫なんですかねぇ?と銀髪の店員さんが笑いながら、明日香の目の前のカップを下げ、代わりにケーキとハーブティを置く。
「えっと、私頼んでないですけど……。」
「ボクのおごり。その代わり、ここで休憩させてもらってもいいかな?」
よくわからないけど、この店員さんがここでサボる口実を作る代わりに御馳走してくれるのかな?
明日香はそう考え、にっこりと笑って承諾する。
決してショートケーキに釣られたわけじゃない……そう、心の中で言い訳しながら。
「美味しい?」
明日香がショートケーキを口に運んでいると、銀髪の店員さんがそう訊ねてくる。
「えっと、美味しいわ。」
「ホント?よかったぁ!」
店員さんはすごくいい笑顔で喜びを表現する。
その可愛らしさに、思わず見とれてしまう明日香。
「それ、少し生クリームの配分をアレンジしてあるんだよね。」
悠と名乗った店員は、その配合を決めるのに、如何に苦労したか?という事を面白おかしく話してくれる。
どうやら、目の前の店員さんがこのケーキを焼いたらしいという事を理解する明日香。
「それでね、最後には『ユウのケーキは当分見たくない』って言いだすんだよ酷いと思わない?」
そう言う彼女の表情がおかしくて、明日香はついクスッと笑ってしまう。
「あ、やっと笑った。」
悠が嬉しそうにそう言う。
「えっ?」
「やっぱり、女の子は笑顔が一番だよ。」
……あなたに言われると説得力があるわね。
目の前で、「天使の微笑み」ともいうべき極上の笑顔を見せられて、明日香は、つい、そう呟くのだった。
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