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ユウは男の子??
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「ごめんなさい。お付き合いする気はないです。」
透明感あふれる透き通るような白い肌に、腰まで届く漆黒の艶のある長い髪。
クリっとした少し大きめのヘイゼルの瞳は、やや幼さを醸し出し、少女と女性の狭間という、限られた時だけに魅せる、危うさと儚さの入り混じった美しさを持つ少女……ではなく少年。
それが「有栖川悠」である。
彼?は、目の前で頭を下げている男子生徒に対し、申し訳なさそうにそう言って謝る。
男子生徒は「やっぱりだめか」と呟いて、トボトボと去っていく。
ユウは、その後姿を見送り、彼の背中が見えなくなると、「はぁ……」と深いため息をつく。
放課後、人気のない校舎裏に呼び出して告白……よくある光景ではある……ユウが男であり、呼び出したのも男だということを除けば……。
「全く、何で男のボクに告白してくるかなぁ?」
男性としてみた場合、いつも一緒につるんでいる幼馴染の修介の方が、イケメンで性格もいい。実際彼の周りには常に女の子がいる。
女性としてみるのであれば、やはり幼馴染の都の方が、可愛くて気さくに誰とでも接し、さらに言えば気遣いも出来る、非の打ちどころのない美少女だ。
それに比べて、自分は何の取柄もない、平凡な少年なのに……とユウは思う。彼は、幼い頃は女の子として育てられた、というただそれだけの平凡な少年である、と本人だけが思っている。
しかしながら、本人に自覚がないが、実際には、ユウ美少女だと思っている都と遜色がないどころか、それを超えるほどの美少女であり、どこからどう見ても、少女なのに中身は男性というアンバランスさが怪しげな魅力を引き立てていて、思春期真っただ中の少年少女たちを狂わせている『魔性』の存在だったりする。
今の学園に入学してから1年……今の男性のように告白してくる男女は数知れず。
その殆どが彼を女の子と思って告白してくるのだが、女の子からの告白がそれなりに有ったり、男性からの告白でも、ユウが男と知って告白してくるものも一定数いるあたり、如何におかしくなっているかがわかるといえよう。
彼と同じクラスになった事のあるものなら、彼が少年であるという事は知っているのだが、一クラス30人で各学年20クラスもあるマンモス校の瑞龍学園内においては、本当に僅かな者しか知らないといえるので、「有栖川悠」という美少女が実は男だという事を知らないものが多いのは、ある意味仕方がない事だともいえる。
ましてや、普段来ている制服が女子用であり、私服もゴスロリ系を含めた女の子向けのファッションだったりするのだから。
その為、クラスメイトでも、彼が少年だという事を頭では理解しつつも、「本当は女性なのかもしれない」と思っているものが大半であり、また、ユウの行動が同じ年頃の少女たちと大差無い辺りが、混乱に輪をかけていたりもする。
「ユウ、終わった?」
近くで隠れて見ていたらしい少女が声をかけてくる。
「あ、うん、やっぱり告白だったよ。」
「そっかぁ、まぁ、流石に人気のないところとはいえ、校内で呼び出して乱暴ってことはないだろうとは思っていたけどね。」
少女はそう言いながらスマホを取り出すと何処かへ連絡を取る。
「あ、シュウ?問題なし。解散していいよ。」
都がそういうと、電話口から、相手の「了解」という声が聞こえる。
「シュウにまで連絡してたの?大げさだなぁ。」
「そんなことないわよ。去年のこと忘れたの?」
都は少し憤慨して言う。
「忘れてないけどさぁ……。」
去年の出来事……
それは夏休み明けに、今日と同じように呼び出された時の事だった。
同じように告白され、それを断ると、逆上した男が襲い掛かってきた。
その男だけであれば、幼い頃から母に叩き込まれた護身術の心得があるユウならば、簡単に躱し、あまつさえ取り押さえることは出来たのだが、どこかに隠れていた、格闘技の心得のある男たちが7人、ユウを取り囲んでいた。
3~4人であれば、まだ何とかなったのだが、流石に8人相手ではユウも分が悪かった。
一人、二人を戦闘不能に陥らせたものの、同時に掴みかかってこられれば、躱すことも出来ず、ユウは男達に寄ってたかって押さえつけられ、乱暴そうになったのだ。
その貞操の危機を救ったのが、幼馴染の小宮修介と、今目の前にいる都だった。
制服を引き裂かれ、貞操に危機を感じた時に現れた修介が、男達相手に立ち回りを演じている間に、都が職員へと連絡。駆け付けた職員たちによって、男達は取り押さえられ、無事事なきを得た。
「でも、アレって、ボクはシュウのとばっちりを受けただけだよね?」
後で聞いたところによると、ユウを襲った男たちのリーダー格の少年は、ユウにではなく修介に恨みがあったらしい。
彼の彼女が修介と浮気をしたのだとか……。
ユウの事を少女だと思っていたその少年は、ユウのような彼女がいるのに人の女に手を出しやがって!同じ目に遭わせてやるっ!と短絡的に考え、ユウに告白をするという少年と結託したのだそうだ。
悠に告白してOKをもらえれば、よし。そうじゃなかったら襲い掛かって力づくで……という事だ。
どこまでが本当かは分からないが、そのリーダー格少年の彼女と修介が付き合っていたことは間違いないらしく、逆恨みとはいえ、ユウに被害が行った事に関して、修介は土下座をして謝る、というエピソードもあった。
「それでも、だよ。ユウは可愛い女の子なんだから、もっと身に迫る危険があるってことを自覚しなさいよ。」
「ボクは男だよっ!」
都の言葉に、ユウは即座にツッコミを入れる。
そんな他愛もない事を言い合いながら、教室に戻ってくるユウと都。
「お疲れだったみたいだなぁ。」
げんなりとしているユウに修介が声をかける。
「ほんとだよ。何ボクなのさ。」
「ユウは可愛いからな。選り好みしないで、誰かと付き合っちまえば、告白も減ると思うぜ?」
「ボクだってねぇ、誰かと恋愛したいよ。だけどその相手は女の子限定だよっ!何で男と付き合わなきゃいけないのさ?」
悠が憤慨して叫ぶ。
「だけど、今までにも、女の子からの告白もあっただろ?その中でいい子はいなかったのか?」
「……ボクの事を「お姉さま」って呼ぶ女の子は、何か違うと思うよ?」
悠が遠い目をする。
それはそれでありだと思うぞ、と、クックック……と笑う修介。
「あ、じゃぁ、私と付き合うぅ?」
都がおかしそうに笑いながら迫ってくる。
「えっ、あっ、その……ボクノーマルだからぁ。」
キスされそうなぐらいに迫り来る都の顔を、押しのけながらそう告げる。
「失礼ねぇ。私だってノーマルだわっ!……多分。」
「多分ってなんだよぉっ!」
「うーん、ユウちゃん見てると自信なくなるのよねぇ?でもユウちゃんならいいかも?って思っちゃう自分が怖いわぁ。」
「ユウちゃんいうなしっ!もぅ、帰るからっ!」
ギュっと抱き着いてくる都を押しのけ、鞄を持って教室から飛び出すユウ。
「えっ、おいっ……あーあ、行っちまった。アイツ、ストバスの助っ人頼まれてなかったっけ?」
「あー勝也の言ってたやつ?ユウちゃん、あの時、別の話題で夢中で聞いてなかったし、多分ストバスがあるのも知らないんじゃないの?」
「そっか。まぁ、ハッキリ言わない勝也の奴が悪いんだしな。」
修介は、そう言いながら帰り支度を始める。
「都、たまには一緒に帰るか?」
「冗談っ!アンタと一緒に居るところ見られたら、何人から刺されるか分かったもんじゃないわ。私はまだ命が惜しいから、先帰るわよ。」
都はそういうとさっさと帰ってしまう。
一人取り残された修介は、やれやれと重い腰をあげながら、一人家路につくのだった。
◇
「ふぅ、ユウちゃん、そろそろ上がる?」
カウンターの奥から、先輩アルバイターの涼子の声がかかる。
「うーん、まだお客さんいるから、はけるまでいますよ。後、ユウちゃんいうなしっ!」
ユウはそう言って、カウンターに入ると、溜まっている食器を手早く洗う。
「ぬふふっ、ユウちゃぁぁん、またおっきくなったんじゃなぁい?」
涼子がそう言いながらユウの背後から手を伸ばし、胸を揉み始める。
しかしユウは特に気にすることもなく皿を洗い続けている。
「ぶぅ……詰まんなぁーい。」
「そりゃ、上げ底の偽胸揉んでも面白くないでしょ?それに、大きさを言うなら、涼子さんと同じもの入れてるだけですけど?」
「わわわっ、乙女の秘密をバラすなしっ!」
涼子はユウに密着し自分の胸に顔を押し付け窒息させてくる。
「ギ、ギブですぅ……。」
ユウは即座にギブアップを宣言する。
苦しかったから、というより、頬にあたる柔らかさに耐えられなかったのである。
そこそことはいえ、ユウの偽胸と違って、涼子の胸は本物である。
本物の持つ破壊力というものはユウは今日もまた思い知らされるのであった。
因みに、このじゃれ合いはカウンター向こうの常連客からは丸見えである。
そして、そのお客さん目線で見れば、仲の良い女の子同士のじゃれ合いにしか見えず、微笑ましく見守られているのであった。
むしろ、コレが見たいから、という理由で毎日通い詰めてくるお客様が一定数いたりするのだ。
「でも、ユウちゃんの髪、綺麗で羨ましいなぁ。」
涼子はユウの銀髪に触れる。
「ボクとしてはそろそろ切りたいんですけどね。ママが絶対ダメって言うから。」
「そりゃぁそうよ。この髪を切るなんてもったいないわ。」
涼子は、ユウの髪を指に絡ませたりして遊んでいる。
「涼子さん、これ、ボクの分にツケといてね。」
ユウは、涼子から髪を取り上げると、カモミールとラベンダー、オレンジピールを使って即席ブレンドのハーブティを用意し、ショートケーキと一緒にトレイの上に乗せる。
「お節介ね。一人になりたいときもあるのよ?」
涼子はちらっと店の隅のテーブルにいる客に視線を向ける。
「一人になりたいなら、こんなとこに来ないでしょ?それに『女の子は泣かすな』ってママに言われてるから。」
「あんたが泣かせたわけじゃないでしょうに。」
「目の前で泣かれてたら同じことですよ。」
ユウはそう言って、そのお客様の下に、トレイをもって向かうのだった。
透明感あふれる透き通るような白い肌に、腰まで届く漆黒の艶のある長い髪。
クリっとした少し大きめのヘイゼルの瞳は、やや幼さを醸し出し、少女と女性の狭間という、限られた時だけに魅せる、危うさと儚さの入り混じった美しさを持つ少女……ではなく少年。
それが「有栖川悠」である。
彼?は、目の前で頭を下げている男子生徒に対し、申し訳なさそうにそう言って謝る。
男子生徒は「やっぱりだめか」と呟いて、トボトボと去っていく。
ユウは、その後姿を見送り、彼の背中が見えなくなると、「はぁ……」と深いため息をつく。
放課後、人気のない校舎裏に呼び出して告白……よくある光景ではある……ユウが男であり、呼び出したのも男だということを除けば……。
「全く、何で男のボクに告白してくるかなぁ?」
男性としてみた場合、いつも一緒につるんでいる幼馴染の修介の方が、イケメンで性格もいい。実際彼の周りには常に女の子がいる。
女性としてみるのであれば、やはり幼馴染の都の方が、可愛くて気さくに誰とでも接し、さらに言えば気遣いも出来る、非の打ちどころのない美少女だ。
それに比べて、自分は何の取柄もない、平凡な少年なのに……とユウは思う。彼は、幼い頃は女の子として育てられた、というただそれだけの平凡な少年である、と本人だけが思っている。
しかしながら、本人に自覚がないが、実際には、ユウ美少女だと思っている都と遜色がないどころか、それを超えるほどの美少女であり、どこからどう見ても、少女なのに中身は男性というアンバランスさが怪しげな魅力を引き立てていて、思春期真っただ中の少年少女たちを狂わせている『魔性』の存在だったりする。
今の学園に入学してから1年……今の男性のように告白してくる男女は数知れず。
その殆どが彼を女の子と思って告白してくるのだが、女の子からの告白がそれなりに有ったり、男性からの告白でも、ユウが男と知って告白してくるものも一定数いるあたり、如何におかしくなっているかがわかるといえよう。
彼と同じクラスになった事のあるものなら、彼が少年であるという事は知っているのだが、一クラス30人で各学年20クラスもあるマンモス校の瑞龍学園内においては、本当に僅かな者しか知らないといえるので、「有栖川悠」という美少女が実は男だという事を知らないものが多いのは、ある意味仕方がない事だともいえる。
ましてや、普段来ている制服が女子用であり、私服もゴスロリ系を含めた女の子向けのファッションだったりするのだから。
その為、クラスメイトでも、彼が少年だという事を頭では理解しつつも、「本当は女性なのかもしれない」と思っているものが大半であり、また、ユウの行動が同じ年頃の少女たちと大差無い辺りが、混乱に輪をかけていたりもする。
「ユウ、終わった?」
近くで隠れて見ていたらしい少女が声をかけてくる。
「あ、うん、やっぱり告白だったよ。」
「そっかぁ、まぁ、流石に人気のないところとはいえ、校内で呼び出して乱暴ってことはないだろうとは思っていたけどね。」
少女はそう言いながらスマホを取り出すと何処かへ連絡を取る。
「あ、シュウ?問題なし。解散していいよ。」
都がそういうと、電話口から、相手の「了解」という声が聞こえる。
「シュウにまで連絡してたの?大げさだなぁ。」
「そんなことないわよ。去年のこと忘れたの?」
都は少し憤慨して言う。
「忘れてないけどさぁ……。」
去年の出来事……
それは夏休み明けに、今日と同じように呼び出された時の事だった。
同じように告白され、それを断ると、逆上した男が襲い掛かってきた。
その男だけであれば、幼い頃から母に叩き込まれた護身術の心得があるユウならば、簡単に躱し、あまつさえ取り押さえることは出来たのだが、どこかに隠れていた、格闘技の心得のある男たちが7人、ユウを取り囲んでいた。
3~4人であれば、まだ何とかなったのだが、流石に8人相手ではユウも分が悪かった。
一人、二人を戦闘不能に陥らせたものの、同時に掴みかかってこられれば、躱すことも出来ず、ユウは男達に寄ってたかって押さえつけられ、乱暴そうになったのだ。
その貞操の危機を救ったのが、幼馴染の小宮修介と、今目の前にいる都だった。
制服を引き裂かれ、貞操に危機を感じた時に現れた修介が、男達相手に立ち回りを演じている間に、都が職員へと連絡。駆け付けた職員たちによって、男達は取り押さえられ、無事事なきを得た。
「でも、アレって、ボクはシュウのとばっちりを受けただけだよね?」
後で聞いたところによると、ユウを襲った男たちのリーダー格の少年は、ユウにではなく修介に恨みがあったらしい。
彼の彼女が修介と浮気をしたのだとか……。
ユウの事を少女だと思っていたその少年は、ユウのような彼女がいるのに人の女に手を出しやがって!同じ目に遭わせてやるっ!と短絡的に考え、ユウに告白をするという少年と結託したのだそうだ。
悠に告白してOKをもらえれば、よし。そうじゃなかったら襲い掛かって力づくで……という事だ。
どこまでが本当かは分からないが、そのリーダー格少年の彼女と修介が付き合っていたことは間違いないらしく、逆恨みとはいえ、ユウに被害が行った事に関して、修介は土下座をして謝る、というエピソードもあった。
「それでも、だよ。ユウは可愛い女の子なんだから、もっと身に迫る危険があるってことを自覚しなさいよ。」
「ボクは男だよっ!」
都の言葉に、ユウは即座にツッコミを入れる。
そんな他愛もない事を言い合いながら、教室に戻ってくるユウと都。
「お疲れだったみたいだなぁ。」
げんなりとしているユウに修介が声をかける。
「ほんとだよ。何ボクなのさ。」
「ユウは可愛いからな。選り好みしないで、誰かと付き合っちまえば、告白も減ると思うぜ?」
「ボクだってねぇ、誰かと恋愛したいよ。だけどその相手は女の子限定だよっ!何で男と付き合わなきゃいけないのさ?」
悠が憤慨して叫ぶ。
「だけど、今までにも、女の子からの告白もあっただろ?その中でいい子はいなかったのか?」
「……ボクの事を「お姉さま」って呼ぶ女の子は、何か違うと思うよ?」
悠が遠い目をする。
それはそれでありだと思うぞ、と、クックック……と笑う修介。
「あ、じゃぁ、私と付き合うぅ?」
都がおかしそうに笑いながら迫ってくる。
「えっ、あっ、その……ボクノーマルだからぁ。」
キスされそうなぐらいに迫り来る都の顔を、押しのけながらそう告げる。
「失礼ねぇ。私だってノーマルだわっ!……多分。」
「多分ってなんだよぉっ!」
「うーん、ユウちゃん見てると自信なくなるのよねぇ?でもユウちゃんならいいかも?って思っちゃう自分が怖いわぁ。」
「ユウちゃんいうなしっ!もぅ、帰るからっ!」
ギュっと抱き着いてくる都を押しのけ、鞄を持って教室から飛び出すユウ。
「えっ、おいっ……あーあ、行っちまった。アイツ、ストバスの助っ人頼まれてなかったっけ?」
「あー勝也の言ってたやつ?ユウちゃん、あの時、別の話題で夢中で聞いてなかったし、多分ストバスがあるのも知らないんじゃないの?」
「そっか。まぁ、ハッキリ言わない勝也の奴が悪いんだしな。」
修介は、そう言いながら帰り支度を始める。
「都、たまには一緒に帰るか?」
「冗談っ!アンタと一緒に居るところ見られたら、何人から刺されるか分かったもんじゃないわ。私はまだ命が惜しいから、先帰るわよ。」
都はそういうとさっさと帰ってしまう。
一人取り残された修介は、やれやれと重い腰をあげながら、一人家路につくのだった。
◇
「ふぅ、ユウちゃん、そろそろ上がる?」
カウンターの奥から、先輩アルバイターの涼子の声がかかる。
「うーん、まだお客さんいるから、はけるまでいますよ。後、ユウちゃんいうなしっ!」
ユウはそう言って、カウンターに入ると、溜まっている食器を手早く洗う。
「ぬふふっ、ユウちゃぁぁん、またおっきくなったんじゃなぁい?」
涼子がそう言いながらユウの背後から手を伸ばし、胸を揉み始める。
しかしユウは特に気にすることもなく皿を洗い続けている。
「ぶぅ……詰まんなぁーい。」
「そりゃ、上げ底の偽胸揉んでも面白くないでしょ?それに、大きさを言うなら、涼子さんと同じもの入れてるだけですけど?」
「わわわっ、乙女の秘密をバラすなしっ!」
涼子はユウに密着し自分の胸に顔を押し付け窒息させてくる。
「ギ、ギブですぅ……。」
ユウは即座にギブアップを宣言する。
苦しかったから、というより、頬にあたる柔らかさに耐えられなかったのである。
そこそことはいえ、ユウの偽胸と違って、涼子の胸は本物である。
本物の持つ破壊力というものはユウは今日もまた思い知らされるのであった。
因みに、このじゃれ合いはカウンター向こうの常連客からは丸見えである。
そして、そのお客さん目線で見れば、仲の良い女の子同士のじゃれ合いにしか見えず、微笑ましく見守られているのであった。
むしろ、コレが見たいから、という理由で毎日通い詰めてくるお客様が一定数いたりするのだ。
「でも、ユウちゃんの髪、綺麗で羨ましいなぁ。」
涼子はユウの銀髪に触れる。
「ボクとしてはそろそろ切りたいんですけどね。ママが絶対ダメって言うから。」
「そりゃぁそうよ。この髪を切るなんてもったいないわ。」
涼子は、ユウの髪を指に絡ませたりして遊んでいる。
「涼子さん、これ、ボクの分にツケといてね。」
ユウは、涼子から髪を取り上げると、カモミールとラベンダー、オレンジピールを使って即席ブレンドのハーブティを用意し、ショートケーキと一緒にトレイの上に乗せる。
「お節介ね。一人になりたいときもあるのよ?」
涼子はちらっと店の隅のテーブルにいる客に視線を向ける。
「一人になりたいなら、こんなとこに来ないでしょ?それに『女の子は泣かすな』ってママに言われてるから。」
「あんたが泣かせたわけじゃないでしょうに。」
「目の前で泣かれてたら同じことですよ。」
ユウはそう言って、そのお客様の下に、トレイをもって向かうのだった。
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