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第二章 勇者のスローライフ??
セルアン族、危機一髪
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「うぅ……私、汚されちゃったよぉ……。」
クーちゃんが蹲っている。
「クーちゃん、可愛いよ。ミュウにも見せに行こうよ。」
「イヤですぅ。」
「なんで、可愛いよぉ。」
私はクーちゃんを立たせる。
クーちゃんはさっきまでお店に飾ってあった水色のワンピースを着ていた。
マリアちゃんが見つけて、私が買ってあげたものなのよ。
このお店はマジックアイテムのお店だったらしく、今クーちゃんが来ているワンピースも軽い耐魔障壁の魔力が付与されているのよ。
それ以上に、このワンピースの素晴らしい所は……。
私はクーちゃんのお尻から覗く、可愛い尻尾を眺める。
尻尾がワンピースのスカートを押し上げる様にしている為、捲れあがっているけど絶妙な角度で見えそうで見えなくなっている所が、とってもそそるのよ。
またそれが羞恥心を煽るのか、クーちゃんの顔は真っ赤に染まってる。
そしてそのクーちゃんの愛らしさを更に際立たせているのが、その頭に付けた『ネコミミカチューシャ』なのよ。
クーちゃんが身動ぎする度に、ピコピコと動く耳がとってもキュートなの。
しかも、ここにあったという事は、ただのネコミミカチューシャってわけは無く、『探知能力』『素早さ』『力』がそれぞれアップするという、無駄に高い能力が付与されているのよ。
まぁ、アップすると言っても10%程度って話なんだけど、今のクーちゃんにとってはかなり役立つと思うのよ。
本人もそれが分かっているから黙って受け入れた……筈なんだけどね。
「ほらほら、いつまでもここに蹲っていると、お店に迷惑だよ。」
「うぅー、ミカ姉がまともなこと言ってるぅ。」
えー、私はいつもまともな事しか言ってないのにぃ。
私は諦めた面持ちで、動き出すクーちゃんの手を握って店の外へと連れだす。
えーっと、ミュウはどこにいるかなぁ。
「あ、いたいた。おーいミュウ、こっちだよー。 私の呼ぶ声に気付いたミュウはすぐにやってくる。
「どこ行ってたのよ。探したのよ……って、クー、その格好……。」
「見ないでっ。何も言わないでっ。」
自らを隠すように小さくなるクーちゃん。
ミュウはすべてを察したかの様な表情で、クーちゃんの肩をポンポンと優しくたたく。
「ふぇーん、ミュウお姉ちゃーん……。」
そんなミュウにすがりつくクーちゃんを優しく抱き留めながら、責めるような目で私達を見るミュウ。
誤解があるようなので、私とマリアちゃんはネコ耳カチューシャについて説明をする。
「はぁ、理由は分かったけど……何でネコ耳……。」
「えー、可愛いじゃない。」
「……確かに可愛いけどね。」
結局、ミュウの装備にしたように、ほかの装備に能力を付与する事で落ち着いたのよ。
代わりに今日はそのままの格好でいる事を条件につけたけどね。
◇
先の争いによって、集落の周辺は強力な結界が張られ、『関所』と呼ばれるここだけが、集落への入り口として開かれている。
故に、この場所には屈強な獣人が衛兵として常駐しており、何かあれば、関所内外の兵士達が駆けつけるので、ここで騒ぎを起こすような者は居ない……居ないはずだった。
「キ、キサマら、こんな事してタダで済むと思うなよ。」
そう呻く獣人の頭を私は踏みつける。
「それは私のセリフよ。クーちゃんを傷つけておいて、タダで済むと思わない事ね。」
そう、私が踏みつけているコイツはがすべて悪い。
私達が関所を通ろうとした時に、関所を守っていたのがコイツだったのよ。
コイツはネコ耳をつけたクーちゃんを見て笑ったのね、人族が獣人のまねをしているって。
クーちゃんは真っ赤になって俯き、それを見た私は、考えるより先にコイツを倒したってわけ。
そうしたら、当然応援が出てくるわけで、私達は身を守るために仕方がなく応戦し、今に至るってわけ何だけど……。
「アンタ、スターファングの一族でしょ?リカルドの出方次第ではスターファングを……場合によってはセルアンスロープ総てを抹殺するからね。」
「な、何故族長の名を……。」
「そんなことはどうでもいいわ。」
そう、問題なのはコイツがクーちゃんを見て笑ったと言うこと。
ここにいるセルアン族がそう言う態度にでるなら、私は単なる敵対魔族としてセルアンスロープを見かけたら潰すと心に決める。
暫くすると、集落の方から獣人の団体がやってくる。
「これは……何があったのだ?」
先頭の男には見覚えがある。
「ぞ、族長……。」
「久し振りね。あなたがここにいるとは思わなかったよ。」
私は先頭に立つ男……リカルドに声をかける。
「お前が来るって聞いたから、急いで帰ってきたんだ。……しかしどう言うことだ?いくらミカゲでも、一族の誇りにかけて見逃すわけにはいかんぞ!」
「それはこっちのセリフよ。仲間を、大事な妹分を嘲笑い、傷つけた落とし前を、どうつけてくれるのかな?ただ謝って済むなんて軽く考えないでね。」
私とリカルドはその場で睨み合う。
「……話が見えない。詳しく調査したいから、時間が欲しい。」
「…………いいわ、1時間あげる。この人達も引き取ってね。1時間後、何の返答もなければこの集落、鉱山毎更地に変えるから。命が惜しければ逃げ出すように伝えてあげて。スターファングの一族以外は見逃してあげる。」
「バカな……そんな事できるはずがない。」
リカルドの横にいた男が呻くように言う。
「そう思うなら、黙って見ていれば?」
「なっ……。」
「やめろっ!……ミカゲ、済まないが時間をもらう。」
リカルドが激昂仕掛けた部下を一喝する。
「1時間だからね。」
私はそう言って、転がっている獣人達に肩を貸しながら立ち去るリカルド達を見送る。
「さて、こっちも準備しないとね。」
リカルドにはああ言ったけど、実際に鉱山まで更地にしようとするなら、それなりの準備が必要になる。
「ミカ姉、私はいいから……。」
「よくないよ。私だってクーちゃんが恥ずかしいのに我慢してその格好をしてることぐらいわかってるんだよ。」
「分かってるなら止めてやれよ。」
「それはイヤ。」
ミュウのツッコミに即答しておいて、話を続ける。
「今回のことをそのままにしておいたら、クーちゃんは二度とネコ耳を付けてくれなくなるわ。そんな事許せるはず無いじゃない!」
「ミュウお姉ちゃん、コレって私のために怒っているのと違うよね?」
「難しいけど、一応半分ぐらいはクーの為……だと思うよ……多分。」
クーちゃんとミュウが小声で話している。
「聞こえてるよ?クーちゃんの為に怒っているに決まってるじゃない。私の今後の計画を邪魔しようとしたことについてはついでなのよ。」
「今後の計画って……。」
「聞きたいけど、聞きたくないよぉ。」
私はミュウ達と話をしながらも、魔力操作を止めずにあるモノを造り上げていく。
土魔法で造り上げたソレは大砲の形をしていた。
「えっと、ミカ姉、ソレって何?」
出来上がったモノを見てクーちゃんが聞いてくる。
「んー、簡単に言えば魔力集束砲かな?ため込んだ魔力を一点に集束させて増幅して放つんだよ。今マリアちゃんに魔力を込めてもらってるから、もう少しで集落を焼き払うぐらいは出来るようになるよ。ただ鉱山までとなると、約束の時間までだとギリギリかな?」
「ミカ姉……お姉ちゃん、やめてっ!そんな事したって嬉しくないよぉ……お姉ちゃんが大量虐殺する所なんて見たくないよぉ。」
クーちゃんの泣き顔を見て、私の頭が少し冷える。
いくら腹が立ったからと言って、それでクーちゃんを泣かしたら本末転倒もいいところだね。
「……わかったよ。人には被害がないようにするわね。」
有機物にダメージが行かないように、魔力の流れに指向性を持たせる……、結構大変だよ。
「そうじゃなくて……ってだめだよぉ、聞こえてないよぉ。」
「人に被害を与えないって、普通できないと思うのですけど……。」
「よくわからないけど、まぁ、ミカゲだからな。」
「そうですね、ミカゲさんですから。」
「もぅ、二人とも止めてよぉ。」
「「無理!」」
みんなが何か言っていたけど、私は魔力操作に集中していてよく聞こえなかった。
と言うより、かなり細かい操作が必要だから聞いてる余裕がなかったんだけどね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一体、何がどうなっているんだ。
ミレイの街で出会った少女達、特にミカゲには他にはない、強い運命の力を感じた。
彼女達なら、今抱えている問題を何とかしてくれるかもしれない、そう思って、フォクシーに協力してもらって、ここにくるように仕向けたまではよかったのだが。
予定通り、彼女達は来てくれた……来てくれたけど、何故一族の存亡の危機に陥っているんだ?
誰か教えてくれっ!
「族長、考え過ぎなのでは?たかが人族如きが、この地を更地になんて出来るはずありませんよ。ここは、ゼノンの軽挙を謝罪した上で、損害賠償と相殺するように持ち掛けては如何ですか?」
俺はしたり顔でそう進言してくる男の顔を見てため息をつく。
コイツはわかっていない……そもそもミカゲを「人族如き」と下に見ている時点で、間違っていることに気付かないのだろうか?
ドォォォン………。
大きな音と地響きが起こる。
「何事だ!」
外にでると、集落の外れ、結界のある付近一帯に大きなクレーターが出来ている。
結界近くのため、誰もいないのが幸いし、人的被害がないのが幸いだったが……。
『おーい、きこえる~?後20分だよぉ~。どうせ『人族如き』とか『出来るわけない』とか言ってるんじゃないのかな?返答次第では『魔族は総て敵』と見なすからねぇ~、よく考えて返事しなよぉ。』
ミカゲの声が聞こえる。
まるでこちらのことを見透かしているようなタイミングだった。
多分この場所を狙ったのも、誰もいないことを見越していたのだろうと思う。
以前戦った感じからして、1対1であれば勝てないまでも、負けることはないと自負しているが、何でもありで今の魔法を使われたら、それこそ一族が根絶やしにされかねない。
その事が、この場にいる全員が理解したようで、誰も言葉を発しない。
「リカルド、ここは彼女に助けを求めるしかないだろう。」
今まで黙っていたフォレックス族のフォクシーが口を開く。
「しかしどうやって……。」
「私とリカルドが直接赴くしかないでしょう。
「それしかないか。」
俺は彼女に助けを求めるため、出かける準備をする。
◇
「はぁ、いい加減にして欲しいんだけど?」
「悪いと思っている。しかし我々では、どうすれば怒りを収めてくれるのかわからないんだ。」
「だからと言ってね、私だけ呼び出した時点でミカゲの怒りに火をつけているって自覚してる?」
「ごもっともだ。一応フォクシーがフォローしているはずだが……。」
「はぁ、……まぁ私達も敵対したい訳じゃないしね。取りあえず張本人には見える形で罰を……と言っても殺したり拷問したりしたら逆効果だからね。それから、謝罪はミカゲにと言うよりもクーにしっかりとしてね。事の起こりは、そちらが心ない言葉と態度でクーの心を傷つけたのだから、そこは間違えないで。後、歓待するつもりなら、ミカゲに男を近付けないこと、出来れば6~10歳ぐらいの女の子で固めると効果的よ。最後に、アルコールは絶対に出さないで。ミカゲが酔ったら最後、責任とれないからね。」
アレイ族の獣人ミュウはそれだけを言ってミカゲの元に戻っていく。
フォクシーがミュウと入れ替わりに戻ってくる。
「どうでしたか?」
「一応有益な情報はもらえた。とにかく謝罪をしないことには始まらんな。」
俺は聞いたことをフォクシーに話す。
「成る程……ではゼノンには責任をとってもらいますか。」
「だがどうやって?」
殺したりするのは逆効果だと言うが、他にどう責任とらせる?
「簡単ですよ。相手に任せればいいんです。あの方々は怒らせさえしなければ、とっても甘いですからね。悪い様にはなりませんよ。」
「……そうだな。それよりそちらの首尾はどうだ?かなり話し込んでいたが?」
俺はフォクシーに話を振る。
「一応はまとめましたよ。鉱山には手を出さないことを約束してくれました。」
「そうか、それはよかった。」
「しかし、その代わりに古代遺跡が鉱山の奥にあることを含め、こちらの手札は殆ど無くなりました。後我々が出来ることは、彼女達の情に訴えることだけです。そのためにも関係の修復は最優先且つ最重要課題となります。」
「分かっている。急いで戻って謝罪と歓迎の準備をするぞ。」
当初から躓いた俺を見たらセシリアはどう思うだろうか?
同じ轍を踏まないように、この件が片づいたらセシリアにも報告しておいた方がいいだろう。
俺はそんなことを考えながら、皆の待つ天幕へと急ぐのだった。
クーちゃんが蹲っている。
「クーちゃん、可愛いよ。ミュウにも見せに行こうよ。」
「イヤですぅ。」
「なんで、可愛いよぉ。」
私はクーちゃんを立たせる。
クーちゃんはさっきまでお店に飾ってあった水色のワンピースを着ていた。
マリアちゃんが見つけて、私が買ってあげたものなのよ。
このお店はマジックアイテムのお店だったらしく、今クーちゃんが来ているワンピースも軽い耐魔障壁の魔力が付与されているのよ。
それ以上に、このワンピースの素晴らしい所は……。
私はクーちゃんのお尻から覗く、可愛い尻尾を眺める。
尻尾がワンピースのスカートを押し上げる様にしている為、捲れあがっているけど絶妙な角度で見えそうで見えなくなっている所が、とってもそそるのよ。
またそれが羞恥心を煽るのか、クーちゃんの顔は真っ赤に染まってる。
そしてそのクーちゃんの愛らしさを更に際立たせているのが、その頭に付けた『ネコミミカチューシャ』なのよ。
クーちゃんが身動ぎする度に、ピコピコと動く耳がとってもキュートなの。
しかも、ここにあったという事は、ただのネコミミカチューシャってわけは無く、『探知能力』『素早さ』『力』がそれぞれアップするという、無駄に高い能力が付与されているのよ。
まぁ、アップすると言っても10%程度って話なんだけど、今のクーちゃんにとってはかなり役立つと思うのよ。
本人もそれが分かっているから黙って受け入れた……筈なんだけどね。
「ほらほら、いつまでもここに蹲っていると、お店に迷惑だよ。」
「うぅー、ミカ姉がまともなこと言ってるぅ。」
えー、私はいつもまともな事しか言ってないのにぃ。
私は諦めた面持ちで、動き出すクーちゃんの手を握って店の外へと連れだす。
えーっと、ミュウはどこにいるかなぁ。
「あ、いたいた。おーいミュウ、こっちだよー。 私の呼ぶ声に気付いたミュウはすぐにやってくる。
「どこ行ってたのよ。探したのよ……って、クー、その格好……。」
「見ないでっ。何も言わないでっ。」
自らを隠すように小さくなるクーちゃん。
ミュウはすべてを察したかの様な表情で、クーちゃんの肩をポンポンと優しくたたく。
「ふぇーん、ミュウお姉ちゃーん……。」
そんなミュウにすがりつくクーちゃんを優しく抱き留めながら、責めるような目で私達を見るミュウ。
誤解があるようなので、私とマリアちゃんはネコ耳カチューシャについて説明をする。
「はぁ、理由は分かったけど……何でネコ耳……。」
「えー、可愛いじゃない。」
「……確かに可愛いけどね。」
結局、ミュウの装備にしたように、ほかの装備に能力を付与する事で落ち着いたのよ。
代わりに今日はそのままの格好でいる事を条件につけたけどね。
◇
先の争いによって、集落の周辺は強力な結界が張られ、『関所』と呼ばれるここだけが、集落への入り口として開かれている。
故に、この場所には屈強な獣人が衛兵として常駐しており、何かあれば、関所内外の兵士達が駆けつけるので、ここで騒ぎを起こすような者は居ない……居ないはずだった。
「キ、キサマら、こんな事してタダで済むと思うなよ。」
そう呻く獣人の頭を私は踏みつける。
「それは私のセリフよ。クーちゃんを傷つけておいて、タダで済むと思わない事ね。」
そう、私が踏みつけているコイツはがすべて悪い。
私達が関所を通ろうとした時に、関所を守っていたのがコイツだったのよ。
コイツはネコ耳をつけたクーちゃんを見て笑ったのね、人族が獣人のまねをしているって。
クーちゃんは真っ赤になって俯き、それを見た私は、考えるより先にコイツを倒したってわけ。
そうしたら、当然応援が出てくるわけで、私達は身を守るために仕方がなく応戦し、今に至るってわけ何だけど……。
「アンタ、スターファングの一族でしょ?リカルドの出方次第ではスターファングを……場合によってはセルアンスロープ総てを抹殺するからね。」
「な、何故族長の名を……。」
「そんなことはどうでもいいわ。」
そう、問題なのはコイツがクーちゃんを見て笑ったと言うこと。
ここにいるセルアン族がそう言う態度にでるなら、私は単なる敵対魔族としてセルアンスロープを見かけたら潰すと心に決める。
暫くすると、集落の方から獣人の団体がやってくる。
「これは……何があったのだ?」
先頭の男には見覚えがある。
「ぞ、族長……。」
「久し振りね。あなたがここにいるとは思わなかったよ。」
私は先頭に立つ男……リカルドに声をかける。
「お前が来るって聞いたから、急いで帰ってきたんだ。……しかしどう言うことだ?いくらミカゲでも、一族の誇りにかけて見逃すわけにはいかんぞ!」
「それはこっちのセリフよ。仲間を、大事な妹分を嘲笑い、傷つけた落とし前を、どうつけてくれるのかな?ただ謝って済むなんて軽く考えないでね。」
私とリカルドはその場で睨み合う。
「……話が見えない。詳しく調査したいから、時間が欲しい。」
「…………いいわ、1時間あげる。この人達も引き取ってね。1時間後、何の返答もなければこの集落、鉱山毎更地に変えるから。命が惜しければ逃げ出すように伝えてあげて。スターファングの一族以外は見逃してあげる。」
「バカな……そんな事できるはずがない。」
リカルドの横にいた男が呻くように言う。
「そう思うなら、黙って見ていれば?」
「なっ……。」
「やめろっ!……ミカゲ、済まないが時間をもらう。」
リカルドが激昂仕掛けた部下を一喝する。
「1時間だからね。」
私はそう言って、転がっている獣人達に肩を貸しながら立ち去るリカルド達を見送る。
「さて、こっちも準備しないとね。」
リカルドにはああ言ったけど、実際に鉱山まで更地にしようとするなら、それなりの準備が必要になる。
「ミカ姉、私はいいから……。」
「よくないよ。私だってクーちゃんが恥ずかしいのに我慢してその格好をしてることぐらいわかってるんだよ。」
「分かってるなら止めてやれよ。」
「それはイヤ。」
ミュウのツッコミに即答しておいて、話を続ける。
「今回のことをそのままにしておいたら、クーちゃんは二度とネコ耳を付けてくれなくなるわ。そんな事許せるはず無いじゃない!」
「ミュウお姉ちゃん、コレって私のために怒っているのと違うよね?」
「難しいけど、一応半分ぐらいはクーの為……だと思うよ……多分。」
クーちゃんとミュウが小声で話している。
「聞こえてるよ?クーちゃんの為に怒っているに決まってるじゃない。私の今後の計画を邪魔しようとしたことについてはついでなのよ。」
「今後の計画って……。」
「聞きたいけど、聞きたくないよぉ。」
私はミュウ達と話をしながらも、魔力操作を止めずにあるモノを造り上げていく。
土魔法で造り上げたソレは大砲の形をしていた。
「えっと、ミカ姉、ソレって何?」
出来上がったモノを見てクーちゃんが聞いてくる。
「んー、簡単に言えば魔力集束砲かな?ため込んだ魔力を一点に集束させて増幅して放つんだよ。今マリアちゃんに魔力を込めてもらってるから、もう少しで集落を焼き払うぐらいは出来るようになるよ。ただ鉱山までとなると、約束の時間までだとギリギリかな?」
「ミカ姉……お姉ちゃん、やめてっ!そんな事したって嬉しくないよぉ……お姉ちゃんが大量虐殺する所なんて見たくないよぉ。」
クーちゃんの泣き顔を見て、私の頭が少し冷える。
いくら腹が立ったからと言って、それでクーちゃんを泣かしたら本末転倒もいいところだね。
「……わかったよ。人には被害がないようにするわね。」
有機物にダメージが行かないように、魔力の流れに指向性を持たせる……、結構大変だよ。
「そうじゃなくて……ってだめだよぉ、聞こえてないよぉ。」
「人に被害を与えないって、普通できないと思うのですけど……。」
「よくわからないけど、まぁ、ミカゲだからな。」
「そうですね、ミカゲさんですから。」
「もぅ、二人とも止めてよぉ。」
「「無理!」」
みんなが何か言っていたけど、私は魔力操作に集中していてよく聞こえなかった。
と言うより、かなり細かい操作が必要だから聞いてる余裕がなかったんだけどね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一体、何がどうなっているんだ。
ミレイの街で出会った少女達、特にミカゲには他にはない、強い運命の力を感じた。
彼女達なら、今抱えている問題を何とかしてくれるかもしれない、そう思って、フォクシーに協力してもらって、ここにくるように仕向けたまではよかったのだが。
予定通り、彼女達は来てくれた……来てくれたけど、何故一族の存亡の危機に陥っているんだ?
誰か教えてくれっ!
「族長、考え過ぎなのでは?たかが人族如きが、この地を更地になんて出来るはずありませんよ。ここは、ゼノンの軽挙を謝罪した上で、損害賠償と相殺するように持ち掛けては如何ですか?」
俺はしたり顔でそう進言してくる男の顔を見てため息をつく。
コイツはわかっていない……そもそもミカゲを「人族如き」と下に見ている時点で、間違っていることに気付かないのだろうか?
ドォォォン………。
大きな音と地響きが起こる。
「何事だ!」
外にでると、集落の外れ、結界のある付近一帯に大きなクレーターが出来ている。
結界近くのため、誰もいないのが幸いし、人的被害がないのが幸いだったが……。
『おーい、きこえる~?後20分だよぉ~。どうせ『人族如き』とか『出来るわけない』とか言ってるんじゃないのかな?返答次第では『魔族は総て敵』と見なすからねぇ~、よく考えて返事しなよぉ。』
ミカゲの声が聞こえる。
まるでこちらのことを見透かしているようなタイミングだった。
多分この場所を狙ったのも、誰もいないことを見越していたのだろうと思う。
以前戦った感じからして、1対1であれば勝てないまでも、負けることはないと自負しているが、何でもありで今の魔法を使われたら、それこそ一族が根絶やしにされかねない。
その事が、この場にいる全員が理解したようで、誰も言葉を発しない。
「リカルド、ここは彼女に助けを求めるしかないだろう。」
今まで黙っていたフォレックス族のフォクシーが口を開く。
「しかしどうやって……。」
「私とリカルドが直接赴くしかないでしょう。
「それしかないか。」
俺は彼女に助けを求めるため、出かける準備をする。
◇
「はぁ、いい加減にして欲しいんだけど?」
「悪いと思っている。しかし我々では、どうすれば怒りを収めてくれるのかわからないんだ。」
「だからと言ってね、私だけ呼び出した時点でミカゲの怒りに火をつけているって自覚してる?」
「ごもっともだ。一応フォクシーがフォローしているはずだが……。」
「はぁ、……まぁ私達も敵対したい訳じゃないしね。取りあえず張本人には見える形で罰を……と言っても殺したり拷問したりしたら逆効果だからね。それから、謝罪はミカゲにと言うよりもクーにしっかりとしてね。事の起こりは、そちらが心ない言葉と態度でクーの心を傷つけたのだから、そこは間違えないで。後、歓待するつもりなら、ミカゲに男を近付けないこと、出来れば6~10歳ぐらいの女の子で固めると効果的よ。最後に、アルコールは絶対に出さないで。ミカゲが酔ったら最後、責任とれないからね。」
アレイ族の獣人ミュウはそれだけを言ってミカゲの元に戻っていく。
フォクシーがミュウと入れ替わりに戻ってくる。
「どうでしたか?」
「一応有益な情報はもらえた。とにかく謝罪をしないことには始まらんな。」
俺は聞いたことをフォクシーに話す。
「成る程……ではゼノンには責任をとってもらいますか。」
「だがどうやって?」
殺したりするのは逆効果だと言うが、他にどう責任とらせる?
「簡単ですよ。相手に任せればいいんです。あの方々は怒らせさえしなければ、とっても甘いですからね。悪い様にはなりませんよ。」
「……そうだな。それよりそちらの首尾はどうだ?かなり話し込んでいたが?」
俺はフォクシーに話を振る。
「一応はまとめましたよ。鉱山には手を出さないことを約束してくれました。」
「そうか、それはよかった。」
「しかし、その代わりに古代遺跡が鉱山の奥にあることを含め、こちらの手札は殆ど無くなりました。後我々が出来ることは、彼女達の情に訴えることだけです。そのためにも関係の修復は最優先且つ最重要課題となります。」
「分かっている。急いで戻って謝罪と歓迎の準備をするぞ。」
当初から躓いた俺を見たらセシリアはどう思うだろうか?
同じ轍を踏まないように、この件が片づいたらセシリアにも報告しておいた方がいいだろう。
俺はそんなことを考えながら、皆の待つ天幕へと急ぐのだった。
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