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素材以下のお姫様!?
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『エナジーボルト!』
アリスの持つ杖から電撃が放たれ、狙いたがわずタイガーベアの眉間に突き刺さる。
電撃のダメージとショックで硬直したところを、ミリアの放つ矢が眉間の同じ場所に突き刺さり、タイガーベアの息の根を止める。
「じゃぁ、素材回収するから、二人は少し休んでな。」
「はーい、あ、お姉さま怪我してますぅ。」
アリスは、ミリアの腕を手に取って叫ぶ。
「ウン、すれ違った時に、ちょっと引っかかれた。これくらい大したことないよ。」
「ダメですぅ。バイキン入ったらどうするんですか!ちょっとそのままで……遍く天空に御蓙す光の守護女神様、我、汝が信徒に力を貸し与え給う事を願う者也、今ここに癒しの奇跡を起こさん……『ヒール!』」
アリスのかざした手のひらから光が溢れ、ミリアの腕を包み込む。
光が消え去った後、ミリアの腕には最初から傷などなかったかのように、綺麗に消え去っていた。
「はぁ、さすがねぇ。痛みも消えてるわ。ありがとね。」
「いえいえ、女神様には、いつもお祈りを捧げているのですから、これくらいしていただきませんと。」
「アンタ、その内罰が当たるわよ?」
「冗談に決まってるじゃないですかぁ。」
ミリアにも、さっきのセリフがアリスなりの照れ隠しだという事は分かっていたので、それ以上ツッコむことはなかった。
それより、数日の旅でアリスの言葉が砕けるほどすっかり馴染んでいる事に安堵しながら、二人でアルフレッドが解体するのを眺めているのだった。
アルフレッド達は、エルザの街の郊外にある森の中にいる。
街の人からは『始まりの森』の名で親しまれている場所だ。
その名が示すとおり、この森には、各種薬草や魔道具に必要な素材が多く取れ、また魔獣の強さもそれほどではないため、初級の冒険者の狩場となっている場所だった。
そんな初級者向けの森の中で、初級者が相手するには少し厳しいタイガーベアが生息しているという情報が入り、その討伐の依頼を受けたアルフレッドたちが、こうして森に来ているという訳だったのだが、アルフレッドの目的は別にあった。
すなわち「アリスが冒険者としてどこまで戦えるか?」という事だった。
パーティメンバーの実力と能力を過不足なく把握しておく事は、冒険者として生き抜くためには必須の事で、これを怠るものは、いくら個々の実力が高くても、ちょっとしたことで全滅の憂き目にあい、逆に個々の能力をしっかりと把握し、適切な指示と行動を起こせるものはジャイアントキリングも可能になるというのがパーティと言うものだ。
だから、アリスの実力を測りつつ連携がどこまでできるかを試すのにちょうどいい依頼として、この依頼を受けたのだった。
アルフレッドは、この依頼を受けた時、そんな事より早く遺跡に向かいたいと、アリスが言い出すと思っていたから、文句も言わずあっさりと受け入れたことに驚きを隠せなかった。
「いいのか?てっきり寄り道せずに遺跡に向かうと言い出すかと思ったのだが?」
元々エルザの街に来たのは、ここから南にある山の麓に、遺跡があるからなので、冒険者登録を終えた今となっては、真っすぐ遺跡に向かうのに何の問題もなかった。
だからこそ、アリスの反応は意外過ぎて、思わず思っていたことを口にしてしまう。
「えぇ、依頼を受けた理由も分ってますから。それに、護衛していただける方の実力を知りたいのは私も同じですよ。」
その答えを聞いて、アルフレッドは思わず唸る。
双方の利害が一致した結果として、タイガーベアの討伐をすることになったのだが、見た目と、お姫様という立場抜かせば、思っていた以上に賢く、一筋縄ではいかないようだと、アリスへの認識を改めるアルフレッドだった。
「ねぇ、神聖魔法を使えるって事は、アリスちゃんは『巫女』なの?」
アルフレッドが解体を終えて二人の元へ戻ると、そんな会話が聞こえてくる。
「それは俺も聞きたいな。公女様が巫女って話は聞いたことが無かったからな。」
そう言いながら二人の近くに腰を下ろす。
「終わったの?お疲れ様。」
「アル様、お疲れさまでした。」
ミリアとアリスは、労いの言葉とともに、それぞれ水と食料を差し出してくる。
「取りあえず、休憩しながらアリスちゃんの話を聞こうよ。」
「えー、いつの間に話す事前提になってるんですかぁ?」
ニコニコ笑いながらそう答えるアリス。
「話すのはいいんですが、結構重いですよぉ。覚悟できてますかぁ?」
「いや、そんなめんどそうな話は聞かない。」
「即答っ!もっと考えましょうよ。ほら、公女の秘密ですよ?気になりませんか?」
「私は、気になるよ。」
「ですよねぇ、お姉さま気になりますよねぇ。」
「聞いたら後に引けなくなりそうだから、絶対聞かない。」
「そんなこと言わずにぃ……実は私はですねぇ……。」
「聞かんと言っとるだろうがっ!」
何だかんだと言いながら、この数日行動を共にすることで、お互いの警戒心も薄れ、それなりの信頼関係を築き始めている。
少なくとも、これくらいの冗談を言い合えるくらいには馴染んできているのは確かだった。
◇
「一応確認するぞ?アリスの戦闘スタイルは回復・支援。攻撃手段は電撃系の魔法と状態異常化。一応護身術程度は身につけている……こんな所か?」
「えぇ、概ね間違いないですよ。神聖魔法は上級を習得しているから、死なない限り回復出来ますよぉ。」
「すっごーい、流石アリスちゃん。」
少し誇らしげに胸を張るアリスにミリアが褒めて持ち上げる。
「腕とか切れても引っ付くの?」
「部位欠損も経過時間に寄りますが80%以上で元通りなのですよ。」
「だってさ、アル、試してみない?」
「試すかっ、アホっ!」
アルフレッドと、ミリアのやり取りを楽しそうに眺めていたアリスが、ふと口を開く。
「そう言えば、ミリアお姉さまが弓と小剣、精霊魔法を使うのはわかりましたけど、アル様の戦闘スタイルが分からないです。」
「そ、それは、その内な。」
「えー、ズルいですぅ。パーティメンバーの能力を把握するのは大事って言ってたじゃないですかっ!」
誤魔化そうとするアルフレッドに、アリスが文句をいう。
「まぁまぁ、アリスちゃん。」
「でもぉ……。」
納得がいかず、更に言い募ろうとするアリスを、ミリアが宥める。
(ここは、私に任せて、ね?)
(うぅ……お任せしますぅ)
「ところで、アル。討伐依頼はさっきので終了ですよね?」
「あぁ、ざっと周りを見たけど、他にはいないようだしな。」
急に話題を変えるミリアの態度を訝し気に思いつつも、そう答えるアルフレッド。
「じゃぁね、この後ゴブリン退治に行きませんか?何でも、この森の奥に巣があるらしく、困ってるって言ってましたよ。。」
最近、森の一角にゴブリンが住みつきだして巣を作ってるらしく、まだ被害が出ているわけじゃないので正式依頼にはなっていないけど、森に行くなら状況を調べて、可能なら退治してきて欲しい、と、ミリアは出がけにギルドで聞いてきた話をアルフレッドに伝える。
「ゴブリンかぁ……。」
「ゴブリン退治ですね、冒険者っぽいですぅ!早く向かいましょう!」
テンションが上がったアリスが立ち上がりアルフレッドの腕を引っ張る。
「いや、めんどくさいからパス。」
しかし、アルフレッドは億劫そうな態度で断る。
「何でですかっ!ゴブリンですよっ、冒険者の基本ですよっ!ここで退治しなくて、いつ退治するんですかっ!」
「落ち着けよアリス。ゴブリンだぞ?臭い、汚い、稼ぎが悪い、と3Kモンスターの代表だぞ。」
「でもゴブリンですよ!倒せばゴブリンスレイヤーの称号がもらえるんですよ!」
「そんな称号欲しいのか?」
「ううん、いらない。」
「なんだよっ!」
……ったく、称号が欲しいなら協力してやってもと思ったのに、と思うアルフレッドだったが、口に出したのは別の事だった。
「大体、ゴブリンとはいえ、もし万が一負けて捕まったらどうなるか分かってるのか?奴らは歩く18禁なんだぞ。」
「……アル様、私の事を心配して下さっているんですね。感激ですぅ!」
そう言って飛びついてくるアリス。
その顔は今までで、一番年相応に見えた。
「だったらアリスちゃんの為にも、ゴブリン根絶しないとね。」
「だから、面倒だからやらないって。」
「アル、この間、魔鍾の輝石が欲しいって言ってませんでした?」
「あん?確かに言ったが……」
突然の話題変更に戸惑うアルフレッド。
「魔鍾の輝石に必要な素材は?」
「Cランク以上の魔石に、聖水、ウルフ種の牙、血吸い蝙蝠の羽に三種の薬草と……そうかっ!」
「そういうことです。」
「あぁ、すぐに行くぞ!」
「あれ?えっと、その、何がどうなっているのでしょうか?」
いきなりやる気を出すアルフレッドを見て、アリスが何がどうなっているの?とミリアを見る。
「アリスちゃん、ゴブリン退治のミッションですよ。」
ミリアがニッコリと笑いながらそう答えてくれた。
「でも、急に……どうして……。」
アリスは先程まで渋っていたことを微塵も出さずに嬉々として準備をしているアルフレッドを見つめる。」
「アルは前から魔鍾の輝石っていうアイテムを作りたがっていたのよ。何でも、次のアイテムの為の中間素材なんだって。」
「それは作成するのが難しいのですか?」
理解が追い付かないままアリスが訊ねる。
「アルが言うには、それほど難易度が高くないらしいんだけど、素材がたくさん必要らしくてね。その内の一つが『ゴブリンの爪』なのよ。」
ミリアがそこまで言うと、アリスはようやく納得の表情を見せる。
つまりアルフレッドの態度が急変したのは、自分にとって必要な素材の為だったらしい。
その事に思い当たり、思わず不満が口をついて出る。
「……さっきまで、私の心配してましたよねぇ?」
「……アルはそう言う奴だからねぇ。……はぁ。」
アリスの気持ちが痛いほどよく分かったミリアは、それだけを言って大きなため息を吐いた。
アリスの持つ杖から電撃が放たれ、狙いたがわずタイガーベアの眉間に突き刺さる。
電撃のダメージとショックで硬直したところを、ミリアの放つ矢が眉間の同じ場所に突き刺さり、タイガーベアの息の根を止める。
「じゃぁ、素材回収するから、二人は少し休んでな。」
「はーい、あ、お姉さま怪我してますぅ。」
アリスは、ミリアの腕を手に取って叫ぶ。
「ウン、すれ違った時に、ちょっと引っかかれた。これくらい大したことないよ。」
「ダメですぅ。バイキン入ったらどうするんですか!ちょっとそのままで……遍く天空に御蓙す光の守護女神様、我、汝が信徒に力を貸し与え給う事を願う者也、今ここに癒しの奇跡を起こさん……『ヒール!』」
アリスのかざした手のひらから光が溢れ、ミリアの腕を包み込む。
光が消え去った後、ミリアの腕には最初から傷などなかったかのように、綺麗に消え去っていた。
「はぁ、さすがねぇ。痛みも消えてるわ。ありがとね。」
「いえいえ、女神様には、いつもお祈りを捧げているのですから、これくらいしていただきませんと。」
「アンタ、その内罰が当たるわよ?」
「冗談に決まってるじゃないですかぁ。」
ミリアにも、さっきのセリフがアリスなりの照れ隠しだという事は分かっていたので、それ以上ツッコむことはなかった。
それより、数日の旅でアリスの言葉が砕けるほどすっかり馴染んでいる事に安堵しながら、二人でアルフレッドが解体するのを眺めているのだった。
アルフレッド達は、エルザの街の郊外にある森の中にいる。
街の人からは『始まりの森』の名で親しまれている場所だ。
その名が示すとおり、この森には、各種薬草や魔道具に必要な素材が多く取れ、また魔獣の強さもそれほどではないため、初級の冒険者の狩場となっている場所だった。
そんな初級者向けの森の中で、初級者が相手するには少し厳しいタイガーベアが生息しているという情報が入り、その討伐の依頼を受けたアルフレッドたちが、こうして森に来ているという訳だったのだが、アルフレッドの目的は別にあった。
すなわち「アリスが冒険者としてどこまで戦えるか?」という事だった。
パーティメンバーの実力と能力を過不足なく把握しておく事は、冒険者として生き抜くためには必須の事で、これを怠るものは、いくら個々の実力が高くても、ちょっとしたことで全滅の憂き目にあい、逆に個々の能力をしっかりと把握し、適切な指示と行動を起こせるものはジャイアントキリングも可能になるというのがパーティと言うものだ。
だから、アリスの実力を測りつつ連携がどこまでできるかを試すのにちょうどいい依頼として、この依頼を受けたのだった。
アルフレッドは、この依頼を受けた時、そんな事より早く遺跡に向かいたいと、アリスが言い出すと思っていたから、文句も言わずあっさりと受け入れたことに驚きを隠せなかった。
「いいのか?てっきり寄り道せずに遺跡に向かうと言い出すかと思ったのだが?」
元々エルザの街に来たのは、ここから南にある山の麓に、遺跡があるからなので、冒険者登録を終えた今となっては、真っすぐ遺跡に向かうのに何の問題もなかった。
だからこそ、アリスの反応は意外過ぎて、思わず思っていたことを口にしてしまう。
「えぇ、依頼を受けた理由も分ってますから。それに、護衛していただける方の実力を知りたいのは私も同じですよ。」
その答えを聞いて、アルフレッドは思わず唸る。
双方の利害が一致した結果として、タイガーベアの討伐をすることになったのだが、見た目と、お姫様という立場抜かせば、思っていた以上に賢く、一筋縄ではいかないようだと、アリスへの認識を改めるアルフレッドだった。
「ねぇ、神聖魔法を使えるって事は、アリスちゃんは『巫女』なの?」
アルフレッドが解体を終えて二人の元へ戻ると、そんな会話が聞こえてくる。
「それは俺も聞きたいな。公女様が巫女って話は聞いたことが無かったからな。」
そう言いながら二人の近くに腰を下ろす。
「終わったの?お疲れ様。」
「アル様、お疲れさまでした。」
ミリアとアリスは、労いの言葉とともに、それぞれ水と食料を差し出してくる。
「取りあえず、休憩しながらアリスちゃんの話を聞こうよ。」
「えー、いつの間に話す事前提になってるんですかぁ?」
ニコニコ笑いながらそう答えるアリス。
「話すのはいいんですが、結構重いですよぉ。覚悟できてますかぁ?」
「いや、そんなめんどそうな話は聞かない。」
「即答っ!もっと考えましょうよ。ほら、公女の秘密ですよ?気になりませんか?」
「私は、気になるよ。」
「ですよねぇ、お姉さま気になりますよねぇ。」
「聞いたら後に引けなくなりそうだから、絶対聞かない。」
「そんなこと言わずにぃ……実は私はですねぇ……。」
「聞かんと言っとるだろうがっ!」
何だかんだと言いながら、この数日行動を共にすることで、お互いの警戒心も薄れ、それなりの信頼関係を築き始めている。
少なくとも、これくらいの冗談を言い合えるくらいには馴染んできているのは確かだった。
◇
「一応確認するぞ?アリスの戦闘スタイルは回復・支援。攻撃手段は電撃系の魔法と状態異常化。一応護身術程度は身につけている……こんな所か?」
「えぇ、概ね間違いないですよ。神聖魔法は上級を習得しているから、死なない限り回復出来ますよぉ。」
「すっごーい、流石アリスちゃん。」
少し誇らしげに胸を張るアリスにミリアが褒めて持ち上げる。
「腕とか切れても引っ付くの?」
「部位欠損も経過時間に寄りますが80%以上で元通りなのですよ。」
「だってさ、アル、試してみない?」
「試すかっ、アホっ!」
アルフレッドと、ミリアのやり取りを楽しそうに眺めていたアリスが、ふと口を開く。
「そう言えば、ミリアお姉さまが弓と小剣、精霊魔法を使うのはわかりましたけど、アル様の戦闘スタイルが分からないです。」
「そ、それは、その内な。」
「えー、ズルいですぅ。パーティメンバーの能力を把握するのは大事って言ってたじゃないですかっ!」
誤魔化そうとするアルフレッドに、アリスが文句をいう。
「まぁまぁ、アリスちゃん。」
「でもぉ……。」
納得がいかず、更に言い募ろうとするアリスを、ミリアが宥める。
(ここは、私に任せて、ね?)
(うぅ……お任せしますぅ)
「ところで、アル。討伐依頼はさっきので終了ですよね?」
「あぁ、ざっと周りを見たけど、他にはいないようだしな。」
急に話題を変えるミリアの態度を訝し気に思いつつも、そう答えるアルフレッド。
「じゃぁね、この後ゴブリン退治に行きませんか?何でも、この森の奥に巣があるらしく、困ってるって言ってましたよ。。」
最近、森の一角にゴブリンが住みつきだして巣を作ってるらしく、まだ被害が出ているわけじゃないので正式依頼にはなっていないけど、森に行くなら状況を調べて、可能なら退治してきて欲しい、と、ミリアは出がけにギルドで聞いてきた話をアルフレッドに伝える。
「ゴブリンかぁ……。」
「ゴブリン退治ですね、冒険者っぽいですぅ!早く向かいましょう!」
テンションが上がったアリスが立ち上がりアルフレッドの腕を引っ張る。
「いや、めんどくさいからパス。」
しかし、アルフレッドは億劫そうな態度で断る。
「何でですかっ!ゴブリンですよっ、冒険者の基本ですよっ!ここで退治しなくて、いつ退治するんですかっ!」
「落ち着けよアリス。ゴブリンだぞ?臭い、汚い、稼ぎが悪い、と3Kモンスターの代表だぞ。」
「でもゴブリンですよ!倒せばゴブリンスレイヤーの称号がもらえるんですよ!」
「そんな称号欲しいのか?」
「ううん、いらない。」
「なんだよっ!」
……ったく、称号が欲しいなら協力してやってもと思ったのに、と思うアルフレッドだったが、口に出したのは別の事だった。
「大体、ゴブリンとはいえ、もし万が一負けて捕まったらどうなるか分かってるのか?奴らは歩く18禁なんだぞ。」
「……アル様、私の事を心配して下さっているんですね。感激ですぅ!」
そう言って飛びついてくるアリス。
その顔は今までで、一番年相応に見えた。
「だったらアリスちゃんの為にも、ゴブリン根絶しないとね。」
「だから、面倒だからやらないって。」
「アル、この間、魔鍾の輝石が欲しいって言ってませんでした?」
「あん?確かに言ったが……」
突然の話題変更に戸惑うアルフレッド。
「魔鍾の輝石に必要な素材は?」
「Cランク以上の魔石に、聖水、ウルフ種の牙、血吸い蝙蝠の羽に三種の薬草と……そうかっ!」
「そういうことです。」
「あぁ、すぐに行くぞ!」
「あれ?えっと、その、何がどうなっているのでしょうか?」
いきなりやる気を出すアルフレッドを見て、アリスが何がどうなっているの?とミリアを見る。
「アリスちゃん、ゴブリン退治のミッションですよ。」
ミリアがニッコリと笑いながらそう答えてくれた。
「でも、急に……どうして……。」
アリスは先程まで渋っていたことを微塵も出さずに嬉々として準備をしているアルフレッドを見つめる。」
「アルは前から魔鍾の輝石っていうアイテムを作りたがっていたのよ。何でも、次のアイテムの為の中間素材なんだって。」
「それは作成するのが難しいのですか?」
理解が追い付かないままアリスが訊ねる。
「アルが言うには、それほど難易度が高くないらしいんだけど、素材がたくさん必要らしくてね。その内の一つが『ゴブリンの爪』なのよ。」
ミリアがそこまで言うと、アリスはようやく納得の表情を見せる。
つまりアルフレッドの態度が急変したのは、自分にとって必要な素材の為だったらしい。
その事に思い当たり、思わず不満が口をついて出る。
「……さっきまで、私の心配してましたよねぇ?」
「……アルはそう言う奴だからねぇ。……はぁ。」
アリスの気持ちが痛いほどよく分かったミリアは、それだけを言って大きなため息を吐いた。
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