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こすもす

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第449話*

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 食べ始めてから二十分くらい経った時。
 なんだか体に違和感を感じ始めた。
 それは鼓動の速さだった。

(あれ……?)

 ドクンドクンと脈打つスピードが上がっていた。
 もう酔ってしまったのだろうか。
 しかしまだ、白ワインは二杯目だ。最近飲んでいなかったから、弱くなってしまったのだろうか。

「修介、なんだか顔赤いね」
「ん? そうかな? 確かにちょっと熱い気がすんねん……」

 グラスを触った掌を額にあてると、氷を当てられているみたいにひんやりとして気持ちがいい。
 それくらい身体中が熱くなっていたのだ。

「酔った? ワイン、ちょっと強めなんだよね」

 景はワインのボトルラベルを見ながら呟いている。
 その時、ボトルを持つ景の長い指に目がいった。
 白くて長くて、繊細な指。傷一つない爪先。
 その指が、いつも俺の肌の上を優しくなぞっているんだ。
 俺の胸やぐずぐずに蕩けた体の奥を苛め回して──

「……あっ」
「どうしたの?」
「……ううん、なんも」

 なぜか淫らな妄想が頭を支配する。
 こんなことは初めてだ。
 普段だったら、キスが止まらなくなって、その延長線上にいやらしいことがあるのに。

 向かいに座る景は、何か世間話をしているようだけど、全く耳に入ってこない。
 膝をもじもじとさせ、太ももの上でぎゅっと拳をにぎる。
 ふと手首に固いものが布越しに触れて、ハッとした。
 体の中心が、何もしていないのに膨れ上がっている。

(なっ……なんで……っ)

 血がそこに集まっている感覚がある。
 そして、目の周りがジワジワと重たくて熱い。
 ものすごく酔った時が前にあったけど、その時の感覚に似ていて、それに加えてなぜかお腹の奥がヒクヒクする。

 やばい、俺、今なぜか……景とめちゃくちゃシたい……!

「……修介?」

 コト、と静かにワイングラスを置いた景は、こちらをじっと見つめてくる。
 なんだか不敵な笑みを浮かべる景に感じてしまって、また反応してしまった中心を悟られないように「なに?」と作り笑いをした。

「なんだか様子が変だね。目もちょっと充血してる」

 景はテーブルに身を乗り出して、俺の髪をかきあげた。
 その手によって動かされる髪の毛一本一本でさえ、敏感に反応してしまう。

「あっ……」
「あれ……どうしたの、そんな声出して」
「ふ、あ、ぁ……」

 景は頭皮に触れてから、その手をゆっくりと下におろしていく。
 そうやって優しく髪を梳いてくれる景の指が、ひどく気持ちがいい。
 吐き出す息が熱く、どんどん荒くなってくる。

 景は椅子から立ち上がったので、俺はテーブルの下に下半身を隠すように前屈みになった。
 隣で心配そうに顔を覗き込んでくる景は、俺の髪を梳くのをやめようとしない。

「あぁ、そんなに瞳潤んじゃって。具合悪くなっちゃった?」
「……」

 景がなんだかすごく優しくて……おかしい。
 そう直感で思った。
 こうやって知らん顔して演技するのはさすが俳優だ。
 俺は霞がかった頭で考え、ふと目の前のワイングラスの液体を見る。
 いくらアルコール度数が強いとはいえ、この体の変化は単に酔ったわけではないと分かる。
 考えられることとすれば……

「なんか、入れたやろ……?」
「えっ? 何?」

 やっとんな、これ……
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