リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
449 / 454

第448話

しおりを挟む
 ピンポーン、とインターホンが鳴ったと同時に、ハッと目を覚ました。
 どうやらソファーで寝ていたらしい。
 鍵が回る音がしたので、俺は慌てて飛び起きた。

「けっ、景、帰ってきちゃった!」

 いま冷蔵庫でガトーショコラを冷やしている最中だ。
 バタバタとドアの方に走って行き、ドアの隙間から顔を覗かせると景と目が合った。

「ただいま」
「おっ、おかえり! ちょっと、そこで待っとって!」
「え、なんで? あ、料理してたの?」
「い、いいっていうまで、開けちゃダメやからな!」

 返事を待たずにバタンと閉めて、俺は散らかっているキッチンを急いで片付けた。
 使った調理器具や卵の殻を片付けて、どうにか元の状態に戻す。
 冷蔵庫にあるガトーショコラの表面を指先でつつくと、程よく固まってくれているみたいでホッと一安心した。
 本当は包装紙に包んで、プレゼントっぽく渡したかったけどしょうがない。
 俺はエプロンを取り、ドアを開けてひょっこりと顔を出した。

「……お待たせ」
「うん。何作ってくれてたの?」

 リビングに入ってきた景は、テーブルに乗ったガトーショコラを見てパァっと顔を明るくさせた。

「すごい。これ作ったの?」
「ん、まぁ」

 ちょっと照れ臭くて視線を逸らすと、景は俺をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ありがとう。早速食べてもいい?」
「ええけど、ごめん、夕飯まだ作ってなくて」
「ううん、いい。とりあえずこれ食べる」

 キスをした後、景は荷物を置いて洗面所へ手を洗いにいった。
 紙袋が二つあったので中身を覗くと、それぞれ可愛らしい紙に包まれた箱が入っていたので「げっ」と思わず声を出す。
 景……なんとなく予想は出来ていたけど、やはりチョコを貰ってきたか……

「あ、それ、宮ちゃんの奥さんから。そっちはタケからもらったやつ。ファンの人からのは、事務所のみんなに配られるみたいだから」

 何も聞いていないのに自ら話してくれる景に、ちょっとホッとした。
 ん、でも、タケさんからって?

「なんでタケさんが景にくれるん?」
「あぁ、タケ、今糖質オフダイエットしてるんだよね。彼女からもらったらしいんだけど、自分じゃ食べられないからって」
「ふぅん、そうなんや」

 俳優さんって体調管理とか体型維持とか、大変なんだろうな。
 景もタケさんも他の俳優さんたちも、本当に尊敬する。
 ポットの水を沸かそうとスイッチを入れようとした時、景に止められた。

「紅茶よりも、お酒飲まない? 僕、美味しそうなの買ってきたんだ。準備するよ」

 甘いものとお酒? と思ったけど、景は明日休みだし、飲みたいのかもな。そう思いながらガトーショコラを切り分ける。
 キッチンで準備する景は、端っこに寄せていたボウルの中身を見て笑っていた。

「あれ、何このチョコ」
「あー、それ失敗してん。お湯の中に直接ぶち込んでもうて。捨てるんも、なんかもったいない気がして」
「あはは、何かに使えたらいいんだけどね」

 数時間放置された失敗チョコは歪な形に固まってきている。食べられないことはないんだろうけど、きっと美味しくはないだろうなぁ。




「うん、美味しいよ。濃厚で」

 ガトーショコラを一口食べた景にそう言われて、テンションが上がった。

「あぁ、良かったー。これ、景がおすすめしてくれた動画アプリで作ってみたんよ。やっぱあのアプリは神やな」
「動画であれば修介でも作りやすいかと思って。あ、こっちも食べてみて。お酒入りなんだって」
「へー、そうなんや。じゃあいただきまーす」

 皿の上に乗せられたチョコを一つ、口に放り投げる。
 今食べたのは、タケさんの彼女さんが作ったというチョコだ。

「うん、おいしい。なんか桃っぽい甘い味がする」
「そう、良かった。僕も多くは食べられないから、どんどん食べてね」

 とっても笑顔な景を見ると、なんだか俺も嬉しくなる。
 白ワインを飲みながら、少しずつチョコを口に運んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...