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第432話
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リビングに戻ってきた俺は、ギョッとした。
てっきりまだ二人で話し込んでいるのかと思いきや、オカンはキッチンで支度を始めていて、景は分厚いアルバムを開いて嬉しそうに眺めていたのだ。
その薄黄色のアルバムに見覚えがある。
俺の小さい頃の写真が入ったアルバムだ。
俺に気付いた景は、手招きをして呼び寄せる。
隣に座ると、景はある写真を指さした。
「これ、三歳だって。可愛いね。本当に女の子みたい」
子供の頃の俺が積み木で遊んでいる写真だった。
髪がおカッパで、ほっぺたが赤くてまん丸。
確かに女の子みたいだ。
「あ、こっちは幼稚園だって。鼻水垂らしながら泣いてる」
「もうっ! 恥ずかしいから見んといて! オカン、何でこんなん持ってきてるんよ?!」
「だって景ちゃんが修介の小さい頃の写真見たいって言うから~」
馴れ馴れしく景ちゃんと呼ぶなっ。
テーブルの上には何冊ものアルバムが置いてある。
隣の部屋から何冊か取ってきたのだろう。
恥ずかしくなった俺は無理やりアルバムを閉じるけど、景はまた新たなアルバムを手に取り、パラパラとめくってしまった。
「あれ、これは最近だね? 高校生?」
景は興味津々にページをめくっていく。
覗き込むと、学ラン姿で黒髪の俺が、クラスメイトとピースしたりしている写真があった。
そういえば、いつか写真を整理しようと思っていたけど、結局いつかはやって来なくて適当に入れておいたんだった。
次のページをめくると、仲の良かった友達と映る写真が出てきたから嬉しくなって、パアッと目を輝かせた。
「あぁっ、懐かしいなぁ。裕也、こんなに子供っぽかったんや」
「友達?」
「そうそう、一番仲良ぉしてたクラスメイト。サッカーがホンマ上手でなぁ」
「へぇー、じゃあこっちは?」
「高一の時のクラスメイトの賢一くんって言う奴な。めっちゃ頭良かってん。生徒会入っとったなぁ確か」
「ふぅん。じゃあこっちの背高い奴は?」
「あぁ、これは瞬くん……」
「……」
「……」
無言になった途端に、オカンの天ぷらを揚げる食欲をそそるような音がジュワッと聞こえてくる。
景はニコリとしながら、その写真の瞬くんを見つめた。
「ふぅん。そう。なんとなくそうじゃないかと思って見てたけど、これが修介の元カレね」
「景、過去じゃなくて未来を見んと」
景が笑うと少し怖くなるのはどうしてだろう。
そして景は何事も無かったかのように残りの写真を見終えた。
もうすぐ料理が出来上がる、という時に、二階の部屋にいた父が階段を降りてきたから、景は椅子から立ち上がった。
てっきりまだ二人で話し込んでいるのかと思いきや、オカンはキッチンで支度を始めていて、景は分厚いアルバムを開いて嬉しそうに眺めていたのだ。
その薄黄色のアルバムに見覚えがある。
俺の小さい頃の写真が入ったアルバムだ。
俺に気付いた景は、手招きをして呼び寄せる。
隣に座ると、景はある写真を指さした。
「これ、三歳だって。可愛いね。本当に女の子みたい」
子供の頃の俺が積み木で遊んでいる写真だった。
髪がおカッパで、ほっぺたが赤くてまん丸。
確かに女の子みたいだ。
「あ、こっちは幼稚園だって。鼻水垂らしながら泣いてる」
「もうっ! 恥ずかしいから見んといて! オカン、何でこんなん持ってきてるんよ?!」
「だって景ちゃんが修介の小さい頃の写真見たいって言うから~」
馴れ馴れしく景ちゃんと呼ぶなっ。
テーブルの上には何冊ものアルバムが置いてある。
隣の部屋から何冊か取ってきたのだろう。
恥ずかしくなった俺は無理やりアルバムを閉じるけど、景はまた新たなアルバムを手に取り、パラパラとめくってしまった。
「あれ、これは最近だね? 高校生?」
景は興味津々にページをめくっていく。
覗き込むと、学ラン姿で黒髪の俺が、クラスメイトとピースしたりしている写真があった。
そういえば、いつか写真を整理しようと思っていたけど、結局いつかはやって来なくて適当に入れておいたんだった。
次のページをめくると、仲の良かった友達と映る写真が出てきたから嬉しくなって、パアッと目を輝かせた。
「あぁっ、懐かしいなぁ。裕也、こんなに子供っぽかったんや」
「友達?」
「そうそう、一番仲良ぉしてたクラスメイト。サッカーがホンマ上手でなぁ」
「へぇー、じゃあこっちは?」
「高一の時のクラスメイトの賢一くんって言う奴な。めっちゃ頭良かってん。生徒会入っとったなぁ確か」
「ふぅん。じゃあこっちの背高い奴は?」
「あぁ、これは瞬くん……」
「……」
「……」
無言になった途端に、オカンの天ぷらを揚げる食欲をそそるような音がジュワッと聞こえてくる。
景はニコリとしながら、その写真の瞬くんを見つめた。
「ふぅん。そう。なんとなくそうじゃないかと思って見てたけど、これが修介の元カレね」
「景、過去じゃなくて未来を見んと」
景が笑うと少し怖くなるのはどうしてだろう。
そして景は何事も無かったかのように残りの写真を見終えた。
もうすぐ料理が出来上がる、という時に、二階の部屋にいた父が階段を降りてきたから、景は椅子から立ち上がった。
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