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第408話
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「どうしたん? 景」
「母さんに何を言われても負けちゃ駄目だよ。僕の気持ちは絶対に変わらないから」
景の顔を見上げながら、俺も強い意志を持ってうん、と頷いた。
きっと景も、お母様がやっぱりよく思ってないんじゃないかって勘付いている。
じゃないと俺と二人きりになる理由は無い。
景はキッチンで洗い物をするお母様の背中をチラッと見てから、背中を丸めて自らの顔を近づけてきた。
それを跳ね除けることはせずに受け入れる。
互いに磁石で引き寄せあうようにして、こっそり秘密のキスをした。
それが今の俺にはとっても心強かった。
俺たちはきっと大丈夫。大丈夫だ。
キスをやめ、ほうっと熱い息を吐き出して視線を下に移す。
気配は感じていたけど、やっぱりモコが景の足元にいて、俺たちをジッと見つめていた。
「モコ、この事、シーッだからね」
景が悪戯っぽく笑って口に人差し指を当てると、モコは偶然にもキャンッと一吠えした。
理解してたらすごいな……。
景はそのままモコと一緒にリビングに戻っていく。
俺は洗面所に入り、手を洗っていると背後から声を掛けられた。
「じゃあ行きましょうか」
「はい」
お母様の後に続いて玄関に向かった。
エコバッグを肩からかけたお母様は一足先に外に出る。
俺は景が持ってきてくれたコートに袖を通し、スニーカーに足を入れて靴紐を結んでから立ち上がる。
振り返り、景と目を合わせた。
「何話したか、ちゃんと後で教えてね」
「うん。行ってくんね」
お互い指先だけ繋いで体温を感じとってから、玄関の扉を閉めた。
数メートル先にお母様がいたから、小走りで駆け寄る。
少し距離を置いて後ろについて歩いていたら、お母様は俺を振り返った。
「修介くんは、嫌いな食べ物とかある?」
ニコリと笑った顔を見て少しだけ安堵した。
隣に並んで、少しの沈黙の後に返事をした。
「あ、特に、無いです」
「ふふ。嘘でしょ。本当の事を言っていいのよ。誰も怒ったりしないから」
見透かされているようで恥ずかしくなり、顔が熱くなった。
お母様は俺を気遣ってくれているようだった。
無垢な笑顔でそう聞かれると、勘ぐってしまっていたのが申し訳なくなってくる。
本当に俺をただの荷物持ちとして名指ししただけなのかもしれないのに。
「すみません。実はサーモンが苦手です」
「ほらやっぱり。聞いて良かったわ。ポキ丼を作ろうか迷っていたのよ」
「ポキ丼?」
「ハワイ料理で、小さく切った魚介の刺身をタレで和えるのよ。マグロとかサーモンとかイカとか。ポキって、ハワイ語で小さく切るって意味」
「へぇ、そうなんですか」
「サーモンの代わりに何か入れればいいかしらね」
「母さんに何を言われても負けちゃ駄目だよ。僕の気持ちは絶対に変わらないから」
景の顔を見上げながら、俺も強い意志を持ってうん、と頷いた。
きっと景も、お母様がやっぱりよく思ってないんじゃないかって勘付いている。
じゃないと俺と二人きりになる理由は無い。
景はキッチンで洗い物をするお母様の背中をチラッと見てから、背中を丸めて自らの顔を近づけてきた。
それを跳ね除けることはせずに受け入れる。
互いに磁石で引き寄せあうようにして、こっそり秘密のキスをした。
それが今の俺にはとっても心強かった。
俺たちはきっと大丈夫。大丈夫だ。
キスをやめ、ほうっと熱い息を吐き出して視線を下に移す。
気配は感じていたけど、やっぱりモコが景の足元にいて、俺たちをジッと見つめていた。
「モコ、この事、シーッだからね」
景が悪戯っぽく笑って口に人差し指を当てると、モコは偶然にもキャンッと一吠えした。
理解してたらすごいな……。
景はそのままモコと一緒にリビングに戻っていく。
俺は洗面所に入り、手を洗っていると背後から声を掛けられた。
「じゃあ行きましょうか」
「はい」
お母様の後に続いて玄関に向かった。
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俺は景が持ってきてくれたコートに袖を通し、スニーカーに足を入れて靴紐を結んでから立ち上がる。
振り返り、景と目を合わせた。
「何話したか、ちゃんと後で教えてね」
「うん。行ってくんね」
お互い指先だけ繋いで体温を感じとってから、玄関の扉を閉めた。
数メートル先にお母様がいたから、小走りで駆け寄る。
少し距離を置いて後ろについて歩いていたら、お母様は俺を振り返った。
「修介くんは、嫌いな食べ物とかある?」
ニコリと笑った顔を見て少しだけ安堵した。
隣に並んで、少しの沈黙の後に返事をした。
「あ、特に、無いです」
「ふふ。嘘でしょ。本当の事を言っていいのよ。誰も怒ったりしないから」
見透かされているようで恥ずかしくなり、顔が熱くなった。
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本当に俺をただの荷物持ちとして名指ししただけなのかもしれないのに。
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「ほらやっぱり。聞いて良かったわ。ポキ丼を作ろうか迷っていたのよ」
「ポキ丼?」
「ハワイ料理で、小さく切った魚介の刺身をタレで和えるのよ。マグロとかサーモンとかイカとか。ポキって、ハワイ語で小さく切るって意味」
「へぇ、そうなんですか」
「サーモンの代わりに何か入れればいいかしらね」
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