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第403話
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「初めまして。北村修介です」
取り敢えず名乗ってぺこりとお辞儀をした。
「あぁ初めまして。今日は景と遊んでいたの?」
「あ、はい」
お父様はさっきのお母様のように、俺に当たり障りの無い質問をしていき、それに俺は答えていく。
ちょっと意外だ。
お父様、どんな怖い人かと想像してたけど、お母様同様天使のように優しそうで和やかな人だ。
そうか、この優しい二人からこの優しい変態が生まれたのか……
俺との会話が途切れたところで、お父様は今度は景の方に視線を向けた。
「景、久しぶりだねぇ」
「うん」
「この間、一人で景の映画観に行って恥ずかしかったよ。周りみんな若い女の子ばっかりで、こんなおじさん一人もいないんだから。景の役見て思ったけど、あんな高校生、普通いないよねぇ! なんであんな不良なのに大人しく授業受けちゃってるんだろうね。ちょっとリアリティーが無いよね!」
「そうだね」
「でもあの女の子は可愛かったねぇー。倉田さんって言ったっけ?」
「うん」
「演技はまだこれからって感じだったねぇ。でも父さん、あの子はダイヤの原石だと思うよ! 磨いていけば将来必ずトップスターになれるんじゃないかって僕は思うんだ!」
「そうだね」
お父様は熱く語るのに、景はさほど興味が無さそうに相槌を打っていく。
あぁ、藤澤家の中身って実はこうなのか。
ひたすらひょうきんに話続けるお父様をじっと見つめていたら、苦笑したお母様が話を遮るように茶飲みのコップをテーブルに置いた。
「お父さん。お友達の前でそんな話してないで。ごめんなさいね、お父さんいつもこうで」
「あ、いえ」
「景の一番のファンだからねぇ、僕は」
お父様はそう言ってお茶を一口飲む。
景とお父様を交互に見ると、どちらも嬉しそうに微笑んでいた。
それを見て思った。
きっと景は、言葉には出さなくてもお父様の事、信頼しきってるんだろうな。
だから景はさっき「大丈夫」って言ったのかも。
なんだかそういうのいいな。じんわり胸があったかくなった。
「それで、二人に話があるんだ」
景はいきなり言うから、俺は唇をギュッと噛んだ。
景の方は見れずに、視線を下に落とす。
「ええ、何かしら?」
お母様もお父様の隣に座って、景の事をじっと見る。
冷や汗をかきまくっているのを誤魔化すように、手のひらを擦り合わせた。
逃げ出したい。
でも大丈夫。
いや、やっぱ逃げ出したい。
何度も交互にぐるぐるさせていると、景ははっきりと告げた。
「修介と、一緒に住みたいんだ」
「うん、別にいいよ」
早っ。
あまりにも早すぎるお父様の返事にギョッとする。
それはお母様も同じだったようで、すぐさまお父様の顔を覗き込んだ。
「ちょっとあなた。適当に言わないでよ。えっと、一緒に住むってどこに?」
「まだ決めてない。修介の就職が決まったらマンションを出ようと思ってる」
「それで、どこかに引っ越すって事?」
「うん。二人で」
景は真っ直ぐに見据えて頷いた。
その言い方で何かを悟ったのか、景の両親は互いの顔を見合わせていた。
俺の方にも視線が痛いほど突き刺さってくる。
とてもじゃないけど目が見れなかった。鼓動が早くなって、瞬きも多くなる。
そんな時だった。
俺の手の上に景の手が被さり、そのまま恋人繋ぎをされて、見せつけるように肩の位置まで高く上げられた。
「驚かせちゃうかもしれないけど、付き合ってるんだ。僕たち」
取り敢えず名乗ってぺこりとお辞儀をした。
「あぁ初めまして。今日は景と遊んでいたの?」
「あ、はい」
お父様はさっきのお母様のように、俺に当たり障りの無い質問をしていき、それに俺は答えていく。
ちょっと意外だ。
お父様、どんな怖い人かと想像してたけど、お母様同様天使のように優しそうで和やかな人だ。
そうか、この優しい二人からこの優しい変態が生まれたのか……
俺との会話が途切れたところで、お父様は今度は景の方に視線を向けた。
「景、久しぶりだねぇ」
「うん」
「この間、一人で景の映画観に行って恥ずかしかったよ。周りみんな若い女の子ばっかりで、こんなおじさん一人もいないんだから。景の役見て思ったけど、あんな高校生、普通いないよねぇ! なんであんな不良なのに大人しく授業受けちゃってるんだろうね。ちょっとリアリティーが無いよね!」
「そうだね」
「でもあの女の子は可愛かったねぇー。倉田さんって言ったっけ?」
「うん」
「演技はまだこれからって感じだったねぇ。でも父さん、あの子はダイヤの原石だと思うよ! 磨いていけば将来必ずトップスターになれるんじゃないかって僕は思うんだ!」
「そうだね」
お父様は熱く語るのに、景はさほど興味が無さそうに相槌を打っていく。
あぁ、藤澤家の中身って実はこうなのか。
ひたすらひょうきんに話続けるお父様をじっと見つめていたら、苦笑したお母様が話を遮るように茶飲みのコップをテーブルに置いた。
「お父さん。お友達の前でそんな話してないで。ごめんなさいね、お父さんいつもこうで」
「あ、いえ」
「景の一番のファンだからねぇ、僕は」
お父様はそう言ってお茶を一口飲む。
景とお父様を交互に見ると、どちらも嬉しそうに微笑んでいた。
それを見て思った。
きっと景は、言葉には出さなくてもお父様の事、信頼しきってるんだろうな。
だから景はさっき「大丈夫」って言ったのかも。
なんだかそういうのいいな。じんわり胸があったかくなった。
「それで、二人に話があるんだ」
景はいきなり言うから、俺は唇をギュッと噛んだ。
景の方は見れずに、視線を下に落とす。
「ええ、何かしら?」
お母様もお父様の隣に座って、景の事をじっと見る。
冷や汗をかきまくっているのを誤魔化すように、手のひらを擦り合わせた。
逃げ出したい。
でも大丈夫。
いや、やっぱ逃げ出したい。
何度も交互にぐるぐるさせていると、景ははっきりと告げた。
「修介と、一緒に住みたいんだ」
「うん、別にいいよ」
早っ。
あまりにも早すぎるお父様の返事にギョッとする。
それはお母様も同じだったようで、すぐさまお父様の顔を覗き込んだ。
「ちょっとあなた。適当に言わないでよ。えっと、一緒に住むってどこに?」
「まだ決めてない。修介の就職が決まったらマンションを出ようと思ってる」
「それで、どこかに引っ越すって事?」
「うん。二人で」
景は真っ直ぐに見据えて頷いた。
その言い方で何かを悟ったのか、景の両親は互いの顔を見合わせていた。
俺の方にも視線が痛いほど突き刺さってくる。
とてもじゃないけど目が見れなかった。鼓動が早くなって、瞬きも多くなる。
そんな時だった。
俺の手の上に景の手が被さり、そのまま恋人繋ぎをされて、見せつけるように肩の位置まで高く上げられた。
「驚かせちゃうかもしれないけど、付き合ってるんだ。僕たち」
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