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第393話
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「だから大丈夫だって言ったじゃん。意外と他人の事なんて、そこまで見てないんだって」
景は食後の紅茶を飲みながら、俺に笑いかけた。
最近、俺の家の近くのショッピングモールの中に、新しくパンケーキ屋さんがオープンした。テレビでも取り上げられるくらいの人気のお店らしく、ずっと気になっていた。
景と食べてみたいなぁ、と電話で何気なく言ったら、「じゃあ、行こうよ」とあっさり返事をしてもらえて、今日、念願叶ってここに来ることが出来た。
ランチの時間はそこそこ混みあっているから、景だってバレたら大変な事になるんじゃないかと思って冷や冷やしていたけど、周りの人は気づいていないのか、それとも遠慮して話しかけてこないだけなのか、今のところ普通にデートできている。
バレずにデートできているのは、景のオーラの消し方が上手なんだと思うけど、この人のおかげでもあるんじゃないかと思い、俺は隣に座る人に視線を移した。
「いやー、お前がまさかこんな田舎出身で、こんな平日の真っ昼間にいるとは誰も思わねーだろ。しかもこんなショッピングモールの、飲食店街に」
俺の隣に座る翔平は、ケラケラ笑いながらアイスコーヒーをずずっとストローで吸った。
朝、偶然にも翔平から俺に電話が掛かってきた。
話があるから会えないか? と言われて、今日は景とデートだから会えないと言ったのにも関わらず、なぜか翔平は俺の家に押し掛けに来てしまったのだ。
「翔平。それ飲み終わったら、さっさと帰ってよね」
景は翔平に冷たい視線を送る。
景はお昼前、俺のアパートに迎えに来てくれた。
部屋で待っていたのは俺だけじゃなかったって認識した時から少々機嫌が悪い。
車の中でも「せっかくのデートなのに」とブツブツ言いながら煙草を吸っていた。
俺はホットコーヒーを飲みながら、景にぶつくさ言われて唇を尖らせている翔平に尋ねてみた。
「そういえば翔平、電話で言っとった話ってなんなん?」
「あぁ、それね。俺、就職決まったー」
「えぇ!」
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