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第380話
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「ふーん。で、朝まで詩音の家で寝てたと」
「はい」
俺は景のマンションに来て早々、そうしろと言われた訳ではないけれど、リビングの床に自ら正座して俯きながら言い訳をしている。
景はというと、ソファーに頬杖をつきながら俺を見下ろしていた。
「ったく、みんなして悪酔いしすぎなんだよ。修介も修介だよ。僕の事散々誘っておきながら、タケなんかにフラフラついてっちゃってさ」
「えっ……?! 俺、誘ってたん?」
「それも覚えてないの?」
「……」
正直言って全く覚えていない。
景は呆れたように溜息を吐いた。
「でも、詩音の家にいたって分かったら安心したよ。僕一人で色々と考えちゃって、本当に心配だったんだから」
「えっ、色々って?」
「例えばー……キャバクラに連れてかれて、女の子とイチャイチャしてたらどうしようとか?」
「えっ!」
「酔った勢いで、乱行パーティでもしちゃってたらどうしようとか?」
「そっ、そんな事する訳ないやんかっ!」
俺は必死に両手をブンブン振って、目を見開いて否定する。
「僕、寂しかったな。修介の事すぐにでも可愛がりたかったのに、いなくなったって分かったあの時の気持ち……思い出したくもない……」
明後日の方向を薄目で見ながら言われた。
まだ怒鳴られた方がマシなのに、景の気持ちを思うだけで申し訳なくて涙目になってしまう。
「あ、本当に……ごめんなさい……」
叱られた子供のようにしゅんとして顔が上げられないでいると、景は組んでいた足を正してソファーから降り、座って俺の膝の上に手を重ねてきて顔を傾けてニコリとした。
「嘘だよ。ごめんね、ちょっと虐めたくなっちゃって。もういいよ。一人にさせちゃった僕も悪いんだし。今回はお互い様って事で」
「えっ……許してくれるん?」
「許すも何も、元話と言えばタケが悪いんだから。あいつにまた今度お説教しなくちゃね」
「景……!」
やっぱり、景は天使だ。
エッチモードの景は俺に意地悪な事ばっかりするけど、普段喧嘩するといつも先に謝ってくるし、優しい言葉を俺にくれる。
景みたいな人が俺の恋人で、本当に良かった。
「その代わり、ずっと会えなかった分、沢山可愛がるからね……覚悟して」
そう言うと景は顔をゆっくりと近づけてくる。
景の唇を間近で見た途端、朝方の桜理さんとのキスを思い出してしまった。
俺は無意識のうちに身体を少し後ろへ倒し、顔を伏せてしまう。
その事に気付いたのは、俺よりも景の方が先だった。
景は少し触れるだけのキスをした後、すぐに顔を上げた。
「何? なんで嫌がるの?」
「えっ?」
顔を覗き込まれる。
景の驚きの表情に何もかも見透かれそうで、手に汗を握り、かぶりを振った。
「嫌がってなんかないで?」
「嘘。今、ちょっと逃げたでしょ身体?」
「へっ? 逃げてなんか」
「じゃあ、ちゃんと僕の目を見てよ」
そう言われた俺は、慌てて逸らしていた視線の先を景に合わせた。
途端に身体が熱くなり、動けなくなってしまう。
しばらく景は俺の心の中を覗くように見つめると、右手で俺の後頭部を包み込み、口付けをした。
今度はいつものように出来た。
舌を入れられ、俺もそれに反応する。
水っぽい音が脳内を刺激されて、ふわふわとした気分になってくる。
ずっとその気分を味わっていたかったのに、途中で景の方から唇を離されてしまった。
そして景は呟いた。
「なーんか怪しいなぁ……」
「はい」
俺は景のマンションに来て早々、そうしろと言われた訳ではないけれど、リビングの床に自ら正座して俯きながら言い訳をしている。
景はというと、ソファーに頬杖をつきながら俺を見下ろしていた。
「ったく、みんなして悪酔いしすぎなんだよ。修介も修介だよ。僕の事散々誘っておきながら、タケなんかにフラフラついてっちゃってさ」
「えっ……?! 俺、誘ってたん?」
「それも覚えてないの?」
「……」
正直言って全く覚えていない。
景は呆れたように溜息を吐いた。
「でも、詩音の家にいたって分かったら安心したよ。僕一人で色々と考えちゃって、本当に心配だったんだから」
「えっ、色々って?」
「例えばー……キャバクラに連れてかれて、女の子とイチャイチャしてたらどうしようとか?」
「えっ!」
「酔った勢いで、乱行パーティでもしちゃってたらどうしようとか?」
「そっ、そんな事する訳ないやんかっ!」
俺は必死に両手をブンブン振って、目を見開いて否定する。
「僕、寂しかったな。修介の事すぐにでも可愛がりたかったのに、いなくなったって分かったあの時の気持ち……思い出したくもない……」
明後日の方向を薄目で見ながら言われた。
まだ怒鳴られた方がマシなのに、景の気持ちを思うだけで申し訳なくて涙目になってしまう。
「あ、本当に……ごめんなさい……」
叱られた子供のようにしゅんとして顔が上げられないでいると、景は組んでいた足を正してソファーから降り、座って俺の膝の上に手を重ねてきて顔を傾けてニコリとした。
「嘘だよ。ごめんね、ちょっと虐めたくなっちゃって。もういいよ。一人にさせちゃった僕も悪いんだし。今回はお互い様って事で」
「えっ……許してくれるん?」
「許すも何も、元話と言えばタケが悪いんだから。あいつにまた今度お説教しなくちゃね」
「景……!」
やっぱり、景は天使だ。
エッチモードの景は俺に意地悪な事ばっかりするけど、普段喧嘩するといつも先に謝ってくるし、優しい言葉を俺にくれる。
景みたいな人が俺の恋人で、本当に良かった。
「その代わり、ずっと会えなかった分、沢山可愛がるからね……覚悟して」
そう言うと景は顔をゆっくりと近づけてくる。
景の唇を間近で見た途端、朝方の桜理さんとのキスを思い出してしまった。
俺は無意識のうちに身体を少し後ろへ倒し、顔を伏せてしまう。
その事に気付いたのは、俺よりも景の方が先だった。
景は少し触れるだけのキスをした後、すぐに顔を上げた。
「何? なんで嫌がるの?」
「えっ?」
顔を覗き込まれる。
景の驚きの表情に何もかも見透かれそうで、手に汗を握り、かぶりを振った。
「嫌がってなんかないで?」
「嘘。今、ちょっと逃げたでしょ身体?」
「へっ? 逃げてなんか」
「じゃあ、ちゃんと僕の目を見てよ」
そう言われた俺は、慌てて逸らしていた視線の先を景に合わせた。
途端に身体が熱くなり、動けなくなってしまう。
しばらく景は俺の心の中を覗くように見つめると、右手で俺の後頭部を包み込み、口付けをした。
今度はいつものように出来た。
舌を入れられ、俺もそれに反応する。
水っぽい音が脳内を刺激されて、ふわふわとした気分になってくる。
ずっとその気分を味わっていたかったのに、途中で景の方から唇を離されてしまった。
そして景は呟いた。
「なーんか怪しいなぁ……」
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