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第371話
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徐々に白んでくる空を見ながらしばらく無言で飲んでいたけど、景に訊きたい事があったから、座りながら身体を景の方に向けた。
「あの、景」
「何?」
「景に、訊きたい事があんねん」
「訊きたい事? 何?」
景は優しく微笑んで、カップを持つ手を膝の上において、俺の顔を覗き込んだ。
「俺に、秘密にしてる事、ある?」
詩音くんに言われた時から、気になっていた。
親友でさえも知らない、秘密。
景は詩音くんにだけ話してくれたって、詩音くんは言っていた。
もしかしたら適当に言っただけなのかもしれないけど、あの時の詩音くんの余裕の表情を見る限り、嘘だとは思えなかった。
景は考え込むような表情をさせてから、フッと笑った。
「ないよ。修介には全部話してるつもり」
それを聞いて、ちょっと落ち込んだ。
やっぱり、俺には話せない事があるんだ……。
いや、こうやって本音を言わないのが二人の仲をこじらせる原因になるんだ。
何でも言おうって約束したんだ。
俺は思い切って言ってみる事にした。
「俺、昨日、詩音くんに言われてん。俺にも親友にも話してないような秘密を、景は詩音くんだけに話してくれたって」
「え?」
「それって何なん? 俺、何言われても大丈夫やで。話してくれへんかな?」
何があっても、景の味方だから。
そう言って、俺は景が口を開くのを待った。
景はカップを見つめた後、あぁ、としみじみとしてから「実は」と声を発した。
「実は僕……」
生唾をごくりと飲み込む。
景は顔を上げて、俺と視線を合わせてハッキリと告げた。
「高所恐怖症なんだ」
「は?」
高所、恐怖症?
俺は目が点になった。
「駄目なんだよね、どうしても。脚がすくんじゃうっていうかさ」
「いや、あの、景」
額に手を当てて、うーんと唸る。
詩音くんはあたかも重要な事のように、高圧的な態度で俺に物申していたけれど、これが景の秘密?
「何?」
「なんで、そんな事秘密にしてるん?」
「秘密にしてるっていうか、ただ話さなかっただけだよ。詩音にはなんとなく言ってみただけ。その時酔っ払ってて。それに、修介の前ではカッコイイ男でいたいじゃない」
「アホや……」
俺は結構悩んでいたのに。
また頭を抱えると、景は俺の肩をポンポンと叩いた。
「ごめん。でもこれからは、カッコ悪くても何でも、修介には話していくよ。だから修介も、僕にちゃんと話してよね。何があっても、どんな時でも、話聞くからね」
「う、うん……」
景の顔が自然と降りてきたから、俺も自然と目を閉じて景の唇を待った。
ちゅっ、と唇が触れ合ったところで、俺はハッとして目を見開き、片手で景の肩を押して離れた。
「景! ここ外やで、外!」
「いいじゃん。誰も見てないよ」
「良くないわ! ていうか前から思っとったけど、景は本当に芸能人だっていう自覚あるん? ヒヤヒヤしてんの、俺だけやないか!」
「修介が可愛いのがいけないんだよ」
景の体にパンチを食らわせると、ようやく俺から離れてくれた。
コーヒーを飲み終えてからアパートに戻って少ししたら、景は車に乗り込んで、東京へと帰って行った。
見送りをした後部屋に入って、景から貰った指輪を嵌めた。
たくさん愛し合ったベッドの上で、ほのかに香る景の甘いにおいを嗅ぎながら幸せな気分で意識を手放した。
「あの、景」
「何?」
「景に、訊きたい事があんねん」
「訊きたい事? 何?」
景は優しく微笑んで、カップを持つ手を膝の上において、俺の顔を覗き込んだ。
「俺に、秘密にしてる事、ある?」
詩音くんに言われた時から、気になっていた。
親友でさえも知らない、秘密。
景は詩音くんにだけ話してくれたって、詩音くんは言っていた。
もしかしたら適当に言っただけなのかもしれないけど、あの時の詩音くんの余裕の表情を見る限り、嘘だとは思えなかった。
景は考え込むような表情をさせてから、フッと笑った。
「ないよ。修介には全部話してるつもり」
それを聞いて、ちょっと落ち込んだ。
やっぱり、俺には話せない事があるんだ……。
いや、こうやって本音を言わないのが二人の仲をこじらせる原因になるんだ。
何でも言おうって約束したんだ。
俺は思い切って言ってみる事にした。
「俺、昨日、詩音くんに言われてん。俺にも親友にも話してないような秘密を、景は詩音くんだけに話してくれたって」
「え?」
「それって何なん? 俺、何言われても大丈夫やで。話してくれへんかな?」
何があっても、景の味方だから。
そう言って、俺は景が口を開くのを待った。
景はカップを見つめた後、あぁ、としみじみとしてから「実は」と声を発した。
「実は僕……」
生唾をごくりと飲み込む。
景は顔を上げて、俺と視線を合わせてハッキリと告げた。
「高所恐怖症なんだ」
「は?」
高所、恐怖症?
俺は目が点になった。
「駄目なんだよね、どうしても。脚がすくんじゃうっていうかさ」
「いや、あの、景」
額に手を当てて、うーんと唸る。
詩音くんはあたかも重要な事のように、高圧的な態度で俺に物申していたけれど、これが景の秘密?
「何?」
「なんで、そんな事秘密にしてるん?」
「秘密にしてるっていうか、ただ話さなかっただけだよ。詩音にはなんとなく言ってみただけ。その時酔っ払ってて。それに、修介の前ではカッコイイ男でいたいじゃない」
「アホや……」
俺は結構悩んでいたのに。
また頭を抱えると、景は俺の肩をポンポンと叩いた。
「ごめん。でもこれからは、カッコ悪くても何でも、修介には話していくよ。だから修介も、僕にちゃんと話してよね。何があっても、どんな時でも、話聞くからね」
「う、うん……」
景の顔が自然と降りてきたから、俺も自然と目を閉じて景の唇を待った。
ちゅっ、と唇が触れ合ったところで、俺はハッとして目を見開き、片手で景の肩を押して離れた。
「景! ここ外やで、外!」
「いいじゃん。誰も見てないよ」
「良くないわ! ていうか前から思っとったけど、景は本当に芸能人だっていう自覚あるん? ヒヤヒヤしてんの、俺だけやないか!」
「修介が可愛いのがいけないんだよ」
景の体にパンチを食らわせると、ようやく俺から離れてくれた。
コーヒーを飲み終えてからアパートに戻って少ししたら、景は車に乗り込んで、東京へと帰って行った。
見送りをした後部屋に入って、景から貰った指輪を嵌めた。
たくさん愛し合ったベッドの上で、ほのかに香る景の甘いにおいを嗅ぎながら幸せな気分で意識を手放した。
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