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第368話
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「景……」
「何?」
「激しすぎ」
「ごめん」
「いま何時?」
「分かんない」
俺たちは片手を繋ぎながら、ベッドの上で寝転がり天井を見つめていた。
随分と長い時間ベッドの上にいるから、今が夜中なのか、朝方なのか分からない。
薄暗い風景の中、俺たちはしばらく動かなかった。
すごく、満たされた。
あんなに不安になってたのが嘘のように、カチカチに凍っていた心が、景の暖かさだけで一気に溶けて外へと流れ出た感じだ。
「ありがと……」
「何が?」
景はおもむろに聞いてくる。
頭の中で考えてるだけだと思ってたけど、どうやら感謝の気持ちを口に出していたようだ。
ちょっと可笑しくなって、クスッと笑ってかぶりを振った。
「ううん、なんも」
「詩音がさ、今度、修介に会ってちゃんと謝りたいって言ってたよ」
ハッとして景の方を向くと、景も顔を横に向けて、俺の頭を撫でてくれた。
「詩音くんが?」
「僕が弱ってる姿見て、不安でつい修介にカッとなって言っちゃったって。恥ずかしい事したって、反省してた。今度、タケや桜理達も交えてみんなで飲む機会作るから、会ってあげてくれるかな?」
「……別に、謝らんでも、もう気にしとらんから大丈夫やのに」
でも良かった。
多分、二度と詩音くんには会えないだろうなとは思っていたから。
「伝わった? 僕の気持ち」
「うん」
「つい気持ちが高ぶって無理させちゃったけど。僕がこうやってしてあげたいって思うのは、君だけだよ」
「……うん。ありがと」
俺たちはまたキスをした。何度も何度も。
嬉しくて、やっぱり堪えきれずに涙が溢れた。
本当に泣き虫だねって、なじられたけど、やっぱりこんな景が大好きだ。
俺は、ずーーっと一緒にいると心に誓う。
この変態な人のとなりに。
ベッドから降りて、冷蔵庫のドアを開けた途端、俺は「あっ」と声を出した。
「どうしたの?」
「水、無かったんやった」
いつもなら一本は必ず入れてあるけど、昨日いろいろとあったから、そこまで頭が回らなかったのだ。
「じゃあ、一緒に買いに行く?」
「え、ええの? 景、寝た方がええんやないの?」
「ううん。今日はもう寝ないで仕事行くよ。そのまま散歩でもしようか」
景はそう誘ってくれた。
俺は悪いな、と思いながらも、景の好意に甘えて頷いてから、二人で軽くシャワーを浴びて、それぞれ床に散らばっていた洋服を身に着けてアパートを出た。
スマホで時間を確認すると、朝の四時だった。
こんな時間に外に出たのは久し振りだ。
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