365 / 454
第364話
しおりを挟む
「あっ……景、久し振り」
かろうじてそう言うと、景ははっきりとした口調で、いつもの低音を響かせた。
「修介はさ」
「……何?」
「これからも僕と一緒にいてくれるんだよね?」
「え?」
唐突な質問だったから、顔を上げて景と視線を合わせた。
何かが吹っ切れたのか、あの日の寂しげな表情ではなく、強気で、一点も曇りがない目で微笑んでいる。
「やっぱり大人しく、僕に守られててよ」
「はは、なんやそれ」
「修介の一番は、僕でしょう?」
「……当たり前やんか」
「直接謝りたかったんだ。疑ったり、嫉妬したりして、まるで修介の事を信用してないみたいだったね。もう、そういうのやめるよ。本当にごめん」
景はそう言って、また熱いキスを落としてから身体を離した。
「ううん。俺もごめん。景が嫌だなと思う事はもう、せーへんようにする……」
「莉奈ちゃん。さっき会ってきたよ」
──会ってきた?
その言葉に目を丸くする。
「は? 莉奈に?」
「修介に連絡しないつもりなら、私にくださいって言われた」
「えっ! 莉奈、そんな事言うたんか?!」
「やだって言ったよ。誰にもあげるつもりは無いからねって」
顔が火照っていくのが分かった。
そんな事を言っただなんて、恥ずかしくてこの先、莉奈と顔を合わせられないではないか。
でも、景がはっきりそうやって言ってくれただなんて、やっぱり嬉しかった。
「不安にならなくていいのにって僕が修介にいつも言ってたくせに、当の本人が不安で信じられなくなっちゃってさ……バカだったよ。これからはもう、ウジウジ悩んだりしない。ずっと一緒にいてくれる? 五年後も十年後も、僕の隣に」
十年後もって……馬鹿じゃないの?
それって結構長いと思うんだけど。壮大だな。
それって軽くプロポーズしてるみたいになってるけど。
「景ってホンマ……」
鼻の奥がツンとして、言葉に詰まる。
景から視線を逸らした。
思えばこの人は、はじめて会った時からいろいろと変わっていた。
いきなり頭を撫でてきたり、電話してきたり、この家に突然押しかけて来たり。
景はちゃんと、詩音くんじゃなく、他の誰でもなく、こんな俺の事を選んでくれた。
愛されてるって事が嬉しくて、俺は涙の雫を弾けさせて笑った。
「アホやなぁ……」
「でしょ。自分でもびっくりするくらい、君に夢中なんだ」
「……知ってる」
今度は俺の方が景の服を掴んで、背伸びをして景にキスのおねだりをした。
景はそれにちゃんと応えてくれる。
何度も角度を変えてキスをして、お互い熱い息を吐き出すと、手を繋いだままソファーベッドに移動した。
かろうじてそう言うと、景ははっきりとした口調で、いつもの低音を響かせた。
「修介はさ」
「……何?」
「これからも僕と一緒にいてくれるんだよね?」
「え?」
唐突な質問だったから、顔を上げて景と視線を合わせた。
何かが吹っ切れたのか、あの日の寂しげな表情ではなく、強気で、一点も曇りがない目で微笑んでいる。
「やっぱり大人しく、僕に守られててよ」
「はは、なんやそれ」
「修介の一番は、僕でしょう?」
「……当たり前やんか」
「直接謝りたかったんだ。疑ったり、嫉妬したりして、まるで修介の事を信用してないみたいだったね。もう、そういうのやめるよ。本当にごめん」
景はそう言って、また熱いキスを落としてから身体を離した。
「ううん。俺もごめん。景が嫌だなと思う事はもう、せーへんようにする……」
「莉奈ちゃん。さっき会ってきたよ」
──会ってきた?
その言葉に目を丸くする。
「は? 莉奈に?」
「修介に連絡しないつもりなら、私にくださいって言われた」
「えっ! 莉奈、そんな事言うたんか?!」
「やだって言ったよ。誰にもあげるつもりは無いからねって」
顔が火照っていくのが分かった。
そんな事を言っただなんて、恥ずかしくてこの先、莉奈と顔を合わせられないではないか。
でも、景がはっきりそうやって言ってくれただなんて、やっぱり嬉しかった。
「不安にならなくていいのにって僕が修介にいつも言ってたくせに、当の本人が不安で信じられなくなっちゃってさ……バカだったよ。これからはもう、ウジウジ悩んだりしない。ずっと一緒にいてくれる? 五年後も十年後も、僕の隣に」
十年後もって……馬鹿じゃないの?
それって結構長いと思うんだけど。壮大だな。
それって軽くプロポーズしてるみたいになってるけど。
「景ってホンマ……」
鼻の奥がツンとして、言葉に詰まる。
景から視線を逸らした。
思えばこの人は、はじめて会った時からいろいろと変わっていた。
いきなり頭を撫でてきたり、電話してきたり、この家に突然押しかけて来たり。
景はちゃんと、詩音くんじゃなく、他の誰でもなく、こんな俺の事を選んでくれた。
愛されてるって事が嬉しくて、俺は涙の雫を弾けさせて笑った。
「アホやなぁ……」
「でしょ。自分でもびっくりするくらい、君に夢中なんだ」
「……知ってる」
今度は俺の方が景の服を掴んで、背伸びをして景にキスのおねだりをした。
景はそれにちゃんと応えてくれる。
何度も角度を変えてキスをして、お互い熱い息を吐き出すと、手を繋いだままソファーベッドに移動した。
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる