363 / 454
第362話 side景
しおりを挟む
「暴力的な彼氏とは、続いてるの?」
僕が尋ねると、莉奈ちゃんは目を丸くした。
「いえ、別れました」
「で、今は、修介の事が好き?」
「……」
「僕に話があるっていうのは、修介に連絡しろっていう事だけ? 本音はそうじゃないんじゃないの?好きなんでしょう? 修介の事」
「好きです、けど……」
「僕にどうして欲しいの? 思ってる事、はっきり言っていいよ」
莉奈ちゃんは一瞬戸惑ったけれど、強い目になって僕に告げた。
「もう連絡しないつもりなら、北村さんの事、私にください!」
「やだね」
莉奈ちゃんは勢いよく頭を下げたけど、僕は間髪入れず低い声で返事をした。
「……はやっ!」
莉奈ちゃんは頭を上げたかと思ったら吹き出して無邪気に笑うから、つられて僕も笑ってしまった。
「……なんで笑うの」
「分かってます。藤澤さんに勝てるなんて、これっぽっちも思ってませんから」
「修介は僕のだよ。あげるつもりはないよ、誰にも。それを伝えに来たんだ」
「ありがとうございます。藤澤さんの気持ち、ちゃんと聞きたかったんです。色々迷惑かけてすみませんでした。私、頑張って諦めます、北村さんの事。もう連絡もしませんし、会いに行ったりもしません。バイト、もう辞めることにしたんです」
莉奈ちゃんはなんだかスッキリとした表情だった。
僕の心の中も途端に晴れ渡っていくのが分かった。
「あの、本当に、お二人お似合いです。付き合ってるって事は誰にも言ってませんから。末長く、お幸せに」
僕はその言葉を聞いて拍子抜けした。
これくらいの歳の女の子だったら、周りに言いふらして、ある事無い事噂話をするのが大好きなはずなのに。
もしかしたら僕を安心させる為の口から出まかせなのかもしれないけど、今の僕は不思議とその言葉をすんなり素直に受け入れられた。
「修介の周りの子はみんな、いい子ばかりでね……」
僕は嬉しくて、修介にしてる時みたいに莉奈ちゃんの髪の毛を触って摘んで毛先へ流した。
カッと莉奈ちゃんの顔が赤く強張ったところで、ふと我に返って慌てて手を離した。
「あぁ、ごめん。こんなところ修介に見られたら怒られちゃうな」
莉奈ちゃんは恥ずかしそうに何回も瞬きをして下を向いたけど、またぷっと吹き出して笑った。
「なんだか似てますよね、藤澤さんと北村さん。見た目は全然違いますけど、柔らかい雰囲気とか、表情とか。だから気が合って付き合ってるんでしょうけど」
「そう? 似てきたのかな。僕が、修介に」
「そうかもしれませんね。藤澤さん、前にテレビで見た時はちょっと強面なイメージでしたけど、今はものすごく優しいですもん」
「修介に感謝しなくちゃね」
僕たちは不思議な縁だけど、この出会いは偶然ではないと思った。
少しだけ話した後に別れて、僕は修介の家へ車を走らせた。
僕が尋ねると、莉奈ちゃんは目を丸くした。
「いえ、別れました」
「で、今は、修介の事が好き?」
「……」
「僕に話があるっていうのは、修介に連絡しろっていう事だけ? 本音はそうじゃないんじゃないの?好きなんでしょう? 修介の事」
「好きです、けど……」
「僕にどうして欲しいの? 思ってる事、はっきり言っていいよ」
莉奈ちゃんは一瞬戸惑ったけれど、強い目になって僕に告げた。
「もう連絡しないつもりなら、北村さんの事、私にください!」
「やだね」
莉奈ちゃんは勢いよく頭を下げたけど、僕は間髪入れず低い声で返事をした。
「……はやっ!」
莉奈ちゃんは頭を上げたかと思ったら吹き出して無邪気に笑うから、つられて僕も笑ってしまった。
「……なんで笑うの」
「分かってます。藤澤さんに勝てるなんて、これっぽっちも思ってませんから」
「修介は僕のだよ。あげるつもりはないよ、誰にも。それを伝えに来たんだ」
「ありがとうございます。藤澤さんの気持ち、ちゃんと聞きたかったんです。色々迷惑かけてすみませんでした。私、頑張って諦めます、北村さんの事。もう連絡もしませんし、会いに行ったりもしません。バイト、もう辞めることにしたんです」
莉奈ちゃんはなんだかスッキリとした表情だった。
僕の心の中も途端に晴れ渡っていくのが分かった。
「あの、本当に、お二人お似合いです。付き合ってるって事は誰にも言ってませんから。末長く、お幸せに」
僕はその言葉を聞いて拍子抜けした。
これくらいの歳の女の子だったら、周りに言いふらして、ある事無い事噂話をするのが大好きなはずなのに。
もしかしたら僕を安心させる為の口から出まかせなのかもしれないけど、今の僕は不思議とその言葉をすんなり素直に受け入れられた。
「修介の周りの子はみんな、いい子ばかりでね……」
僕は嬉しくて、修介にしてる時みたいに莉奈ちゃんの髪の毛を触って摘んで毛先へ流した。
カッと莉奈ちゃんの顔が赤く強張ったところで、ふと我に返って慌てて手を離した。
「あぁ、ごめん。こんなところ修介に見られたら怒られちゃうな」
莉奈ちゃんは恥ずかしそうに何回も瞬きをして下を向いたけど、またぷっと吹き出して笑った。
「なんだか似てますよね、藤澤さんと北村さん。見た目は全然違いますけど、柔らかい雰囲気とか、表情とか。だから気が合って付き合ってるんでしょうけど」
「そう? 似てきたのかな。僕が、修介に」
「そうかもしれませんね。藤澤さん、前にテレビで見た時はちょっと強面なイメージでしたけど、今はものすごく優しいですもん」
「修介に感謝しなくちゃね」
僕たちは不思議な縁だけど、この出会いは偶然ではないと思った。
少しだけ話した後に別れて、僕は修介の家へ車を走らせた。
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる