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第361話 side景
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千葉までやってきた僕は、修介のいるアパートとは違う場所に車を停めてからエンジンを切った。
時刻を確認すると、予定していた時間よりも大分早く着いた事が分かる。
一服して待っていようとタバコを取り出した時、ふと後ろから人が歩いて来るのがバックミラー越しに見えたから、ポケットの中で触れたライターを撫でて、運転席から降りて外に出た。
一瞬目が合ったけれど、彼女はすぐに下を向いて、どうしたらいいのか分からないと言った表情だった。
僕は彼女に向けてニコリと笑顔を作った。
「ごめん、こんな夜遅くに。高宮さんだよね? すぐに終わるからちょっとだけ乗ってくれる?」
莉奈ちゃんは頷くと、車の助手席に近づいて、おずおずとドアを開けてから中に潜り込んでドアを閉めた。
それを確認してから、僕も運転席に乗り込んだ。
莉奈ちゃんはなかなかこちらを見ようとしない。
もしかして僕に怒られるとでも思ってるんだろうか。
とりあえず緊張を解してあげようと、僕はなるべく明るく声を発した。
「こんばんは」
「あ、はい、こんばんは」
挨拶は返してくれたけど、やっぱりすぐに視線を逸らされてしまった。
「いきなり呼び出しちゃって、本当にごめん」
翔平に頼んで、出てきてもらったのだ。
断られるかと思ったけれど、翔平曰く、莉奈ちゃんは僕と話をするのをあっさりと受け入れてくれたらしい。
どうやら、莉奈ちゃんの方も話があるらしい、という事も聞いた。
莉奈ちゃんはかぶりを振ってから、ようやくこちらに顔を向けてくれた。
「いや、それは大丈夫です、全然。私も、藤澤 景さんとお話したいって思ってたので」
「お話したいって……僕が俳優だから、っていう意味じゃないよね?」
「はい……北村さんの事で」
その言い方だと、なんとなくだけど、この子は僕と修介の関係を知ってるんじゃないかと思った。
僕は身体を莉奈ちゃんの方に向けて、ハンドルに片肘をつく。
「聞いた? 僕と修介がそういう関係だって事」
僕がフフッと笑うと、あからさまに赤くなって俯いてしまった。
初々しくて可愛い子だな。
初めて出会った時の修介を思い出す。
「そんなに緊張しないでよ。取って食べようって訳じゃないから」
「あ、はい。あの日、藤澤さんが帰った後、北村さんがその場で話してくれました」
「そう」
莉奈ちゃんは頷くと、顔を上げてまた僕と目を合わせた。
「北村さん、あの日からなんだか落ち込んでるんです。藤澤さんとは上手くやってるって何度も言われたんですけど、私はずっと、それは嘘だと思ってました。矢口さんに、実は藤澤さんは北村さんからの電話に出てないらしいっていうのをさっき聞いて」
「......」
「あの、北村さんに連絡して下さい。私のせいでこんな風になっちゃったんなら謝ります。本当にすみませんでした!」
莉奈ちゃんはそう言って頭を下げたまま、何も言わなかった。
僕が先程修介に連絡をしたという事を知らないのだろう。
修介の事が好きだから、修介の幸せを願っているんだろう。
時刻を確認すると、予定していた時間よりも大分早く着いた事が分かる。
一服して待っていようとタバコを取り出した時、ふと後ろから人が歩いて来るのがバックミラー越しに見えたから、ポケットの中で触れたライターを撫でて、運転席から降りて外に出た。
一瞬目が合ったけれど、彼女はすぐに下を向いて、どうしたらいいのか分からないと言った表情だった。
僕は彼女に向けてニコリと笑顔を作った。
「ごめん、こんな夜遅くに。高宮さんだよね? すぐに終わるからちょっとだけ乗ってくれる?」
莉奈ちゃんは頷くと、車の助手席に近づいて、おずおずとドアを開けてから中に潜り込んでドアを閉めた。
それを確認してから、僕も運転席に乗り込んだ。
莉奈ちゃんはなかなかこちらを見ようとしない。
もしかして僕に怒られるとでも思ってるんだろうか。
とりあえず緊張を解してあげようと、僕はなるべく明るく声を発した。
「こんばんは」
「あ、はい、こんばんは」
挨拶は返してくれたけど、やっぱりすぐに視線を逸らされてしまった。
「いきなり呼び出しちゃって、本当にごめん」
翔平に頼んで、出てきてもらったのだ。
断られるかと思ったけれど、翔平曰く、莉奈ちゃんは僕と話をするのをあっさりと受け入れてくれたらしい。
どうやら、莉奈ちゃんの方も話があるらしい、という事も聞いた。
莉奈ちゃんはかぶりを振ってから、ようやくこちらに顔を向けてくれた。
「いや、それは大丈夫です、全然。私も、藤澤 景さんとお話したいって思ってたので」
「お話したいって……僕が俳優だから、っていう意味じゃないよね?」
「はい……北村さんの事で」
その言い方だと、なんとなくだけど、この子は僕と修介の関係を知ってるんじゃないかと思った。
僕は身体を莉奈ちゃんの方に向けて、ハンドルに片肘をつく。
「聞いた? 僕と修介がそういう関係だって事」
僕がフフッと笑うと、あからさまに赤くなって俯いてしまった。
初々しくて可愛い子だな。
初めて出会った時の修介を思い出す。
「そんなに緊張しないでよ。取って食べようって訳じゃないから」
「あ、はい。あの日、藤澤さんが帰った後、北村さんがその場で話してくれました」
「そう」
莉奈ちゃんは頷くと、顔を上げてまた僕と目を合わせた。
「北村さん、あの日からなんだか落ち込んでるんです。藤澤さんとは上手くやってるって何度も言われたんですけど、私はずっと、それは嘘だと思ってました。矢口さんに、実は藤澤さんは北村さんからの電話に出てないらしいっていうのをさっき聞いて」
「......」
「あの、北村さんに連絡して下さい。私のせいでこんな風になっちゃったんなら謝ります。本当にすみませんでした!」
莉奈ちゃんはそう言って頭を下げたまま、何も言わなかった。
僕が先程修介に連絡をしたという事を知らないのだろう。
修介の事が好きだから、修介の幸せを願っているんだろう。
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