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第353話
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「はぁ。日高詩音ねぇ。話した事はねーけど、あいつそんな事言ったんだ」
「俺は、勝てるところなんて何も無い。自分勝手で、気が利かなくて、景の大変さも分かってあげられない。きっと詩音くんの言う通り、詩音くんの方が景の事、よく分かってるんだと思います」
どんどんとネガティブな言葉が口から漏れてしまう。
タケさんはそんな俺を見てまた笑った。
「で? 要するにー、景ちゃんが詩音を選ぶかもって、不安なの?」
「はい」
「馬鹿かよ修介!」
あははは、とあっけらかんと笑って身体を揺らしていた。
この人の明るさにはなんだか救われるけど、今の俺はつられて笑う事が出来なかった。
「そんな事、本当にあると思ってんのー?」
「お、思いたくないですけど、趣味だって合うみたいだし。景の秘密だって知ってるし。俺は、何もないんです。詩音くんに、勝てるとこなんて」
こんな事言って、本当に子供みたいで呆れるけど、さっき詩音くんに言われた言葉の数々が頭から離れなくて、グルグルしていた。
あんな凄い人に、俺みたいな奴なんてどうやったって太刀打ち出来ない。
「ほぉー」
和ませようとしているのか、タケさんは唇を尖らせて何回も頷いて目を見開いた。
そのまま腕組みをして、興味津々といった様子で俺に尋ねてくる。
「じゃあ、景ちゃんの隣にいるのは、自分じゃなくて詩音の方が相応しいとか思ってんの?」
「そ、そうじゃないですか……きっとみんなそう思ってます。見た目だって性格だって趣味だって、詩音くんの方が合ってるみたいだし」
「じゃあやめりゃあいいじゃん。景ちゃんなんて」
急に低く強い声を出されたから、ビクッと竦み上がった。
恐る恐る顔を上げると、タケさんは俺を冷たい目で見つめていた。
「そしたら楽になんじゃん。こうやって悩まなくてもいいし。辛いんだったら、先にこっちから振ってやりゃあいいじゃん?」
タケさんは両手をついて俺の顔を覗き込んでくる。
俺は身体を引いて後ろへ逃げるけど、ソファーがあってもうこれ以上は引けなかった。
「あの、タケさん……」
「振る勇気さえも無いんだったら、俺が手伝ってやろうか?」
「……手伝うって、何をですか?」
「俺とセックスしただなんて聞いたら、景ちゃん、もう誰も信じられなくなって、直ぐに別れられるんじゃない?」
セックス、という単語を聞いて、巡っていた血が止まったような気がした。
「あ」とタケさんが宙を見つめたかと思ったら、いきなり俺の両腕を手で掴んで口の端を上げ、視線を俺に移した。
「俺が挿れる側ね?」
「……冗談ですよね?」
「本気だよ。俺、修介だったら勃つ自信ある」
タケさんはニコッと微笑んだ後、俺の唇に顔を近づけて、Tシャツの中に手を忍ばせた。
「俺は、勝てるところなんて何も無い。自分勝手で、気が利かなくて、景の大変さも分かってあげられない。きっと詩音くんの言う通り、詩音くんの方が景の事、よく分かってるんだと思います」
どんどんとネガティブな言葉が口から漏れてしまう。
タケさんはそんな俺を見てまた笑った。
「で? 要するにー、景ちゃんが詩音を選ぶかもって、不安なの?」
「はい」
「馬鹿かよ修介!」
あははは、とあっけらかんと笑って身体を揺らしていた。
この人の明るさにはなんだか救われるけど、今の俺はつられて笑う事が出来なかった。
「そんな事、本当にあると思ってんのー?」
「お、思いたくないですけど、趣味だって合うみたいだし。景の秘密だって知ってるし。俺は、何もないんです。詩音くんに、勝てるとこなんて」
こんな事言って、本当に子供みたいで呆れるけど、さっき詩音くんに言われた言葉の数々が頭から離れなくて、グルグルしていた。
あんな凄い人に、俺みたいな奴なんてどうやったって太刀打ち出来ない。
「ほぉー」
和ませようとしているのか、タケさんは唇を尖らせて何回も頷いて目を見開いた。
そのまま腕組みをして、興味津々といった様子で俺に尋ねてくる。
「じゃあ、景ちゃんの隣にいるのは、自分じゃなくて詩音の方が相応しいとか思ってんの?」
「そ、そうじゃないですか……きっとみんなそう思ってます。見た目だって性格だって趣味だって、詩音くんの方が合ってるみたいだし」
「じゃあやめりゃあいいじゃん。景ちゃんなんて」
急に低く強い声を出されたから、ビクッと竦み上がった。
恐る恐る顔を上げると、タケさんは俺を冷たい目で見つめていた。
「そしたら楽になんじゃん。こうやって悩まなくてもいいし。辛いんだったら、先にこっちから振ってやりゃあいいじゃん?」
タケさんは両手をついて俺の顔を覗き込んでくる。
俺は身体を引いて後ろへ逃げるけど、ソファーがあってもうこれ以上は引けなかった。
「あの、タケさん……」
「振る勇気さえも無いんだったら、俺が手伝ってやろうか?」
「……手伝うって、何をですか?」
「俺とセックスしただなんて聞いたら、景ちゃん、もう誰も信じられなくなって、直ぐに別れられるんじゃない?」
セックス、という単語を聞いて、巡っていた血が止まったような気がした。
「あ」とタケさんが宙を見つめたかと思ったら、いきなり俺の両腕を手で掴んで口の端を上げ、視線を俺に移した。
「俺が挿れる側ね?」
「……冗談ですよね?」
「本気だよ。俺、修介だったら勃つ自信ある」
タケさんはニコッと微笑んだ後、俺の唇に顔を近づけて、Tシャツの中に手を忍ばせた。
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