リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
351 / 454

第350話

しおりを挟む
「えっ、えっ? 何言うて」
「俺、この気持ち、ずっと憧れと尊敬の気持ちだと思ってました。でも今回、藤澤さんと一緒に過ごしてみて、修介さんの事を聞かされる度、羨ましいっていう気持ちと、俺だったら藤澤さんにこんな思いさせないのにっていう気持ちが混在して、ようやく分かったんです」

 詩音くんは一呼吸して目を閉じた後、その瞼を持ち上げて俺を見下した。

「俺、藤澤さんが好きです。俺に譲ってくれませんか? 藤澤さんの事」

 頭を殴られたような衝撃が全身に伝わった。
 譲ってくれ?
 まるで、コンサートのチケットかなんかみたいに。
 この人に取り繕ったりするのはもうやめよう、と瞬時に思い、俺は息を大きく吸い込んだ。

「だ、ダメに決まっとるやろ!」

 たまらずに叫び声を上げたけど、詩音くんはそんな俺の様子に全く動じていなかった。

「趣味だって、俺の方が合いますよ。ダーツとか、ボルダリングとか。今度一緒に行く約束しましたし」
「だから、さっきから何言うて……っ」
「俺だったら、恋人の誕生日に例え何が起ころうとも、どんな手を使ってでもその日のうちに会いに飛んでいきますけどね」
「~~~!」

 そうやって言われてしまうと、何も反論出来なかった。
 莉奈との事で誕生日に会いに行かなかったのは全部俺が悪い。そんなの分かってる。
 何か言わなくちゃいけないのに、全く言葉が見つからなかった。

「あ、それに」

 詩音くんはまるで景のようにクスッと笑って言った。

「藤澤さんの秘密、この間、俺だけに教えてくれたんですよ? 修介さんにも、親友にも話していないような秘密を」

 秘密?
 秘密って、何?
 景は隠し事は嫌いなはずだから、なんでも話してくれているはずだ。
 それなのに、詩音くんだけには話したの? 俺には話してないの?

「それって、俺を信用してくれてるって事ですよね。修介さんよりも」

 嘘だ。そんなの。
 そうは思うけど、完全には否定出来ない自分がいた。

「修介さんには申し訳ないですけど、告白するってもう決めましたから。すみません」

 詩音くんはそう言い終えると、ドアノブを引き寄せて重い扉を閉じてしまった。
 カードキーは持っているから、そこにかざせばいくらでも開ける事は出来るのに、俺の手はそうしようとはしなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

処理中です...