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第350話
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「えっ、えっ? 何言うて」
「俺、この気持ち、ずっと憧れと尊敬の気持ちだと思ってました。でも今回、藤澤さんと一緒に過ごしてみて、修介さんの事を聞かされる度、羨ましいっていう気持ちと、俺だったら藤澤さんにこんな思いさせないのにっていう気持ちが混在して、ようやく分かったんです」
詩音くんは一呼吸して目を閉じた後、その瞼を持ち上げて俺を見下した。
「俺、藤澤さんが好きです。俺に譲ってくれませんか? 藤澤さんの事」
頭を殴られたような衝撃が全身に伝わった。
譲ってくれ?
まるで、コンサートのチケットかなんかみたいに。
この人に取り繕ったりするのはもうやめよう、と瞬時に思い、俺は息を大きく吸い込んだ。
「だ、ダメに決まっとるやろ!」
たまらずに叫び声を上げたけど、詩音くんはそんな俺の様子に全く動じていなかった。
「趣味だって、俺の方が合いますよ。ダーツとか、ボルダリングとか。今度一緒に行く約束しましたし」
「だから、さっきから何言うて……っ」
「俺だったら、恋人の誕生日に例え何が起ころうとも、どんな手を使ってでもその日のうちに会いに飛んでいきますけどね」
「~~~!」
そうやって言われてしまうと、何も反論出来なかった。
莉奈との事で誕生日に会いに行かなかったのは全部俺が悪い。そんなの分かってる。
何か言わなくちゃいけないのに、全く言葉が見つからなかった。
「あ、それに」
詩音くんはまるで景のようにクスッと笑って言った。
「藤澤さんの秘密、この間、俺だけに教えてくれたんですよ? 修介さんにも、親友にも話していないような秘密を」
秘密?
秘密って、何?
景は隠し事は嫌いなはずだから、なんでも話してくれているはずだ。
それなのに、詩音くんだけには話したの? 俺には話してないの?
「それって、俺を信用してくれてるって事ですよね。修介さんよりも」
嘘だ。そんなの。
そうは思うけど、完全には否定出来ない自分がいた。
「修介さんには申し訳ないですけど、告白するってもう決めましたから。すみません」
詩音くんはそう言い終えると、ドアノブを引き寄せて重い扉を閉じてしまった。
カードキーは持っているから、そこにかざせばいくらでも開ける事は出来るのに、俺の手はそうしようとはしなかった。
「俺、この気持ち、ずっと憧れと尊敬の気持ちだと思ってました。でも今回、藤澤さんと一緒に過ごしてみて、修介さんの事を聞かされる度、羨ましいっていう気持ちと、俺だったら藤澤さんにこんな思いさせないのにっていう気持ちが混在して、ようやく分かったんです」
詩音くんは一呼吸して目を閉じた後、その瞼を持ち上げて俺を見下した。
「俺、藤澤さんが好きです。俺に譲ってくれませんか? 藤澤さんの事」
頭を殴られたような衝撃が全身に伝わった。
譲ってくれ?
まるで、コンサートのチケットかなんかみたいに。
この人に取り繕ったりするのはもうやめよう、と瞬時に思い、俺は息を大きく吸い込んだ。
「だ、ダメに決まっとるやろ!」
たまらずに叫び声を上げたけど、詩音くんはそんな俺の様子に全く動じていなかった。
「趣味だって、俺の方が合いますよ。ダーツとか、ボルダリングとか。今度一緒に行く約束しましたし」
「だから、さっきから何言うて……っ」
「俺だったら、恋人の誕生日に例え何が起ころうとも、どんな手を使ってでもその日のうちに会いに飛んでいきますけどね」
「~~~!」
そうやって言われてしまうと、何も反論出来なかった。
莉奈との事で誕生日に会いに行かなかったのは全部俺が悪い。そんなの分かってる。
何か言わなくちゃいけないのに、全く言葉が見つからなかった。
「あ、それに」
詩音くんはまるで景のようにクスッと笑って言った。
「藤澤さんの秘密、この間、俺だけに教えてくれたんですよ? 修介さんにも、親友にも話していないような秘密を」
秘密?
秘密って、何?
景は隠し事は嫌いなはずだから、なんでも話してくれているはずだ。
それなのに、詩音くんだけには話したの? 俺には話してないの?
「それって、俺を信用してくれてるって事ですよね。修介さんよりも」
嘘だ。そんなの。
そうは思うけど、完全には否定出来ない自分がいた。
「修介さんには申し訳ないですけど、告白するってもう決めましたから。すみません」
詩音くんはそう言い終えると、ドアノブを引き寄せて重い扉を閉じてしまった。
カードキーは持っているから、そこにかざせばいくらでも開ける事は出来るのに、俺の手はそうしようとはしなかった。
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なの
BL
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