リプレイ!

こすもす

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第346話

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「なんだよ。莉奈と部屋にいた事、景は納得してくれたって言ってたの、全部嘘だったのかよー」
「うん。ごめん」
「なら、直接会いに行ってまた謝ればいいだけの話じゃん。何ウジウジしてんだよ?」
「だ、だって、電話に出ないんやから、会いたくも無いに決まっとるやないか」
「うわー、うぜー、その決めつけ。そんなの景に直接聞かなくちゃ分かんねーだろ? ホントにたまたま忙しくて出なかっただけかもしんねーし……そりゃないか? いやっとにかく!」

 翔平はテーブルを両手でバン! と叩いて、目を細めて俺を睨みつけた。

「会いに行けよ。このままでいいわけねーだろ? そんな弱気になってたら、受かる会社も受かんねーぜ?」
「……」
「ちゃんと言えば分かってくれるって。あいつ、修介の事大好きだから、莉奈に取られるとか思ってちょっと動揺したんだよきっと。今から行けよ、景のところ」
「え、えぇ? 今から?」
「店長には俺からも言っとくからさ。会って早くスッキリさせろよ」
「……うん。分かった。ありがと、翔平」

 バックヤードから出て行った翔平は、店長を引き連れて俺の元へ戻ってきた。
 泣くほど体調悪かったんだね、と変な心配をされて、疑う事もなく俺を早退させてくれたから、そのままの足で電車に乗り込んだ。
 会ってくれるだろうか。そもそも今日、マンションにいるんだろうか。
 いろんな不安を渦巻かせながら、渋谷駅で降りて、景のマンションの方に向かって歩いて行った。
 その最中、ポケットから景の家のカードキーを取り出して考えた。

 翔平も言っていたように、このままでいいわけ無いんだ。
 ちゃんと、景と話さないと。
 景がもし仕事でマンションにいなかったら、帰ってくるまで景の部屋で待っていよう。
 そう決心した俺は、カードキーをまたポケットに仕舞い、景の番号に電話を掛けてみた。

 出てほしい。
 でもたぶん、出てくれないよな……

 二つの気持ちを交互に渦巻かせ、胸をドキドキさせながら虚しく鳴るコール音を聞いていた。
 いくら待ってもそのコール音は途切れる事は無かった。
 やっぱり出ないか。
 でも諦めて切ろうとしたその時、声が聴こえた。

『はい』

 目を見開いて驚いた。
 出てくれた!
 嬉しくて、信じられない思いでマンションにいるかどうかを尋ねると、景は少し間を開けて応えてくれた。

『いるよ』
「ホンマに? じゃあ、あと二十分くらいしたらそっちに行ってもええ?」
『うん、大丈夫』
「あ、良かった……じゃあ、待っとってくれる?」

 景は少し元気がなく、やっぱり怒っているように思えたけど、電話を取ってくれたっていうだけで充分だった。
 電話を切った後、俺はすぐに駆け出した。
 本当は二十分くらいでマンションに着ける距離ではなかった。
 咄嗟にそう言ってしまって、今更後悔しても遅いけど、走っていけば間に合いそうだったから急いだ。

 到着してからカードキーをかざして中に入り、エレベーターで上階へ向かう。
 なんとか言った通り、二十分ピッタリくらいで着くことが出来た。
 息を整えながらドアの前に立ち、再度キーをかざそうとしたその時、中から鍵の回る音がしたから、景が開けてくれるんだと分かった。

 胸が早鐘を打っていた。
 景はどんな顔をして出てきてくれるのだろう。
 笑顔? それとも、あの日みたいに、俺を冷たく見下すの?
 一歩下がって、緊張しながら唇を噛んで待っていると、ゆっくりと重いドアが開けられた。

(え?)

 そこにいたのは、景ではなく、景によく似た男の人が立っていた。
 目と目が合って、一瞬でこの人が誰なのかが分かった。

 俺、この人、知ってる。
 だってこの前、この部屋で景と一緒に写真を見た。
 俺はジッと見つめながら、その人の名を口にした。

「日高、詩音……くん……」
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