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こすもす

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第345話

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 彼氏と別れた莉奈は、景に見られたあの日以来、俺にバイト先でしか話し掛けて来なくなった。
 会う度に、景は本当に怒っていなかったのかを訊かれて困った。
 莉奈とのやり取りをたまたま翔平に聞かれてしまい、いつのまにか話に加わって、莉奈と一緒になってその事を聞いて来た。
 初めの何回かは、俺は二人に嘘を吐いていた。

 ──お互い忙しくしてて、あまり連絡を取れてないけど、変わらず仲良くやってるよ?

 嘘を吐くのはもう無理だと思ったのは、三度目の電話に、景が出てくれなかった次の日だった。
 時間帯を変えて電話を掛けても全部電話に出てくれなかったし、折り返しもしてくれなかった。

 やっぱり、バイバイってそういう意味だったんだ。
 疑惑が確信に変わって、頭が真っ白になって、泣きたくなった。

 バイト先はその日、空いていた。
 夕方、翔平とホールで横に並んで翔平のバカな話を適当に聞いていて、ふと会話が途切れた時、張り詰めていた糸がプツンと切れたようについ口から零れてしまった。

「俺、景に嫌われたんかも」
「……はい?」

 翔平は、突拍子もない発言にポカンとして俺を横から見下ろしたけど、俺は翔平の顔が見れずにただ前を向いていた。

「なんで? 莉奈との事は許してくれてんだろ?」
「実は、こっちから何度か電話してんのに、一回も出てくれへんし、返してもくれへんかった」
「え、マジかよ。じゃあまだ許してねーって事?」
「……許してないっていうか、景はもう、俺と別れた気でいるのかもしれん」

 ずっと心の中でそう思っていたけど、実際に口に出したのはこの日が初めてだった。
 別れた気でいるのかもしれない。
 口に出してみると、やっぱり現実なんだと思えて、じわじわと喉の奥が詰まってきて、バイト中なのにも関わらずついに目から涙がぽろぽろと零れてしまった。

「え! えぇ~! 何泣いちゃってんのぉ~?! ちょっと店長、北村くん具合悪いみたいなんで、後ろ連れてってもいいっすかー?!」

 俺の只ならぬ様子に翔平はオロオロしながら、バックヤードに連れていった。
 部屋の中央にあるパイプ椅子に、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。

「お前、いきなり泣くなよ! ガキじゃねーんだからよっ!」

 翔平は被っていたキャスケットを手に取り、それで俺の頭を思い切り叩いたから、その反動で俺のも脱げてしまう。
 俺はなんとか涙を落ち着かせようと何回も深呼吸をして、ティッシュで涙を拭いた。

「ご、ごめん。なんか、自分でも止めらんなくて」
「で? 本当はどうなわけ? 溜め込んでっからそんな事になってんだろ。ちゃんと言ってくんなきゃ分かんねーよ」

 翔平は頬杖を付いて前のめりになって聞いてくる。
 俺はそんな優しい翔平に洗いざらい全てを話した。翔平は全て聞き終えると、頭の後ろで手を組んでニヤリとした。
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