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第341話 side詩音
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洗いざらい全てを聞いた俺は、絶句していた。
藤澤さんの誕生日に、なぜ会えなかったのか。
それについては一度仲直りをしたらしいけど、その日の夜、修介さんの部屋で見た光景。
誕生日に会っていた女の子と、また一緒にいたなんて。
「信じらんない」
藤澤さんの恋人に対して失礼かもしれないけど、口に出さずにはいられなかった。
藤澤さんは顔を傾けて伏し目がちで呟く。
「僕が子供すぎるから悪いんだよ。そんなの笑って受け流せばいい話なのに」
「違いますよ。藤澤さんは悪くないですよ!」
俺はムカムカと内側から沸き起こる感情を押さえられずに、藤澤さんの腕を掴んだ。
「そんなの、向こうが悪いに決まってるじゃないですか! いくらその子の彼氏の事でいろいろあるからって、誕生日に藤澤さんに会いに行かずにその子と一緒にいて。しかも一度じゃなく、二度も部屋に上げて。きっと、離れてるから藤澤さんにバレないと思って、甘く見てるんですよ。今だってもしかしたら部屋に上げてるのかもしれない……」
ハッとして、慌てて言葉を飲み込み、掴んでいた手を離した。
そんな事言ってもしょうがないし、藤澤さんの事を余計に傷つけるだけかもしれなのに。
でも藤澤さんは、動揺することもなく、首を横に振った。
「でも、今の僕も、同じ事をしてるよね?」
「同じ事って?」
「修介に内緒で、男を部屋に連れ込んでる」
それを聞いて、俺は目を見開いた。
さっき桜理さんが来れないって分かった時の藤澤さんの儚げな表情は、この事に気付いたって事なのか?
「連れ込んでるだなんて言い方。だって俺は藤澤さんの後輩ですよ? 俺と何か間違いが起こるわけないじゃないですか」
「あっちだって、莉奈ちゃんはただのバイトの後輩だよ。それなのに、僕は酷いことを言った。今修介がそのドアを開けてこの状況を見たら、きっといい気分じゃないだろうね」
「っ……でも」
「最低だよね、僕。こうなってみてから気付くなんて。本当にどうしようもないね」
藤澤さんは俯いて小さく笑った。
こんなに弱気な藤澤さん、はじめて見た。
藤澤さんがまさかこんな風になるなんて。
藤澤さんをこんな風にするなんて、修介さん、何してるんだよ……。
藤澤さんの誕生日に、なぜ会えなかったのか。
それについては一度仲直りをしたらしいけど、その日の夜、修介さんの部屋で見た光景。
誕生日に会っていた女の子と、また一緒にいたなんて。
「信じらんない」
藤澤さんの恋人に対して失礼かもしれないけど、口に出さずにはいられなかった。
藤澤さんは顔を傾けて伏し目がちで呟く。
「僕が子供すぎるから悪いんだよ。そんなの笑って受け流せばいい話なのに」
「違いますよ。藤澤さんは悪くないですよ!」
俺はムカムカと内側から沸き起こる感情を押さえられずに、藤澤さんの腕を掴んだ。
「そんなの、向こうが悪いに決まってるじゃないですか! いくらその子の彼氏の事でいろいろあるからって、誕生日に藤澤さんに会いに行かずにその子と一緒にいて。しかも一度じゃなく、二度も部屋に上げて。きっと、離れてるから藤澤さんにバレないと思って、甘く見てるんですよ。今だってもしかしたら部屋に上げてるのかもしれない……」
ハッとして、慌てて言葉を飲み込み、掴んでいた手を離した。
そんな事言ってもしょうがないし、藤澤さんの事を余計に傷つけるだけかもしれなのに。
でも藤澤さんは、動揺することもなく、首を横に振った。
「でも、今の僕も、同じ事をしてるよね?」
「同じ事って?」
「修介に内緒で、男を部屋に連れ込んでる」
それを聞いて、俺は目を見開いた。
さっき桜理さんが来れないって分かった時の藤澤さんの儚げな表情は、この事に気付いたって事なのか?
「連れ込んでるだなんて言い方。だって俺は藤澤さんの後輩ですよ? 俺と何か間違いが起こるわけないじゃないですか」
「あっちだって、莉奈ちゃんはただのバイトの後輩だよ。それなのに、僕は酷いことを言った。今修介がそのドアを開けてこの状況を見たら、きっといい気分じゃないだろうね」
「っ……でも」
「最低だよね、僕。こうなってみてから気付くなんて。本当にどうしようもないね」
藤澤さんは俯いて小さく笑った。
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藤澤さんがまさかこんな風になるなんて。
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