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第334話
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「あの、北村さん、大丈夫ですか? 具合とか悪いんじゃ」
「あんなぁ、莉奈」
こんな事言ってもしょうがないと思うけど、言ってしまおう。
もうどうでもいいだんて思ってないけど、ヤケにも似た気持ちで俺は顔を上げて、無理矢理笑顔を作った。
「俺、彼女がいるっていうのは嘘やねん」
「えっ?」
「本当は俺、藤澤 景と付き合うてんねん」
「……え?」
莉奈は理解できないという表情で、ポカンとこちらを見つめてくる。
それはそうだろう。いきなりそんな事を言われてもって感じだろう。
「実は翔平と藤澤 景は幼馴染で。それで、翔平に紹介してもらって仲良くなって付き合う事になったんやけど……変で、おかしいやろ? 男同士で」
最後はフフッと笑って誤魔化すけど、心は全然笑っていなかった。
もしかしたら、景はもう付き合ってないって思ってるのかもしれないけど。
愛想尽かされたのかもしれない。
そう思ってしまうと、また怖くなった。
でも、俺はそんなに簡単には終わりにしたくない。
「でも、この気持ちは本気なんよ。だから、景の事、大事にしていきたいんよ」
「分かりました」
莉奈は頷いて、ニッコリと笑った。
「凄いです北村さん。全然変じゃないですよ。あの藤澤 景さんと恋人同士だなんて。羨ましいです」
「ほんま? ありがと」
「あの、大丈夫でしたか? 私の事何か言ってませんでした?」
「ううん、何も?」
「え、本当ですか? だって私、いきなり部屋にいたりして、藤澤 景さん、ビックリしたんじゃないですか? 帰っちゃったんですよね?」
「忙しいから、景は。明日も仕事やからね」
だから大丈夫……と莉奈の肩に手を伸ばして触れようとしたけれど、途中で止めてゆっくりと下ろして膝の上で拳を作った。
「もう遅いやろ。家まで送ってってあげるから、今日は帰り」
「はい。すいません」
莉奈は何度も謝って、アパートを出てから横に並んで歩いた。
やっぱり蒸し暑くて、歩くと汗をじんわりかいてTシャツが張りついた。
心も体も、憂鬱で仕方なかった。
そして、翌日も翌々日も週末も、十日経っても、景から連絡が来る事は無かった。
「あんなぁ、莉奈」
こんな事言ってもしょうがないと思うけど、言ってしまおう。
もうどうでもいいだんて思ってないけど、ヤケにも似た気持ちで俺は顔を上げて、無理矢理笑顔を作った。
「俺、彼女がいるっていうのは嘘やねん」
「えっ?」
「本当は俺、藤澤 景と付き合うてんねん」
「……え?」
莉奈は理解できないという表情で、ポカンとこちらを見つめてくる。
それはそうだろう。いきなりそんな事を言われてもって感じだろう。
「実は翔平と藤澤 景は幼馴染で。それで、翔平に紹介してもらって仲良くなって付き合う事になったんやけど……変で、おかしいやろ? 男同士で」
最後はフフッと笑って誤魔化すけど、心は全然笑っていなかった。
もしかしたら、景はもう付き合ってないって思ってるのかもしれないけど。
愛想尽かされたのかもしれない。
そう思ってしまうと、また怖くなった。
でも、俺はそんなに簡単には終わりにしたくない。
「でも、この気持ちは本気なんよ。だから、景の事、大事にしていきたいんよ」
「分かりました」
莉奈は頷いて、ニッコリと笑った。
「凄いです北村さん。全然変じゃないですよ。あの藤澤 景さんと恋人同士だなんて。羨ましいです」
「ほんま? ありがと」
「あの、大丈夫でしたか? 私の事何か言ってませんでした?」
「ううん、何も?」
「え、本当ですか? だって私、いきなり部屋にいたりして、藤澤 景さん、ビックリしたんじゃないですか? 帰っちゃったんですよね?」
「忙しいから、景は。明日も仕事やからね」
だから大丈夫……と莉奈の肩に手を伸ばして触れようとしたけれど、途中で止めてゆっくりと下ろして膝の上で拳を作った。
「もう遅いやろ。家まで送ってってあげるから、今日は帰り」
「はい。すいません」
莉奈は何度も謝って、アパートを出てから横に並んで歩いた。
やっぱり蒸し暑くて、歩くと汗をじんわりかいてTシャツが張りついた。
心も体も、憂鬱で仕方なかった。
そして、翌日も翌々日も週末も、十日経っても、景から連絡が来る事は無かった。
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