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第319話
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マンションに帰ってきて、部屋の呼び出しボタンを押した。
そのまま合鍵を使って入っても良かったけれど、いきなり顔を見たら本音を言えそうに無かったから、あえてこうした。
待っていると、数秒後に反応があった。
『はい』
「ごめんねっ‼︎」
間髪入れずに言った。
自分から謝る事なんて滅多にない。
自分でも嫌になるくらい、負けず嫌いで頑固だから。
恥ずかしさのあまり、頭をガシガシかいていると、まるでこちらの様子が見えているかのように景は笑いを含んだ声を発した。
『ふふ、どちら様ですか?』
優しい声だったから、さっきみたいにまた涙がジワジワと滲んでしまう。
瞼を手で乱暴にゴシゴシ拭ってから、一息ついてボタンを見つめた。
「高宮さんの事、ちゃんと言わんでごめんね。景に迷惑かけたくないって思っとったけど、結局自分勝手やった。景の事、めっちゃ好きやで。これから何でも話してもええ? 景が疲れていようが、海外にいようが、御構い無しにやで?」
こんな、機械越しに告白してるところ、他人に見られたら笑われるかもしれないけど、今の俺にとってはそんなのどうでもよかった。
『早く上がっておいで』
玄関のセキュリティドアが開いたから、エントランスを抜けてエレベーターに乗りこむ。
景の家の玄関のドアを開けると、景がすぐそこに来てくれていた。
「どこまで行ってたの?」
景はさっき言い合った時の表情とは一変、笑顔だった。
たった今、大画面で見て来た景が、いま俺の目の前にいて、笑いかけてくれている。それがどんなに嬉しい事か。
「ちょっと、そこまで……」
ますます涙が滲んだから、顔を見られないように視線を下に向けて靴を脱いで上がろうとした時、景に腕を引っ張られて、あっという間に胸の中に包み込まれた。
景はそのまま俺をふんわりと抱きしめてくれる。
「帰ってきてくれないかと思ったよ……」
胸の中に顔を埋めながら、景の切ない言い方に胸が締め付けられる。
俺も背中に手を回してギュッと抱きしめたら、景は落ち着いた声で言った。
「ごめん、大人気ない事言って。僕が悪かった。言い過ぎた」
「あっ、いや、俺が悪いん……」
「修介の事好き過ぎて、嫉妬して、意地悪な事言った。ごめん。これからは何でも話してよ。僕、修介の話だったら何だって聞きたいよ」
「……」
ついに本格的にほろっと零れた涙を誤魔化すように、景の胸に顔を押し付けた。
何も言えないでいると、景は体を離して俺に深く口付けをした。
「、ん」
何度か角度を変えながら味わった後、景の顔が離れていって、両手を添えられながらじっと顔を凝視される。
景の艶めく唇が官能的で恥ずかしくなっていると、景は俺の手を取り耳元で小さく呟いた。
「おいで」
手を引かれて半ば強引に寝室へと連れて行かされる。
ベッドの上に座ると、景は中腰になってまた深く俺にキスをする。
やっぱりそこは甘い匂いが漂う空間で、目を閉じるとくらくらと目眩がした。
そのまま合鍵を使って入っても良かったけれど、いきなり顔を見たら本音を言えそうに無かったから、あえてこうした。
待っていると、数秒後に反応があった。
『はい』
「ごめんねっ‼︎」
間髪入れずに言った。
自分から謝る事なんて滅多にない。
自分でも嫌になるくらい、負けず嫌いで頑固だから。
恥ずかしさのあまり、頭をガシガシかいていると、まるでこちらの様子が見えているかのように景は笑いを含んだ声を発した。
『ふふ、どちら様ですか?』
優しい声だったから、さっきみたいにまた涙がジワジワと滲んでしまう。
瞼を手で乱暴にゴシゴシ拭ってから、一息ついてボタンを見つめた。
「高宮さんの事、ちゃんと言わんでごめんね。景に迷惑かけたくないって思っとったけど、結局自分勝手やった。景の事、めっちゃ好きやで。これから何でも話してもええ? 景が疲れていようが、海外にいようが、御構い無しにやで?」
こんな、機械越しに告白してるところ、他人に見られたら笑われるかもしれないけど、今の俺にとってはそんなのどうでもよかった。
『早く上がっておいで』
玄関のセキュリティドアが開いたから、エントランスを抜けてエレベーターに乗りこむ。
景の家の玄関のドアを開けると、景がすぐそこに来てくれていた。
「どこまで行ってたの?」
景はさっき言い合った時の表情とは一変、笑顔だった。
たった今、大画面で見て来た景が、いま俺の目の前にいて、笑いかけてくれている。それがどんなに嬉しい事か。
「ちょっと、そこまで……」
ますます涙が滲んだから、顔を見られないように視線を下に向けて靴を脱いで上がろうとした時、景に腕を引っ張られて、あっという間に胸の中に包み込まれた。
景はそのまま俺をふんわりと抱きしめてくれる。
「帰ってきてくれないかと思ったよ……」
胸の中に顔を埋めながら、景の切ない言い方に胸が締め付けられる。
俺も背中に手を回してギュッと抱きしめたら、景は落ち着いた声で言った。
「ごめん、大人気ない事言って。僕が悪かった。言い過ぎた」
「あっ、いや、俺が悪いん……」
「修介の事好き過ぎて、嫉妬して、意地悪な事言った。ごめん。これからは何でも話してよ。僕、修介の話だったら何だって聞きたいよ」
「……」
ついに本格的にほろっと零れた涙を誤魔化すように、景の胸に顔を押し付けた。
何も言えないでいると、景は体を離して俺に深く口付けをした。
「、ん」
何度か角度を変えながら味わった後、景の顔が離れていって、両手を添えられながらじっと顔を凝視される。
景の艶めく唇が官能的で恥ずかしくなっていると、景は俺の手を取り耳元で小さく呟いた。
「おいで」
手を引かれて半ば強引に寝室へと連れて行かされる。
ベッドの上に座ると、景は中腰になってまた深く俺にキスをする。
やっぱりそこは甘い匂いが漂う空間で、目を閉じるとくらくらと目眩がした。
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