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第312話
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景はすぐに聞いてくるかと思ったけど、俺の就活の話や今やっている撮影の話になって、あの時の事に触れることが無かったから、俺もすっかり切り出すタイミングを逃していた。
ソファーに座り、スマホをテーブルの上に置く。
景はトレイにケーキとコーヒーを乗せて運んできてくれてくれた。
「いただきまーす」
口の中にイチゴの甘酸っぱい香りが広がる。
そういえば、甘いものを食べたのは随分と久しぶりかもしれない。
「美味しいね。クリームが蕩けてまろやかで。慶子さん、また随分と研究したんだろうな。シフォンケーキも、また食べに行きたいね」
「うん。今度また行こう。慶子さんも会いたい言うてたで?」
俺は景の顔をのぞき込むと、景はふふ、と呆れたように笑った。
「ついてるよ。クリーム」
子供みたい……と唇の端に手を添えられて、景の顔が寄せられた。
クリームを舐めとってくれたかと思ったら、そのまま口内に侵入してきて、舌を動かされる。
右手に持っていたフォークを指先でぎゅっと握りしめながら、その快感に身を委ねた。
景とキスしたのも久しぶり。
景もそう思ったのか、なかなか唇は離れなくて、何度も角度を変えながら味わっていた。
もしかして、さっき玄関でしなかったのは、止まらなくなるって分かってたから?
舌を搦めとられているうちに、そのまま本番がはじまっちゃうかも……
そう思っていたけど、名残惜しそうに景の唇が離れていって、鼻の先があたる近距離で呟かれた。
「……好き」
ボッ! と体中に火が付けられた感覚だ。
電話では言ってくれてたけど、真っ直ぐに見つめられたまま言われると、どうしようもなく照れる。
景は恋愛もののドラマや映画に出ることも多いから、こういうシーンは何度も体験してきたんだろう。平然とやってのける。
「あ、そうや! 俺……」
はぐらかすように景の腕を押しやって立ち上がって、ダイニングテーブルに向かう。
手提げ袋から箱を取り出して、景に手渡した。
「これ、俺からのプレゼント。遅くなってゴメン。気に入ってもらえれば嬉しいんやけど」
景は箱を凝視すると、嬉しそうに笑った。
「嬉しい。ありがとう。開けてもいい?」
「そりゃ、もちろん」
景は包み紙を破らないように丁寧に1枚ずつはがしていく。
箱を開けて、中身を確認した。
景はそのライターを見ると、少し驚いた表情をしていたから、ドキッとした。
驚いたって、嬉しさのあまりっていう感じじゃない。
なんだかハッとした表情で、何かを考えているようだった。
「これ……」
呟いたまま、動かなくなってしまった。
俺はプレゼントと景の顔を何度も見比べる。
予想では、もっと喜んでくれるかと思ってたんだけど。
もしかして、気に入らなかった?
やっぱり服とか、ネックレスとかの方が良かったのかな。
景に似合うと思って選んだんだけど。
どうしよう。俺、なんか間違ったかも。
「ありがとう。大切に使うよ」
景はますます笑顔になったから、余計勘ぐってしまう。
もしかして、演技してる?
本当はあんまり好きじゃないんじゃないの、それ。
一度モヤモヤし出すと、止まらなくなるのが俺の悪い癖だ。
「うん! あ、そうや、ちょっとトイレ借りるわ」
俺は逃げるように、リビングから出ていった。
ソファーに座り、スマホをテーブルの上に置く。
景はトレイにケーキとコーヒーを乗せて運んできてくれてくれた。
「いただきまーす」
口の中にイチゴの甘酸っぱい香りが広がる。
そういえば、甘いものを食べたのは随分と久しぶりかもしれない。
「美味しいね。クリームが蕩けてまろやかで。慶子さん、また随分と研究したんだろうな。シフォンケーキも、また食べに行きたいね」
「うん。今度また行こう。慶子さんも会いたい言うてたで?」
俺は景の顔をのぞき込むと、景はふふ、と呆れたように笑った。
「ついてるよ。クリーム」
子供みたい……と唇の端に手を添えられて、景の顔が寄せられた。
クリームを舐めとってくれたかと思ったら、そのまま口内に侵入してきて、舌を動かされる。
右手に持っていたフォークを指先でぎゅっと握りしめながら、その快感に身を委ねた。
景とキスしたのも久しぶり。
景もそう思ったのか、なかなか唇は離れなくて、何度も角度を変えながら味わっていた。
もしかして、さっき玄関でしなかったのは、止まらなくなるって分かってたから?
舌を搦めとられているうちに、そのまま本番がはじまっちゃうかも……
そう思っていたけど、名残惜しそうに景の唇が離れていって、鼻の先があたる近距離で呟かれた。
「……好き」
ボッ! と体中に火が付けられた感覚だ。
電話では言ってくれてたけど、真っ直ぐに見つめられたまま言われると、どうしようもなく照れる。
景は恋愛もののドラマや映画に出ることも多いから、こういうシーンは何度も体験してきたんだろう。平然とやってのける。
「あ、そうや! 俺……」
はぐらかすように景の腕を押しやって立ち上がって、ダイニングテーブルに向かう。
手提げ袋から箱を取り出して、景に手渡した。
「これ、俺からのプレゼント。遅くなってゴメン。気に入ってもらえれば嬉しいんやけど」
景は箱を凝視すると、嬉しそうに笑った。
「嬉しい。ありがとう。開けてもいい?」
「そりゃ、もちろん」
景は包み紙を破らないように丁寧に1枚ずつはがしていく。
箱を開けて、中身を確認した。
景はそのライターを見ると、少し驚いた表情をしていたから、ドキッとした。
驚いたって、嬉しさのあまりっていう感じじゃない。
なんだかハッとした表情で、何かを考えているようだった。
「これ……」
呟いたまま、動かなくなってしまった。
俺はプレゼントと景の顔を何度も見比べる。
予想では、もっと喜んでくれるかと思ってたんだけど。
もしかして、気に入らなかった?
やっぱり服とか、ネックレスとかの方が良かったのかな。
景に似合うと思って選んだんだけど。
どうしよう。俺、なんか間違ったかも。
「ありがとう。大切に使うよ」
景はますます笑顔になったから、余計勘ぐってしまう。
もしかして、演技してる?
本当はあんまり好きじゃないんじゃないの、それ。
一度モヤモヤし出すと、止まらなくなるのが俺の悪い癖だ。
「うん! あ、そうや、ちょっとトイレ借りるわ」
俺は逃げるように、リビングから出ていった。
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