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第277話 side景
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「景、日高 詩音くんって、会った事はないよね?」
隣にいるマネージャーの宮ちゃんが、移動中のタクシーの中で僕に尋ねてくる。
これからお世話になっているプロデューサーやスタッフと食事をする予定で、その場に向かっていた。
「うん、無いよ」
プライベートの事を話していていきなりその名を出されたから、思い出すのに少々時間がかかった。
日高詩音とは、来年公開予定の映画で僕の友人役を演じる俳優である。
男性ファッション誌のモデルとして活躍後、今は俳優業に力を注いでいるらしい。
実際にこの目で見たことは無く、来週から始まる長期の映画の撮影で初めてその日高詩音に会う予定だ。
僕はそのつもりだったけど、宮ちゃんの話によると、どうやら違うらしい。
「言ってなかったんだけどさ、今日、詩音くんとマネージャーも来るから」
「え? そうなの?」
「この前景が帰った後、別のスタジオで雑誌の撮影してたからちょっと覗いて見たんだけどさ、それが詩音くんだったんだよ! 詩音くんのマネージャーと話してみたら気があって、連絡先交換しちゃった」
「へぇ。それは偶然だね」
「それで、今日の事伝えたら詩音くんがぜひ行きたいって言ってくれて。話に聞いたら、景の大ファンらしくて、景を目標に芸能界入りしたみたいなんだよ。すごくない? すごくない?」
宮ちゃんは僕の顔に鬱陶しいくらいにぐいぐいと寄ってくる。
僕はその話を聞いて、悪い気はしなかった。
宮ちゃんはさらに付け加えた。
「しかも詩音くんって、なんだか顔とか雰囲気が景にそっくりでさ。景をちょっとだけ小さくしたって感じで。どことなく低い声も似てる気がしたよ! でも、性格は違うね! こんな僕にすごく丁寧に挨拶してくれたし、自分のマネージャーにも敬語で。新人の頃の景と違ってすごく謙虚で礼儀正しいし、今時の若い子なのにしっかりしてるよー……」
無言の圧力を宮ちゃんに送ると、宮ちゃんは誤魔化すように咳払いをしてから、タクシーの運転手に「あ、ここでいいです。」と笑ってお金を払った。
和食料理店の暖簾をくぐり、中へ入ると数名の顔見知りのスタッフが席についていた。
周りをぐるりと見渡していると、一人の男性がじっとこちらを見ている事に気が付いた。
数秒、お互い視線を逸らさなかった。
その後あちらから深々とお辞儀をされる。
きっとあれが、詩音だろう。
僕も頭を下げてから顔を上げるとまた目が合い、お互いニコリと目を細めた。
隣にいるマネージャーの宮ちゃんが、移動中のタクシーの中で僕に尋ねてくる。
これからお世話になっているプロデューサーやスタッフと食事をする予定で、その場に向かっていた。
「うん、無いよ」
プライベートの事を話していていきなりその名を出されたから、思い出すのに少々時間がかかった。
日高詩音とは、来年公開予定の映画で僕の友人役を演じる俳優である。
男性ファッション誌のモデルとして活躍後、今は俳優業に力を注いでいるらしい。
実際にこの目で見たことは無く、来週から始まる長期の映画の撮影で初めてその日高詩音に会う予定だ。
僕はそのつもりだったけど、宮ちゃんの話によると、どうやら違うらしい。
「言ってなかったんだけどさ、今日、詩音くんとマネージャーも来るから」
「え? そうなの?」
「この前景が帰った後、別のスタジオで雑誌の撮影してたからちょっと覗いて見たんだけどさ、それが詩音くんだったんだよ! 詩音くんのマネージャーと話してみたら気があって、連絡先交換しちゃった」
「へぇ。それは偶然だね」
「それで、今日の事伝えたら詩音くんがぜひ行きたいって言ってくれて。話に聞いたら、景の大ファンらしくて、景を目標に芸能界入りしたみたいなんだよ。すごくない? すごくない?」
宮ちゃんは僕の顔に鬱陶しいくらいにぐいぐいと寄ってくる。
僕はその話を聞いて、悪い気はしなかった。
宮ちゃんはさらに付け加えた。
「しかも詩音くんって、なんだか顔とか雰囲気が景にそっくりでさ。景をちょっとだけ小さくしたって感じで。どことなく低い声も似てる気がしたよ! でも、性格は違うね! こんな僕にすごく丁寧に挨拶してくれたし、自分のマネージャーにも敬語で。新人の頃の景と違ってすごく謙虚で礼儀正しいし、今時の若い子なのにしっかりしてるよー……」
無言の圧力を宮ちゃんに送ると、宮ちゃんは誤魔化すように咳払いをしてから、タクシーの運転手に「あ、ここでいいです。」と笑ってお金を払った。
和食料理店の暖簾をくぐり、中へ入ると数名の顔見知りのスタッフが席についていた。
周りをぐるりと見渡していると、一人の男性がじっとこちらを見ている事に気が付いた。
数秒、お互い視線を逸らさなかった。
その後あちらから深々とお辞儀をされる。
きっとあれが、詩音だろう。
僕も頭を下げてから顔を上げるとまた目が合い、お互いニコリと目を細めた。
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