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第253話
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エレベーターに乗り込んだ途端、俺は思い出した。
「あっ、指輪……」
「あぁ、転がってたから拾っておいたぜ」
タケさんがポケットから指輪を取り出したから一安心したけど、申し訳なかった。
べたついてなかったかな……と心配になったけどそんな事は聞けず、そのまま返してもらった。
景はエレベーターの中でも俺の手首を離そうとはせず、無言だった。
外に出てから、タケさんはじゃあ、と言った。
「俺、桜理んとこ行ってくるわ。景ちゃんは修介の事送ってくでしょー?」
「うん。タケ、本当にありがとう」
「いーよいーよ。今度メシ奢ってよー」
「あ、あの、タケさんっ、本当に、ありがとうございました」
横から俺が言うと、タケさんはまた笑って、じゃあねーと手を振り行ってしまった。
二人きりになった途端、沈黙が流れた。
景は未だに俺の手首を掴んで離さない。怖くて、景の顔が見れなかった。
俺は唇をぐっと噛んでからその静寂を切り裂いた。
「あの、景。助けてくれて、ありがとう……」
そう言うと、景は手を離して俺の顎に手を添え て、そのまま唇を親指でなぞった。
少し切ったであろう個所をぷにぷにと指で押してくる。
目を細めて、何とも言えない悲しげな表情をしていた。
きっと、俺と朝井さんがキスをしたなんて、言わなくても分かってるんだろう。
泣きそうなその顔に胸が痛くなるけど、景は俺を安心させる為か、すぐに表情を柔和にさせた。
「さっき、ありがとね。あの人にいろいろと言ってくれて。嬉しかったよ」
「あ……」
今更、さっき自分が朝井さんに子供みたいな反論をしていた事に気付き、気恥ずかしくなる。
景はニコリとして、俺の手を引いて歩き出した。
「僕の家に行こう。タクシー拾うから」
「あっ、指輪……」
「あぁ、転がってたから拾っておいたぜ」
タケさんがポケットから指輪を取り出したから一安心したけど、申し訳なかった。
べたついてなかったかな……と心配になったけどそんな事は聞けず、そのまま返してもらった。
景はエレベーターの中でも俺の手首を離そうとはせず、無言だった。
外に出てから、タケさんはじゃあ、と言った。
「俺、桜理んとこ行ってくるわ。景ちゃんは修介の事送ってくでしょー?」
「うん。タケ、本当にありがとう」
「いーよいーよ。今度メシ奢ってよー」
「あ、あの、タケさんっ、本当に、ありがとうございました」
横から俺が言うと、タケさんはまた笑って、じゃあねーと手を振り行ってしまった。
二人きりになった途端、沈黙が流れた。
景は未だに俺の手首を掴んで離さない。怖くて、景の顔が見れなかった。
俺は唇をぐっと噛んでからその静寂を切り裂いた。
「あの、景。助けてくれて、ありがとう……」
そう言うと、景は手を離して俺の顎に手を添え て、そのまま唇を親指でなぞった。
少し切ったであろう個所をぷにぷにと指で押してくる。
目を細めて、何とも言えない悲しげな表情をしていた。
きっと、俺と朝井さんがキスをしたなんて、言わなくても分かってるんだろう。
泣きそうなその顔に胸が痛くなるけど、景は俺を安心させる為か、すぐに表情を柔和にさせた。
「さっき、ありがとね。あの人にいろいろと言ってくれて。嬉しかったよ」
「あ……」
今更、さっき自分が朝井さんに子供みたいな反論をしていた事に気付き、気恥ずかしくなる。
景はニコリとして、俺の手を引いて歩き出した。
「僕の家に行こう。タクシー拾うから」
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