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こすもす

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第239話

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 そして二日後。
 俺は朝井さんに指定された都内のカフェへ来ていた。
 すぐ向かいには有名な某テレビ局がある。
 朝井さんはテレビの収録で珍しく(失礼)今その場所にいるらしく、終わったら俺のところへ来ると言っていたけど、ちゃんと約束通りに指輪を返してくれるのか、疑問に思えてきた。

 この二日、朝井 綾斗についてをネットで調べてみたのだ。
 本当にゲイなのか疑惑があったけど、[同性愛疑惑のある芸能人]という見出しの中に朝井さんの名前も記されていた。
 事務所の力でそれは公にされていない、いうことも。
 それに、ネットに上がる朝井さんの情報は、どれもあまり良いことは書かれていなかった。

 雑誌記者と名乗る人によれば、取材時に傲慢な態度を取り、機嫌が悪い時にはそれを隠しもせずに周りに八つ当たり……さらには受け答えもやる気のない態度、その後朝井さんが勝手に切り上げて取材をボイコット……

 まぁ、そんなのは朝井さんに限らず、数多くの芸能人や読者モデルが似たような事を書かれていたけど、その中に藤澤 景の名前が出て来なかったのにはホッとした。

 ネットに書かれているように朝井さんの性格が歪んでいたら(失礼)、あっさりと指輪を返してくれるなんて思えない。
 でも、俺に出来るのはとりあえず待つ事だけだ。
 気を紛らわせるように耳にイヤホンをつけて音楽を聴いていた。

 そして待ち合わせの時間から大分経った頃、店の奥に座る俺の向かいの席にいきなり男の人がどかっと座り込んだ。
 不意打ちだったからビクッとして、俺は慌ててイヤホンを取る。

「ど、どちら様ですかっ⁈」
「おい。俺だよ。もう顔忘れたのかよ」
「えっ、あ、朝井さん?」

 サングラスを掛けているし、四日前に会った時とは髪型も服装もまるっきり違うから一瞬誰だか分からなかったけど、サングラスをずらされた瞬間、本人だと分かった。
 朝井さんはサングラスを戻し、煙草に火を点けて吸い出した。

「悪りぃな待たせちゃって。ちょっと押しちゃってさ。これ吸ったら行こっか」
「あの、その前に指輪を先に返してもらってもいいですか?」
「やだね。そのまま持ち逃げされても困るし。デートしてくれたらちゃんと返してやるよ。俺いいところ知ってるからさ。楽しみにしててよ」
「い、いいところ……⁈」

 朝井さんは紫煙を吐き出しながら不敵な笑みを浮かべる。

「安心しろよ。変なとこ連れ込もうって訳じゃねーから。それより修介くんって、地元どこ? 大阪?」
「和歌山です」
「へぇ。なんか訛ってんなとは思ってたけど。いいよ、友達だと思ってリラックスして方言で喋ってよ」
「……無理です」

 変なところに連れ込まないという朝井さんの言葉を信用してもいいのだろうか。
 指輪を奪って逃げる、なんていう計画はあっけなく崩れ去りそうだ。
 朝井さんは吸い終えると、伝票レシートを持って勝手に立ち上がりレジに向かってしまったから慌てて追いかけた。

「いやっ、あの、自分で払うんで」
「いいよこれぐらい。来てもらったお礼だよ」
「いや、でも困りますっ」

 これは気持ちの問題だ。
 よく知りもしない人に払ってもらうなんて。でも結局、無理やり支払われてしまった。
 そんな俺たちを店内でじっと見る人物がいた事に気付かず、俺たちはカフェを出た。
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