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こすもす

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第231話

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 写真を撮り終えた景が、ようやく席に戻ってきてくれた。

「修介。南は?」
「あ、帰った。景によろしくって言うてたで?」
「そう。彼女と何話してたの?」

 一瞬、迷った。
 指輪について指摘された事を言おうとしたけど、どうしても引っかかる。
 景は南さんにも、心の拠り所になればいいなと言って渡したのかもしれないという事。
 そんな小さな事気にしなきゃいいのに、なんだか悲しくなってしまって。
 つい、嘘を吐いてしまった。

「別に、なんも? 好きな芸能人の話とか、適当に」
「そう。ごめんね。南、今日は仕事で来れないってエリさんにちゃんと聞いておいたんだよ? あ、さっき修介にも紹介した、桜理の彼女の事ね。エリさんもモデルで、南とはたまに仕事で一緒になるみたいだから」
「ううん、別に気にしとらんから謝らんといて。それよりごめん、俺トイレ行ってきてもええ?」
「うん。場所分かる? 店、一回出てから左の奥にあるから」
「分かった。ちょっと待っとって」

 誤魔化すように笑いながら席を立って、店の外へ向かった。
 思い扉を開けて、後ろ手で閉めて一息吐く。
 この俺の性格、何とかならないものか……とふと右を向くと、帰ったと思っていた南さんがいた。後ろ姿で誰だか分からないけど、男の人と立ち話をしているようだった。
 南さんとふいに目が合って、軽く微笑まれたから俺はペコリとお辞儀をしてからトイレに向かった。

 用を足してから手を洗おうと洗面所に手を伸ばした時、している指輪が目に留まったから、鏡の前の棚に指輪を外して置き、手を洗った。
 その最中にドアが開き、男性が一人入って来る。
 俺の知ってる有名人かな? とドキドキしたけど、あんまりじろじろ見るのも悪いから目は合わせられずにいた。

 ハンドドライヤーで手を乾かしている時にふと横を振り向いてみて、ぎょっとした。
 その男の人が、置いていた指輪を指で摘み上げて眺めていたのだ。

 あ、もしかして、誰かの忘れ物だと思われてる?
 俺は慌てて声を掛けた。
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