リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
227 / 454

第227話

しおりを挟む
 依田 桜理も俺に視線を滑らせ、頭から足のつま先までジロジロと見渡してからふふっと笑った。

「何友達連れて来てんだよ。彼女連れて来いって言っただろうが!」

 景の体を小突きながら桜理さんが言うと、猛さんは組んでいた足を直して立ち上がる。

「あー、ごめん。もしかしてこっちの業界じゃ無い友達だったの? 可愛い顔してるから駆け出しのアイドルかと思ったー。俺、石倉 猛! 宜しくね?」

 猛さんはさっきの態度とは一変、テレビで見るような子供のような顔でニカッと笑って手を差し出して来たから、俺はすかさず手を取り握手を交わした。
 あぁ! 嬉しい! 俺は目を輝かせる。

「はじめまして! 北村修介です!」
「しゅうすけねー。宜しく。景ちゃんの友達? あ、もしかして君がよく話に出てくる景ちゃんの幼馴染?」

 猛さんはもう酔っているらしい。
 俺を火照った顔で見下ろしながら何故か頭を撫でたりしてくる。
 景はすかさず猛さんの手を取り払った。

「ちょっとタケ、ベタベタ触らないでくれる? 修介困ってるでしょう」
「だってなんか可愛くて。お目目がクリクリで」
「確かに。そこらへんにいる女子高生よりよっぽど可愛いぜ。手の平サイズだし。あ、俺は依田桜理」

 桜理さんにも肩に手を置かれて、顔を覗き込まれる。
 なんだかイケメン二人に言い寄られているようで照れてしまう。
 口を一文字に結んで耐えていると、景は俺たちをテーブル席に座らせた。

「はいはい、ちゃんと紹介するからとりあえず乾杯しよう」

 猛さんが俺の分のビールを頼んでくれて、乾杯をする。
 景は一口飲んだらすぐにグラスを置いて、向かいに座る猛さんと桜理さんを交互に見た。

「よく聞いてね、二人とも。この人が僕の付き合ってる人」

 ……景、すごいな、ストレートに。
 二人の反応はというと、驚くよりも先に笑いが出ていた。

「はぁ? 景ちゃん、もう酔ってんのー?」
「もっとマシな嘘つけってんだよ。結局忙しくて連れてこれなかったんだろ? いいよ別に、またの機会で」
「僕、彼女だなんて一言も言ってないよ。付き合ってる人がいるって言っただけで」
「「は?」」
「ね、修介、僕達付き合ってるよね?」

 なっ、景! 何故俺に振ってくる!
 三人の視線が痛い。
 カーッと体と顔が熱くなってきて、逃げ出してしまいたくなる。
 けれど、どうにも出来ないから、仕方なく事実を述べる事にした。

「じ、実は、お付き合いさせて頂いております……」

 手を膝に置いて、冷や汗をタラタラと流し何回も瞬きをさせながら、蚊の鳴くような声で告げた。
 景はふふっと吹き出して、二人を交互に見ながら頬杖をついた。

「ね? 言ってた通り、可愛いでしょう? この事は絶対に内緒にしておいてね。僕が信頼できる人だけにしか言わないつもりだから」
「ちょっと待てよ‼︎」

 桜理さんは勢いよく立ち上がったけど、周りの視線が気になったのか、またゆっくりと座り直し、体を小さくして景に話し掛けた。

「おい、景っ。気は確かか? こんなチンチクリン野郎の何処がいいんだよっ?」
「ちっ、チンチクリン⁈」

 桜理さんは俺を指差しながら、景に詰め寄っている。
 まさかそんな事を言われるとは思わなかったから、俺は目を丸くしたまま固まった。

「あははー。景ちゃんマジサイコー。修介ってメンズだよね? マジなの?」

 猛さんは身を乗り出して、俺の頬を人差し指でつつきながらケラケラと笑っている。
 景はそれを自然に払ってから、「マジだよ」と答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...