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第227話
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依田 桜理も俺に視線を滑らせ、頭から足のつま先までジロジロと見渡してからふふっと笑った。
「何友達連れて来てんだよ。彼女連れて来いって言っただろうが!」
景の体を小突きながら桜理さんが言うと、猛さんは組んでいた足を直して立ち上がる。
「あー、ごめん。もしかしてこっちの業界じゃ無い友達だったの? 可愛い顔してるから駆け出しのアイドルかと思ったー。俺、石倉 猛! 宜しくね?」
猛さんはさっきの態度とは一変、テレビで見るような子供のような顔でニカッと笑って手を差し出して来たから、俺はすかさず手を取り握手を交わした。
あぁ! 嬉しい! 俺は目を輝かせる。
「はじめまして! 北村修介です!」
「しゅうすけねー。宜しく。景ちゃんの友達? あ、もしかして君がよく話に出てくる景ちゃんの幼馴染?」
猛さんはもう酔っているらしい。
俺を火照った顔で見下ろしながら何故か頭を撫でたりしてくる。
景はすかさず猛さんの手を取り払った。
「ちょっとタケ、ベタベタ触らないでくれる? 修介困ってるでしょう」
「だってなんか可愛くて。お目目がクリクリで」
「確かに。そこらへんにいる女子高生よりよっぽど可愛いぜ。手の平サイズだし。あ、俺は依田桜理」
桜理さんにも肩に手を置かれて、顔を覗き込まれる。
なんだかイケメン二人に言い寄られているようで照れてしまう。
口を一文字に結んで耐えていると、景は俺たちをテーブル席に座らせた。
「はいはい、ちゃんと紹介するからとりあえず乾杯しよう」
猛さんが俺の分のビールを頼んでくれて、乾杯をする。
景は一口飲んだらすぐにグラスを置いて、向かいに座る猛さんと桜理さんを交互に見た。
「よく聞いてね、二人とも。この人が僕の付き合ってる人」
……景、すごいな、ストレートに。
二人の反応はというと、驚くよりも先に笑いが出ていた。
「はぁ? 景ちゃん、もう酔ってんのー?」
「もっとマシな嘘つけってんだよ。結局忙しくて連れてこれなかったんだろ? いいよ別に、またの機会で」
「僕、彼女だなんて一言も言ってないよ。付き合ってる人がいるって言っただけで」
「「は?」」
「ね、修介、僕達付き合ってるよね?」
なっ、景! 何故俺に振ってくる!
三人の視線が痛い。
カーッと体と顔が熱くなってきて、逃げ出してしまいたくなる。
けれど、どうにも出来ないから、仕方なく事実を述べる事にした。
「じ、実は、お付き合いさせて頂いております……」
手を膝に置いて、冷や汗をタラタラと流し何回も瞬きをさせながら、蚊の鳴くような声で告げた。
景はふふっと吹き出して、二人を交互に見ながら頬杖をついた。
「ね? 言ってた通り、可愛いでしょう? この事は絶対に内緒にしておいてね。僕が信頼できる人だけにしか言わないつもりだから」
「ちょっと待てよ‼︎」
桜理さんは勢いよく立ち上がったけど、周りの視線が気になったのか、またゆっくりと座り直し、体を小さくして景に話し掛けた。
「おい、景っ。気は確かか? こんなチンチクリン野郎の何処がいいんだよっ?」
「ちっ、チンチクリン⁈」
桜理さんは俺を指差しながら、景に詰め寄っている。
まさかそんな事を言われるとは思わなかったから、俺は目を丸くしたまま固まった。
「あははー。景ちゃんマジサイコー。修介ってメンズだよね? マジなの?」
猛さんは身を乗り出して、俺の頬を人差し指でつつきながらケラケラと笑っている。
景はそれを自然に払ってから、「マジだよ」と答えた。
「何友達連れて来てんだよ。彼女連れて来いって言っただろうが!」
景の体を小突きながら桜理さんが言うと、猛さんは組んでいた足を直して立ち上がる。
「あー、ごめん。もしかしてこっちの業界じゃ無い友達だったの? 可愛い顔してるから駆け出しのアイドルかと思ったー。俺、石倉 猛! 宜しくね?」
猛さんはさっきの態度とは一変、テレビで見るような子供のような顔でニカッと笑って手を差し出して来たから、俺はすかさず手を取り握手を交わした。
あぁ! 嬉しい! 俺は目を輝かせる。
「はじめまして! 北村修介です!」
「しゅうすけねー。宜しく。景ちゃんの友達? あ、もしかして君がよく話に出てくる景ちゃんの幼馴染?」
猛さんはもう酔っているらしい。
俺を火照った顔で見下ろしながら何故か頭を撫でたりしてくる。
景はすかさず猛さんの手を取り払った。
「ちょっとタケ、ベタベタ触らないでくれる? 修介困ってるでしょう」
「だってなんか可愛くて。お目目がクリクリで」
「確かに。そこらへんにいる女子高生よりよっぽど可愛いぜ。手の平サイズだし。あ、俺は依田桜理」
桜理さんにも肩に手を置かれて、顔を覗き込まれる。
なんだかイケメン二人に言い寄られているようで照れてしまう。
口を一文字に結んで耐えていると、景は俺たちをテーブル席に座らせた。
「はいはい、ちゃんと紹介するからとりあえず乾杯しよう」
猛さんが俺の分のビールを頼んでくれて、乾杯をする。
景は一口飲んだらすぐにグラスを置いて、向かいに座る猛さんと桜理さんを交互に見た。
「よく聞いてね、二人とも。この人が僕の付き合ってる人」
……景、すごいな、ストレートに。
二人の反応はというと、驚くよりも先に笑いが出ていた。
「はぁ? 景ちゃん、もう酔ってんのー?」
「もっとマシな嘘つけってんだよ。結局忙しくて連れてこれなかったんだろ? いいよ別に、またの機会で」
「僕、彼女だなんて一言も言ってないよ。付き合ってる人がいるって言っただけで」
「「は?」」
「ね、修介、僕達付き合ってるよね?」
なっ、景! 何故俺に振ってくる!
三人の視線が痛い。
カーッと体と顔が熱くなってきて、逃げ出してしまいたくなる。
けれど、どうにも出来ないから、仕方なく事実を述べる事にした。
「じ、実は、お付き合いさせて頂いております……」
手を膝に置いて、冷や汗をタラタラと流し何回も瞬きをさせながら、蚊の鳴くような声で告げた。
景はふふっと吹き出して、二人を交互に見ながら頬杖をついた。
「ね? 言ってた通り、可愛いでしょう? この事は絶対に内緒にしておいてね。僕が信頼できる人だけにしか言わないつもりだから」
「ちょっと待てよ‼︎」
桜理さんは勢いよく立ち上がったけど、周りの視線が気になったのか、またゆっくりと座り直し、体を小さくして景に話し掛けた。
「おい、景っ。気は確かか? こんなチンチクリン野郎の何処がいいんだよっ?」
「ちっ、チンチクリン⁈」
桜理さんは俺を指差しながら、景に詰め寄っている。
まさかそんな事を言われるとは思わなかったから、俺は目を丸くしたまま固まった。
「あははー。景ちゃんマジサイコー。修介ってメンズだよね? マジなの?」
猛さんは身を乗り出して、俺の頬を人差し指でつつきながらケラケラと笑っている。
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