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こすもす

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第226話

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 つい周りをキョロキョロと見渡してしまう。
 景は芸能関係者じゃない人も沢山来ると言っていた。見た事も無い顔が沢山いるけど、どの人も煌びやかに見えて、全員が芸能人に見えてくる。
 俺みたいな一般人も、本当に紛れ込んでいるんだろうか。
 そんな風に思っていたら、景が突然、女の人に肩を掴まれた。

「景っ、飲んでるー?」

 グラスのぶつかる音、人々の喧騒やけたたましくなる音響のせいからか、その女の人は景の耳元ギリギリに唇を寄せたからギョッとした。
 すごく美人。鼻が高くて、ロングヘアーの髪をサラリとなびかせている。
 確かこの人も女優さんだったっけ?

「ええ、飲んでますよ」
「一緒に写真いい?」
「もちろん」

 なんだか仲良さげに肩を寄せ合って写真を撮っている。景はいつものように少し顔を傾けて。

 むー……はっ、いけないいけない。
 今日はこんな気持ちにならないって朝決めたんだ。
 景と住む世界は違うんだし、景は俺の何十倍も知り合いがいるんだろうし。

 それに、景の事ちゃんと信じる事にしたんだ。

 写真を撮り終えると、その女の人は紅い唇を横に引いて、こちらに目配せをする。
 慌ててお辞儀をすると、手を胸の前で小さく振って向こうに行ってしまった。
 俺の方を振り返った景に、すかさず言った。

「嫉妬してへんよっ」
「まだ何も言ってないし。今のは依田桜理の恋人の、エリさん」

 おいで、と二の腕を強引に掴まれた。
 こんなに人がいるのにそんな事をしてくれるなんて思わなかったから、密かに嬉しくて。
 人混みを掻き分け、奥へ奥へと進んでいく。
 みんな互いの話に夢中でこちらに見向きもしていない。
 そして、隅のテーブル席の前で止まった。
 そこに座っていたのは、紛れもなくあの石倉 猛だった。
 石倉 猛は景に「お待たせ」と声を掛けられ、ふっと顔を上げる。「おー」と言って片手を上げると、すぐに俺に視線を移した。
 目が合って、ドキンと胸が鳴った。

 やばい。カッコいい。
 芸能人って、なんで実物の方がテレビで見るより何倍も格好良く見えるんだろう?
 見惚れて何も言えないでいると、石倉 猛はジロジロと舐め回すように俺を見てから口を開いた。

「どこの事務所?」
「……へっ?」
「まぁまぁかなー。新人? 景ちゃんの後輩なのー?」
「あっいえ、俺は」

 なんだ? この視線。チクチク刺さるぞ。
 もしかして値踏みされてる?
 もっとニコニコしているイメージだったのに、すごく機嫌が悪そうだし、挨拶も無しにいきなりそんな事を訊いてくるなんて。
 まぁ、しょうがないか。
 やっぱり芸能人なんてテレビとプライベートじゃ態度は違うんだろう。景みたいなのが稀なんだ。

「よぉ景! 彼女連れてきた?」

 後ろから陽気な声が聞こえて振り返る。
 そこには、依田 桜理の姿が。
 ネットで調べていたから分かった。伊達眼鏡をかけているけど、紛れもなくその人だ。
 背が190センチ以上あると書いてあったからどんなもんかと思ってたけど、で、でかい。迫力がある。第一印象はそれだった。
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