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第225話
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* * *
パーティの日、俺は電車で都内へ向かった。
楽しみではあるけれど、今朝から思いっきり緊張していた。
大勢の芸能関係者が集まるのだ。
景に誘われた時は安易に返事してしまったけど、よく考えれば本来ならば俺みたいな平凡人が行くような場所では無い。
その為、何度も服装を確認した。
みんなカジュアルな服装で来るから何でもいいよと言われたけど、いつもの格好で行ったらきっと浮いてしまうに違いない。
それに、今日は景の友達に会うんだ。少しは気を遣わないと。
そう思って昨日、慌てて秀明を引き連れて服を買いに行った。
散々迷った挙句、お洒落な店員に選んでもらったシンプルな無地のTシャツとジャージー素材のテーパードパンツに落ち着いた。
迷いすぎて、お洒落コーディネーターの瞬くんにアドバイスをもらおうとしたけどやめた。
また景が怒りそうだし。
エレベーターの前で立ち止まり、景に連絡を入れると「待ってて」とすぐに返信が来たから、髪の毛を整えてから、右手にキラリと光る赤い石を見て、緊張を解した。
そんな時、景が外階段を降りて来るのが見えた。
「あぁ、修介。待ってたよ」
「あ、久しぶり。もうみんな来てるん?」
「うん。みんなお酒入ってるし、途中から行った方が目立たないかなと思って。楽しんで行ってよ」
「う、うん」
一緒にエレベーターに乗り込んだところで、景に気になっていた事を訊いてみた。
「景。あの、今日って南さんはおるん?」
景は一瞬驚いた表情をしたけれど、すぐに笑って俺の頭を撫でた。
「来ないよ。知り合いにちゃんと聞いておいたから。それに、来る予定だったら僕も来てなかったよ」
「あ、そっか……」
一安心したところでエレベーターのドアが開く。
店のドアを開けた瞬間、熱気がブワッと漂ってきた。
バーを貸し切ったと言っていたけど、そんなに広くはない。
景のマンションの部屋のように大きな窓からはネオンが輝いて見える。
壁には大型のスクリーンがあって、天井からはお洒落なシャンデリアがぶら下がっている。
ざっと見て、50人ほど。年齢層も様々だ。
あっちのカウンター席に座る人は確か有名な映画監督で、それにいま目の前を通りすぎた綺麗な女の人は、その映画にヒロイン役で出ていた気がする。でも、名前が思い出せない。
ああ、あの人は確か音楽プロデューサーの……。
今この瞬間の光景が夢のようで、視線をあちこちにさ迷わせていたら、景に「こっち」と手招きされてから慌ててその背中を追いかけた。
パーティの日、俺は電車で都内へ向かった。
楽しみではあるけれど、今朝から思いっきり緊張していた。
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景に誘われた時は安易に返事してしまったけど、よく考えれば本来ならば俺みたいな平凡人が行くような場所では無い。
その為、何度も服装を確認した。
みんなカジュアルな服装で来るから何でもいいよと言われたけど、いつもの格好で行ったらきっと浮いてしまうに違いない。
それに、今日は景の友達に会うんだ。少しは気を遣わないと。
そう思って昨日、慌てて秀明を引き連れて服を買いに行った。
散々迷った挙句、お洒落な店員に選んでもらったシンプルな無地のTシャツとジャージー素材のテーパードパンツに落ち着いた。
迷いすぎて、お洒落コーディネーターの瞬くんにアドバイスをもらおうとしたけどやめた。
また景が怒りそうだし。
エレベーターの前で立ち止まり、景に連絡を入れると「待ってて」とすぐに返信が来たから、髪の毛を整えてから、右手にキラリと光る赤い石を見て、緊張を解した。
そんな時、景が外階段を降りて来るのが見えた。
「あぁ、修介。待ってたよ」
「あ、久しぶり。もうみんな来てるん?」
「うん。みんなお酒入ってるし、途中から行った方が目立たないかなと思って。楽しんで行ってよ」
「う、うん」
一緒にエレベーターに乗り込んだところで、景に気になっていた事を訊いてみた。
「景。あの、今日って南さんはおるん?」
景は一瞬驚いた表情をしたけれど、すぐに笑って俺の頭を撫でた。
「来ないよ。知り合いにちゃんと聞いておいたから。それに、来る予定だったら僕も来てなかったよ」
「あ、そっか……」
一安心したところでエレベーターのドアが開く。
店のドアを開けた瞬間、熱気がブワッと漂ってきた。
バーを貸し切ったと言っていたけど、そんなに広くはない。
景のマンションの部屋のように大きな窓からはネオンが輝いて見える。
壁には大型のスクリーンがあって、天井からはお洒落なシャンデリアがぶら下がっている。
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あっちのカウンター席に座る人は確か有名な映画監督で、それにいま目の前を通りすぎた綺麗な女の人は、その映画にヒロイン役で出ていた気がする。でも、名前が思い出せない。
ああ、あの人は確か音楽プロデューサーの……。
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