リプレイ!

こすもす

文字の大きさ
上 下
184 / 454

第184話

しおりを挟む
 朝からハンバーグは重いかな? と少し躊躇したけれど、香ばしい匂いを嗅いだ途端にお腹がギュルルと鳴った。

 いただきまーす、と手を合わせてからハンバーグを口の中へ運ぶ。
 何これ。肉汁が溢れて食べ応えがあって、ソースがうま過ぎる。
 一晩寝かされて熟成されたのか、ミネストローネはトマトの味が濃厚で、野菜や穀物に染み込んでいて、口の中でホロホロと崩れた。

「はぁっ、幸せやー……」

 口に出してからあっ、と景を見ると、なんだか嬉しそうにこちらをジッと見ていた。

 幸せって、こんな美味しい料理が食べられて?
 それとも、景と繋がって初めての朝を迎えられて?
 なんだか恥ずかしくて、誤魔化すようにあっという間に平らげてしまった。
 景は食べっぷりの良い俺を見てまた嬉しそうに笑って、食器を片付けようと席を立った。

「あ、景はもう食べないん?」

 景は茶碗一杯分くらいのミネストローネしか口にしなかった。

「うん。僕、朝は普段食べないんだ。コーヒーかお茶だけで。でも今日は特別。だって修介と朝からこうやって一緒に食事できるなんて、嬉しくて」

 ニコッと笑ってからキッチンシンクに食器を重ねてから、何事も無かったように洗い始めた。
 景のそういうの、卑怯だと思う。
なんでそうやって嬉しい事を恥ずかし気も無く真っ直ぐに言ってくれるんだ。
 お蔭でこっちはアホみたいに舞い上がってしまうではないか。

 手伝うと言っても、また跳ね除けられてしまって俺には何もやらせてくれない。
 仕方なく(言い訳)ソファーに座って、昨日からリュックに仕舞いっぱなしで見ていなかったスマホを取り出して、画面を覗いた。
 メッセージアプリに連絡が来ていたので、開いてみた。
 一つは晴人から。来週、大学の図書館に行きたいから暇だったら付き合って、との事。
 そしてもう一つは、高宮莉奈。
 見慣れない文字に、誰だっけ? と一瞬だけ思考が停止したけど、そういえば昨日連絡先を交換したんだったと思い出して、メッセージを見た。

 昨日のお礼と、次もよろしく、というような内容が丁寧に書かれていて、律儀な子だなぁと思いながら読み進めていくと、最後に予想していなかった事が書かれていた。

[北村さんって、彼女いますか?]

 なんだかこういうの聞いてくるなんて若いなー、と思いながら景の顔をチラッと見る。
 彼女、はいないけど、実は藤澤 景と付き合ってるんだ! ……って、送る訳無いけど。

 いるよー。
 それだけ送ると、すぐに既読になって、返事が返ってきた。

[そうなんですね!実は彼氏募集中の友達がいて、どうなのかな~って聞いてみました!いきなりすみません(>_<)]

 その後謝りのスタンプも付いてきた。
 て事は、俺に恋人がいなかったらその友達に紹介でもしようとしてたのか。
 良かった。紹介とかちょっと苦手だし。
 あ、でも景は翔平の紹介だったか。
 そう思っていたら、景がおもむろに俺の隣に腰を下ろした。

「修介に渡したい物があるんだ」

 景はそう言って、手の平サイズのカードをこちらに差し出してきた。
 クレジットカード? じゃない。これは……

「うちの鍵」

 手に取って、まじまじと眺めた。
 初めてここに来た時、景がマンションの入り口と玄関先で操作しててカッコいいなと思ってたんだ。
 こんなの、俺にくれるなんて……
 なんか、ちゃんとカップルって感じだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫愛家族

箕田 悠
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...