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第184話
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朝からハンバーグは重いかな? と少し躊躇したけれど、香ばしい匂いを嗅いだ途端にお腹がギュルルと鳴った。
いただきまーす、と手を合わせてからハンバーグを口の中へ運ぶ。
何これ。肉汁が溢れて食べ応えがあって、ソースがうま過ぎる。
一晩寝かされて熟成されたのか、ミネストローネはトマトの味が濃厚で、野菜や穀物に染み込んでいて、口の中でホロホロと崩れた。
「はぁっ、幸せやー……」
口に出してからあっ、と景を見ると、なんだか嬉しそうにこちらをジッと見ていた。
幸せって、こんな美味しい料理が食べられて?
それとも、景と繋がって初めての朝を迎えられて?
なんだか恥ずかしくて、誤魔化すようにあっという間に平らげてしまった。
景は食べっぷりの良い俺を見てまた嬉しそうに笑って、食器を片付けようと席を立った。
「あ、景はもう食べないん?」
景は茶碗一杯分くらいのミネストローネしか口にしなかった。
「うん。僕、朝は普段食べないんだ。コーヒーかお茶だけで。でも今日は特別。だって修介と朝からこうやって一緒に食事できるなんて、嬉しくて」
ニコッと笑ってからキッチンシンクに食器を重ねてから、何事も無かったように洗い始めた。
景のそういうの、卑怯だと思う。
なんでそうやって嬉しい事を恥ずかし気も無く真っ直ぐに言ってくれるんだ。
お蔭でこっちはアホみたいに舞い上がってしまうではないか。
手伝うと言っても、また跳ね除けられてしまって俺には何もやらせてくれない。
仕方なく(言い訳)ソファーに座って、昨日からリュックに仕舞いっぱなしで見ていなかったスマホを取り出して、画面を覗いた。
メッセージアプリに連絡が来ていたので、開いてみた。
一つは晴人から。来週、大学の図書館に行きたいから暇だったら付き合って、との事。
そしてもう一つは、高宮莉奈。
見慣れない文字に、誰だっけ? と一瞬だけ思考が停止したけど、そういえば昨日連絡先を交換したんだったと思い出して、メッセージを見た。
昨日のお礼と、次もよろしく、というような内容が丁寧に書かれていて、律儀な子だなぁと思いながら読み進めていくと、最後に予想していなかった事が書かれていた。
[北村さんって、彼女いますか?]
なんだかこういうの聞いてくるなんて若いなー、と思いながら景の顔をチラッと見る。
彼女、はいないけど、実は藤澤 景と付き合ってるんだ! ……って、送る訳無いけど。
いるよー。
それだけ送ると、すぐに既読になって、返事が返ってきた。
[そうなんですね!実は彼氏募集中の友達がいて、どうなのかな~って聞いてみました!いきなりすみません(>_<)]
その後謝りのスタンプも付いてきた。
て事は、俺に恋人がいなかったらその友達に紹介でもしようとしてたのか。
良かった。紹介とかちょっと苦手だし。
あ、でも景は翔平の紹介だったか。
そう思っていたら、景がおもむろに俺の隣に腰を下ろした。
「修介に渡したい物があるんだ」
景はそう言って、手の平サイズのカードをこちらに差し出してきた。
クレジットカード? じゃない。これは……
「うちの鍵」
手に取って、まじまじと眺めた。
初めてここに来た時、景がマンションの入り口と玄関先で操作しててカッコいいなと思ってたんだ。
こんなの、俺にくれるなんて……
なんか、ちゃんとカップルって感じだ。
いただきまーす、と手を合わせてからハンバーグを口の中へ運ぶ。
何これ。肉汁が溢れて食べ応えがあって、ソースがうま過ぎる。
一晩寝かされて熟成されたのか、ミネストローネはトマトの味が濃厚で、野菜や穀物に染み込んでいて、口の中でホロホロと崩れた。
「はぁっ、幸せやー……」
口に出してからあっ、と景を見ると、なんだか嬉しそうにこちらをジッと見ていた。
幸せって、こんな美味しい料理が食べられて?
それとも、景と繋がって初めての朝を迎えられて?
なんだか恥ずかしくて、誤魔化すようにあっという間に平らげてしまった。
景は食べっぷりの良い俺を見てまた嬉しそうに笑って、食器を片付けようと席を立った。
「あ、景はもう食べないん?」
景は茶碗一杯分くらいのミネストローネしか口にしなかった。
「うん。僕、朝は普段食べないんだ。コーヒーかお茶だけで。でも今日は特別。だって修介と朝からこうやって一緒に食事できるなんて、嬉しくて」
ニコッと笑ってからキッチンシンクに食器を重ねてから、何事も無かったように洗い始めた。
景のそういうの、卑怯だと思う。
なんでそうやって嬉しい事を恥ずかし気も無く真っ直ぐに言ってくれるんだ。
お蔭でこっちはアホみたいに舞い上がってしまうではないか。
手伝うと言っても、また跳ね除けられてしまって俺には何もやらせてくれない。
仕方なく(言い訳)ソファーに座って、昨日からリュックに仕舞いっぱなしで見ていなかったスマホを取り出して、画面を覗いた。
メッセージアプリに連絡が来ていたので、開いてみた。
一つは晴人から。来週、大学の図書館に行きたいから暇だったら付き合って、との事。
そしてもう一つは、高宮莉奈。
見慣れない文字に、誰だっけ? と一瞬だけ思考が停止したけど、そういえば昨日連絡先を交換したんだったと思い出して、メッセージを見た。
昨日のお礼と、次もよろしく、というような内容が丁寧に書かれていて、律儀な子だなぁと思いながら読み進めていくと、最後に予想していなかった事が書かれていた。
[北村さんって、彼女いますか?]
なんだかこういうの聞いてくるなんて若いなー、と思いながら景の顔をチラッと見る。
彼女、はいないけど、実は藤澤 景と付き合ってるんだ! ……って、送る訳無いけど。
いるよー。
それだけ送ると、すぐに既読になって、返事が返ってきた。
[そうなんですね!実は彼氏募集中の友達がいて、どうなのかな~って聞いてみました!いきなりすみません(>_<)]
その後謝りのスタンプも付いてきた。
て事は、俺に恋人がいなかったらその友達に紹介でもしようとしてたのか。
良かった。紹介とかちょっと苦手だし。
あ、でも景は翔平の紹介だったか。
そう思っていたら、景がおもむろに俺の隣に腰を下ろした。
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クレジットカード? じゃない。これは……
「うちの鍵」
手に取って、まじまじと眺めた。
初めてここに来た時、景がマンションの入り口と玄関先で操作しててカッコいいなと思ってたんだ。
こんなの、俺にくれるなんて……
なんか、ちゃんとカップルって感じだ。
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