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こすもす

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第156話

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「あの、景」
「うん、何?」

 恥ずかしい。
 でもここは、酒のせいにしておこう。
 緊張気味に話し掛けたからか、景は少し驚いた様に自らもグラスをテーブルの上に置いて体をこちらに向けた。

「あの、俺たちってさ……」
「うん」
「付き合ってるって事で、ええんやろうか?」
「……えっ?」

 途端に眉根を寄せて怪訝な顔をされたから、俺は慌てて手をブンブン振って笑った。

「あっ! ごっ、ごめん、やっぱ何でも無いっ」
「ごめん修介。何か不安にさせてた?」
「へっ?」
「付き合ってるに決まってるでしょう? キスだってしたのに、どうしてそんな事言うの?」

 それを聞いて安心した。
 あぁ、良かった。勘違いじゃ無かった。
 俺はホッと一息つく。

「あ、そっかぁ、良かった……」
「ごめん、てっきり分かってると思ってたんだけど……もしかして、ずっとその事気になってたの?」
「いや、一応確認やで? ほら、景にそんな気が無いんやったら悪いしっ!」
「もう、馬鹿だな、修介は」

 そう言うと景は、俺の膝の上にある右の手を両手でギュッと握った。

「えっ、景、なにっ?」
「それならちゃんと言うよ。修介、どうかお願いです。僕と付き合ってください」

 車の中で俺に告白してくれた時と同じように、潤んだ瞳で真っ直ぐ俺の目を見つめて言ってくれた。
 頭に血が上って、今度こそ貧血で倒れるかと思った。
 まさか、景が俺にそんな事を言ってくれるだなんて。
 半年前に初めて会った時は予想もしていなかった。
 やっぱり、俺は人生の運をいま使い果たしたみたいだ。

 唇を結び、目を見開いたまま何も言えないでいたら、顔を覗きこまれた。

「返事は?」
「あっ、はい」
「ふっ、良かった」

 そう言うと景は、俺の手をすぐに離してしまう。
 なんだか胸が痛くなって、気付いた時には咄嗟に彼のTシャツの袖口を掴んでいた。

「修介?」

 酔っている。俺は酔っている。
 そういう事にしておこう。

「付き合ってるんやったら、もっと……触れても、ええよ?」

 恥も承知で景に恐る恐るお願いすると、景は素早く俺の手首を掴んで、自らの体に引き寄せた。
 ギュッと目をつぶっていると、景の唇が触れる感触が口からじんわり広がる。
 少し触れるだけのキスをされて、ゆっくり目を開けると、愛しい人の顔が目の前にあった。
 お互いの鼻の先が当たるくらいの距離で、景は俺を見つめている。

 自分から触れていいと言ったくせに、予想以上の羞恥で体が熱くなってしまい、俺は俯いた。
 そうしている間に、景の片方の手が俺の後頭部に回されて、そこから手の平の熱がじんわり伝わってくる。
 景は怒ったように眉根を寄せていた。

「そんな可愛い事言わないでよ……!」
「えっ! えっ、ごめん……」

 もう一度顔がこちらに降りてきたから、また瞳を閉じてその唇を待った。

 またキスをされるけど、さっきと違って今度は唇がしっとりと濡れた。
 それは景の舌先だった。
 ギュッと唇を結んで耐えていると、すぐに景の顔が離れていく。
 やばい。心臓がばくばくと鳴り止まない。

「口、閉じないで?」

 まるで子供に注意するような優しい言い方をされて、ますます頭が混乱してくる。
 あっという間にまた口を塞がれ、濡れた舌先が力を緩めた俺の唇を割って、ゆっくりと口内に浸入してきた。
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